悪名高い後期高齢者医療制度が始まって、一ヶ月ほど経った。私の職場である病院ではまだそれほど問題になっていないが、少し前までのニュースにおいては、とにかく非難囂々の嵐だった。新聞でもテレビでも、この制度を擁護する発言は聞いたことがない。75歳以上の高齢者という「弱者」から負担を強いることがよっぽど腹に据えかねるのだろうか。テレビなどでは散々政府の対応を批判した後、必ず決まり文句のように言われるのが、「まず政府が無駄使いをなくせ」という台詞である。たいていはこれが結論となり、それで話は終わってしまう。
しかし、じゃあその「無駄使い」というのは具体的に何か、どの費目を何円ほど政府予算から削ればいいのか、という話にまでは及ぶことは皆無だ。行政の無駄を指摘する時によく言われるのが、「年度末になると予算消化のために道路工事が増える」という言葉だが、これはおかしい。予算というのは、具体的な目的があって前年度に要求され、年度当初に費目ごとに細かく配分されるものなので、「とにかく消化したいから」という理由で年度末になっていきなり配分されるものではないからだ。それに、財源不足に悩む役所の世界で「予算消化」という言葉は完全に死語である。実際、公共事業費は以前と比べて大幅に減額された。新規の道路建設事業など、今はほとんどないだろう。しかし、こういった支出抑制が福祉や医療などの分野にちょっとでも及ぶと、ものすごい騒ぎになるのである。
問題は、バブル以前の時代を想定した税制のまま、高齢化や格差が進むにつれ、行政に対する需要はますます増えていった、ということだろう。このままの体制が維持できるわけないので、政府支出をもっと減らすか、増税するか、しかないのだが、具体的に何の支出を減らすか、などということはテレビや新聞などでは誰も言わない。それによって不利益を被る人達から猛烈な抗議を受けるからだ。ましてや、増税賛成、なんてことは余計に言えない。だから大マスコミができることといえば、抽象的な行政バッシングをすることぐらいしかないのである。
高齢者の負担を増やさなければならないことは確かに残念だが、じゃあ現実的にどうすれば現在の医療レベルをこれからも維持できるのか、真剣に議論している人は少ない気がする。
私が思うに民主党みたいに道路特定財源問題なども先送りではいけないと思う。今必要であれば税金も上げて次世代に負担させてはいけないと思う。
yosikuri> 良い意見をありがとう。俺ら世代が老人になったとき、年金や医療費はどうなってるんだろうなあ。本当にやばいよ。