http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20120608/plt1206081144005-n1.htm
河本準一やキングコング梶原の親族による生活保護不正受給事件を受け、生保に対する世間の目が厳しくなってきたところで、政府もようやく制度の改正に着手したようだ。保護支給の決定にあたって、福祉事務所の調査権限を少しだけ強めたのだ。今さら、という気もするが、マスコミが騒いだせいで世の「空気」が変わり、国も改正がしやすくなった、ということだろう。
しかし生活保護制度の問題は重く、深い。福祉事務所による運用を少しばかり変えたところで、根本的な解決にはならない。平成24年度予算で生活保護費は約3兆7000億円もの巨額に膨れ上がり、被保護者の人数も史上最多の約205万人だ。これは、制度が開始された昭和27年の約204万人よりも多い数字である。昭和20年代といえば日本が敗戦後の貧困に喘いでいる時代であり、その時よりも現在の方が被保護者の数が多いというのは、どう考えても何かがおかしい。
しかも、被保護者の人数はこれから減るどころか、ますます増えることが予想される。現時点で若年層だけに限っても、フリーターは約180万人、ニートは約60万人存在すると見られ、彼らの内かなりの割合が、将来的に生活保護を受ける可能性が高い。近い将来に日本の景気が良くなる、ということも考えにくい。生活保護費は膨らんでいく一方だ。
このような状況で、不正な保護受給などは許されるべきではない。そこで不正を防ぐため、今回政府が打ち出したのが、金融機関への本店一括照会方式だ。今までは各支店ごとにしか照会できなかったので、これでかなり変わってくるとは思う。
しかし私に言わせれば、それでもまだ甘い。ここからは私個人の考えになるが、保護申請者だけではなく、三親等以内の親族についてもすべて、銀行の本店一括照会ができるようにすべきだ。現時の制度では、福祉事務所は親族の資産まで調査できないのである。まずはこの点を是正すべきだ。
以前の記事で書いたように、一定以上資産のある親族が存在すれば、身内での援助を最優先すべき、というのが私の考えである。生活保護法や民法と同じ考え方だ。親族の資産を調査して、ある一定の基準(例えば、4人以下の家族であれば預金1000万円以上、など)を満たす資産が見つかれば、保護を却下する。その親族の意向がどうであれ関係なしに、だ。
その親族にも家のローンやら子どもの教育費やらがあるかもしれないが、そうだったとしても、自分の親族(保護申請者)1名程度に最低限の生活費を援助してやったところで、自分たちに餓死の危険性まではないはずである。現代の家族や親戚のあり方は昔とは違う、と言われるかもしれないが、だからといって、赤の他人の税金を当てにしてよい、という理屈にはならないはずだ。
このやり方だと、保護が却下され、その後に親族からの援助も断られることによって、保護申請者が生きるために必要な食料を得られなかった、というような事態も発生するかもしれない。しかしそのような惨状を招いたのは、援助をしなかった親族であり、国や自治体ではない。もし保護申請者が過去に親族へ暴力をはたらいたり、子への扶養義務を果たさなかったり、何も言わずに勝手に蒸発したり、というような事情があるせいで、親族が援助を拒んでいるのであれば、責任があるのはその保護申請者自身だ。国や自治体の責任ではない。
また、保護が決定したとしても、被保護者が60歳までの稼働年齢で、病気や障害がないのであれば、保護の期間を1年程度に限るべきだ。アメリカと同じ考え方である。1年以内に、バイトでも何でもいいので、必死に職を探してもらうことになる。たとえ職が見つからなかったとしても、保護は1年で打ち切る。
生活保護というのは、あくまでも「最後の手段」なので、軽々しく適用されるものではない。これぐらいドライに運用して、丁度よいと思う。
それが良くないというのであれば、現在の制度でうまく運用していくしかない。そのためには、ケースワーカーの人員を少なくとも今の3倍以上に増員すべきだ。一人あたり80件以上のケースを抱えて、十分な調査や就労支援など、できるわけないだろう。この場合はもちろん、増え続ける保護費だけでなく、ケースワーカーの人件費も大幅に増額する必要がある。そのためには、税負担も必要になるだろう。ヨーロッパ並みの生活保障を望み、その一方で増税に反対、などという身勝手が通るわけもない。世の中にタダのものなど無いのだ。