伽 草 子

<とぎそうし>
団塊の世代が綴る随感録

2009年2月の出来事から

2009年03月08日 | エッセー
<政 治>
●天下りあっせん年内禁止
 麻生首相が衆院予算委員会で発言(3日)
―― 『官僚主権』『四権』についてはさんざん述べてきた。なかなか一筋縄では行かない。モグラ叩きでイタチごっこだ。霞ヶ関がヒエラルヒーである以上、定年制が十全に機能しない部分がある。「組織論」から再構築しないことにはドラスチックな解決は望めないだろう。

●小泉元首相が麻生首相批判
 郵政民営化に反対だったとの発言に(12日)
―― 『政界のナガシマさん』、敬愛を込めて贈りたいニックネームだ。意表を突くことばの巧みさ? 動物的な勘と反射神経。それぞれ、球界と政界で絶頂を極めた。
 しかしこちらのナガシマさん、下山で躓(ツマズ)いた。天性の運動神経もどこかが詰まったのか、切れたのか。明らかにタイミングを読み違えた。さざ波すら起きなかった。
 「笑っちゃうくらいあきれる」のは、こちらのセリフだ。後継指名の不評といい、もうちょっとカッコよく大向を唸らせる引き際はできなかったのか。
 それにつけても、晩節は難事だ。

●中川財務相辞任
 イタリアでの主要7力国財務相・中央銀行総裁会議でのもうろう記者会見で(17日)
―― この一年、おすもうさんが何人もおクスリで土俵の外へ投げ飛ばされた。こちらもおクスリでころんだ。ただ風邪薬だったそうだから違法性はない。飲み合わせた美禄にもお咎めはない。問題は,時機と量だ。少なくとも、こんな飲み方はプロではない。
 アッソーくんにとっては、酒盛って尻切られる結果となった。弱り目に祟り目。今夜もホテルのバーで浮き世の憂さをただただ、ゴックン! か。

●首相がオバマ米大統領と会談
 外国首脳として初。日米同盟強化、経済危機対応への協力で一致。(24日)
―― どうせなら、福井県小浜市の村上利夫市長を伴い、ついでにデンジャラスのノッチでも連れていけばかなりの話題になっただろうに。人気もないが、能もない。まったくー。

<経 済>
●「かんぽの宿」売却撤回
 日本郵政がオリックス不動産への契約を白紙撤回(13日)
―― お説御尤もなのだが、この人が言うとどうもパフォーマンスに見えてくる。
 07年、「友人の友人がアルカイダ」発言。08年、鹿児島志布志事件に関し、全員の無罪確定後に「冤罪と呼ぶべきではない」と発言。などなど、問題発言には事欠かない。
 福田内閣の法相時代には、13人の死刑執行を命令。最多記録を更新し、なおかつ死刑囚の氏名を公表した。
 政界のサラブレッド。田中角栄の秘書からスタートし、新自由クラブ、自民党、新進党、民主党、ふたたび自民党と渡り歩く。その間、99年には都知事選に立候補。石原慎太郎の次点に泣く。
 ともかく、名うてのパフォーマーだ。どうしてもその分、引き算をしてしまう。
 突如現れた正義の味方・月光仮面のおじさんに、仕事なりあい飯弁慶、JPのおじさんたちも『ぽかん』の宿だ。

●豪で山火事、死者200人以上
 オーストラリア南東部で大規模な山火事があり同国史上最悪の被害に(8日)
―― 山火事だろ、なぜ逃げないんだ? と、報道に呟いた。だが、浅慮だった。なにせ火勢は時速100キロにも達するという。自然は人知を超える。身の程を知らねばならない。

●イスラエル総選挙で中道カディマが第1党
 右派リクードが第2党、極右政党が第3党に躍進(12日)
―― イスラエルの議会は一院制である。クネセトという。全国一区の比例代表選挙で120名の議員を選ぶ。カディマが発足した2005年まではリクードと労働党による二大政党制に近いものであったが、比例代表の習いとして一党で過半数を占めたことがない。いつも小党との連立政権であった。イタリアも事情は同じだ。合従連衡が常で、目まぐるしく政権が交代する。
 傍目には不安定で非効率に見える。しかし、破滅的な独走も暴走もない。今度のガザ攻撃にしても、リクードの単独政権であったら様相はまったく違ったであろう。
 同国の地政学上の位置を考えた時、もっと強権的な政治構造になってもおかしくはない。浅学ゆえに経緯は知らぬが、この選挙制度は歴史の僥倖といってよい。イスラエル国民の智慧でもある。

<社 会>
●円天会長ら22人を逮捕
 警視庁などが、健康商品販売会社「エル・アンド・ジー(L&G)」の会長らを組織犯罪処罰法違反の疑いで(5日)
―― 貨幣の幻想性については何度か取り上げた。(08年10月22日付「きほんの『き』」、09年2月1日付「きほんの『ほ』」など)この事件はそういう問題を考えるいい材料になるかもしれない。死ぬほど暇にでもなれば考えてみよう。

●薬の通販・大幅規制へ
 風邪薬や漢方薬など700種以上について、省令改正(6日)
―― 賛否は措(オ)いて、この「省令」というのが曲者だ。かつて議論となった「行政指導」はもっと質(タチ)が悪いが、これも劣らず悪い。
 メーカー、ディーラー、ユーザーはいつも振り回される。今度も一斉のブーイングに見直しを検討するらしい。朝令暮改もいいところだ。
 省令の改変については、もっと広範な討議に掛けるシステムを考えるべきではないか。切にそう願う。「官僚主権」は願い下げだ。

●新卒医師の臨床研修、1年も可能に
 現行2年から短縮の案。(18日)
―― 粗製乱造にならぬか心配だ。現行の科目数を減らすという。医師不足が問題なのではなく、遍在こそが難題だ。本当に難しい。知恵はないものか。
 ちかごろ、竹藪が増殖して山林を枯死させているらしい。過疎化の影響だ。どちらも、ヤブには困る。といえば、藪睨みか。

●不妊治療で受精卵取り違え
 高松市の香川県立中央病院が昨秋、20代女性に誤って別の患者の受精卵を移植した可能性があると判明(19日)
―― いまや年間2万人が体外受精で誕生している。人工授精ではない。なおのこと、間違いは許されない。
 ところが作業台には複数のシャーレが置いてある。蓋に名前が書いてあっても,開ければ紛れる。当たり前だ。そんなことも解らないヤブがいるのだ。ヤブ被害は山林ばかりではない。こんなよい加減なのは『大概』受精とでもいうしかない。
 工事現場での究極の安全対策は何か。それは、仕事をしないことだ。いまや2万人、その伝は通じない。藪蛇だ。ならば、ケアレスミスを大前提にした対策を講じるほかあるまい。医療現場でのフェールセーフである。
 振り返れば去年の今ごろ、バーコードの入ったリストバンドを嵌められて病院にいた。院内の各セクションで読み取り機を当てて識別される。そのたびに「ここはコンビニのレジかい!」と、悪態を吐(ツ)いたものだ。お陰で他人に間違えられることはなかったのだが …… 。

●日本14年ぶり金
 ノルディックスキー世界選手権(チェコ)の複合団体で復活(26日)
―― 長い低迷期の主因は、ルールの改定にあったそうだ。ジャンプの配点を減らし、クロスカントリーを増やした。当然、日本には不利だ。柔道,体操をはじめ、このような例はままある。
 その軛を払っての勝利だ。めでたい。来年のバンクーバーが射程に入った。

(朝日新聞に掲載される「<先>月の出来事」のうち、いくつかを取り上げました。見出しとまとめはそのまま引用しました。 ―― 以下は欠片 筆)□


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