伽 草 子

<とぎそうし>
団塊の世代が綴る随感録

己を知る

2014年05月26日 | エッセー

 ここ二三日は投稿する予定ではなかったが、中国機のスクランブルに即応して当方も緊急発進する。
 以下 asahi.com から抄録(毎度ごめんなさい。正確を期すためです)。
〓自衛隊機に中国機が異常接近 防空識別圏重なる区域で
  防衛省は24日、同日昼ごろの2回、東シナ海の公海上空を飛行していた自衛隊機2機に対し、中国軍の戦闘機が数十メートルの距離まで接近したと発表した。同省によると現場は、日本の防空識別圏と昨年11月に中国側が設定した防空識別圏が重なるエリア。中国側が識別圏を設定して以降、このような接近事案は初めてという。領空侵犯はなかった。
 現場は、尖閣諸島から数百キロ程度北に離れていて、日中中間線付近で中国が開発を進めるガス田などに近いエリア。東シナ海では20日から、中国とロシアが合同軍事演習を行っているが、演習の海域の外だという。中国機が自衛隊機に対し、スクランブル(緊急発進)をした可能性がある。〓
 読み落としてならないのは、「中国とロシアが合同軍事演習を行っている」というフレーズだ。「防空識別圏が重なるエリア」というのは、国際法上日本に十全なアドバンテージがありジャスティスがある。問題はリーガルな次元ではない。タクティクスだ。その稚拙さだ。『孫子・謀攻』を引こう。
「彼を知り己を知れば百戦殆からず。彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆し」
 「彼を知り」とは、彼の身になるとの謂であろう。軍事演習中に招かれざる“他”国偵察機が“自国”の識別圏に入る。こんなリーズナブルな事由はない。当方は「知り」を文字通り探知の知と捉えた。悲しいかな、“知”的レベルが低い。だから寸止めとはいえ術中に嵌まった、といえなくもない。平和ぼけというなら、こういう事況をこそそう呼ぶべきだ。治安の悪い公道をうら若き娘が独り歩きする。臨戦の危機が望見されるなら、こんな児戯を演じるはずがない。個別にせよ集団にせよ、本邦のタクティクスがかなりの劣位にあることに落胆せざるを得ない。ともあれ本件を奇貨として、空幕のポテンシャルを再考すべきではないか。それが「己を知」る、である。
 あるいは、集団的自衛権へ誘(イザナ)うための本邦のマヌーヴァではないかと穿つこともできる。しかし小野寺五典防衛相の当惑しきった表情をはじめ、政府の反応にそれらしき気配は感じられない(後知恵で利用するかもしれないが)。幕僚監部はもとより刻下の政権は、このマヌーヴァにおける費用対効果をはじけないほどの愚人たちばかりではあるまい。第一、そんな芸達者は一人もいない。
 せめて「彼を知らずして己を知れば、一勝一負す」ではあってほしい。最低限。
 以上、メディアに欠落した視点を緊急に補足するため稿を起こした。ストラテジーについては割愛する。なにせ緊急ゆえ。 □