伽 草 子

<とぎそうし>
団塊の世代が綴る随感録

2年B組 学級レポート その2

2006年12月14日 | エッセー
 9月13日以来、2度目のレポートをします ―― 。

 アンバイ君が新しい学級委員になって3カ月になる。選挙はブッチギリのダントツだった。それはそれはカッコいいデビューだった。選挙での彼のアピールは「美しい学級・2年B組」。掃除当番を増やすことかな、と勘違いしたり心配したりした子もいたが、なんか違うらしい。「学級を愛そう」ってピントが違うんだけど、なんだかよく分からないうちに、ほとんどの生徒が彼に投票した。だって、オオイズミ君とくらべればずいぶんフツーに見えたんだもの。
 落選したアッソー君は、いま給食係だ。張り切ってはいるのだが、そそっかしいのでおかずを間違えたり、こぼしたりしている。気に入らない子に盛りを少なくして、こないだえらく先生に叱られた。もうひとり落選したヤマガキ君は、なんにも係には付かず、ひっそりと、ひたすら勉強している。
 当選するとすぐに、アンバイ君は犬猿の仲だったC組の学級委員であるK君のところに行って挨拶した。これからはお互いよきライバルとして仲良くやろう、と言って握手した。なかなかキマっていた。
 問題が起こった。
 オオイズミ君が強行した『給食廃止』の後始末。どうしてもイヤだといって学級を替わった生徒たちのことだ。学級委員が替わったのをきっかけに、やっぱりB組に戻りたいって言うんだ。B組に残った友達も早く帰っておいで、フレンドシップは大事だと言う。アンバイ君は名前の通り、どうしても塩梅をつけたがる。反省するならいいよ、ということにした。これがいけなかった。謝って済むのなら警察は要らない、それはヘンだよと、人気がたちまち落ちた。
 もう一つ。アンバイ君はお公家さんのような顔立ちのくせに、考えることは意外に硬派だ。僕たちの学校では個性を大事にしようということで、もう20年以上も前から制服を止めて私服にしていた。それをアンバイ君は元に戻して制服を復活させようと言い出した。生徒会に提案しまとめ、先生たちとの意見交換会を開くことになった。会で意見発表した生徒は制服派が圧倒的だった。親たちも学校の一体感が大事などと言い始めて、どうやらアンバイ君の提案は実りそうになった。と、ここにきて意外なカベに突き当たった。なんと、意見交換会での生徒の発言が「やらせ」であったことが判明したのだ。アンバイ君は発言の内容まであらかじめ教え込んでいたらしい。おまけに、「やらせ」をしてくれた人には缶コーヒーのGEOGIAをおごっていたこともバレてしまった。いやはや、また一波乱だ。
 悪いことは重なるもので、もう一つのアンバイ君の提案が行き詰まっている。子供貯金の使い道のことだ。いままで貯まったお金は卒業記念のために使ってきた。時計を贈ったり、オルガンを買い替えたりしてきた。このお金を他のことに使おう、というのがアンバイ君の提案だ。卒業記念品はもう止めて、学校行事の穴埋めに振り向けよう、というのだ。なかなかいい考えなのだが、やっぱり卒業記念にこだわる生徒もたくさんいて、すったもんだした。結局、もし卒業記念の余りが出れば、ということになってしまった。こういうのを、「骨抜き」というらしい。
 これでまた株を落としてしまった。
 同級生のアサヒ君が変なことを調べた。前の学級委員だったオオイズミ君としゃべる時間を比較してみたのだそうだ。そうしたらアンバイ君の方が2倍長い。丁寧に説明しようとしているのだろうが、文節をアーとかエーで区切るのでまどろっこしく感じる生徒が多いらしい。オオイズミ君は一言しかしゃべらず、それが随分ウけた。だけど、いま振り返ってみると、なんだかだまされていたような気もするんだけど……。

 さて、来年は3年生。生徒会長が替わる。毎年、B組の学級委員がなるのだけれど、こんなに人気が落ちると危ぶまれる。このままでは塩梅が悪い。かといって、アンバイ君の代わりはいないし……。少し憂鬱な年の瀬です。
 最後に、もうひとつ。こないだ YouTube でおもしろいのを発見しました。アンバイ君とそっくりな声のおじさんが安倍総理のモノマネをしていました。なんか顔まで似ていました。ということは、アンバイ君は総理とよく似ていることになるのでしょうか。これって、ラッキーなのかな? □