Willow's Island

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小林よしのりを読めば韓国が分かる?

2010年10月16日 12時11分52秒 | 

 図書館で借りた小林よしのりの「挑戦的平和論」という本を読んでみた。5年ほど前の本である。中身はまあ、いつもどおりとしか言いようがなく、特に新味はなかった。
 この人は作品中で、さも自分が「右翼ではない」というようなことを言ってるが、やっぱりどう考えても右翼だろう。自分と反する考えを持つ人をみんなまとめて「サヨク」呼ばわりするなら、その正反対の位置にいる自分は「ウヨク」ということになるんじゃないか。この人が右翼じゃないとしたら、一体どういう人が右翼に該当するんだろうか。大音響の街宣車を乗り回している連中か? あれは単に右翼を名乗るだけのチンピラに過ぎない。別に「右翼」という言葉自体は悪口でも何でもないんだから、そんなに否定しなくてもよいと思うのだが。
 小林の論理や理屈はあまりにも矛盾が多すぎて思想と呼べるようなものではないが、たまに良いことも言っている。彼の主張は要するに、日本に健全で強いナショナリズムが育ってほしい、ということだと思うが、確かに戦後の日本は自国のナショナリズムについて、あまりにも考えずに過ごしてきた。第2次世界大戦で徹底的な敗戦を経験したせいか、ナショナリズム=右翼=危険思想、という単純な図式が長く日本人を支配してきたように思う。これが日本だけに特異で、おかしな現象であることを私も認識している。
 敗戦経験だけでなく、日本の地政学的な位置も最悪だった。アメリカ、中国、ロシアという三大超大国に囲まれ、しかも通常の軍隊を持たないと決めたことから、たとえ世界第2の経済大国になっても、自分たちの運命を自分たちだけで切り開いていくことはできなかった。常にアメリカの意向が日本の進む方向に影響していた。そしてこれからは、中国の影響も強く受ける可能性が高い。小林にとっては、それが我慢できないのだろう。どんな大国にも決して媚びることなく、日本が気高さを保つことができれば、確かにこんな格好良いことはない。しかし今の日本には、その反対のかっこ悪さしかない。
 そう考えると、彼の考え方は、韓国のナショナリスト達と非常によく似ている。韓国もまた、周辺の大国によって自分たちの運命を自分たちで決めることができなかったのだ。その歴史は日本よりはるかに長い。小林の言う「日本」を「韓国」に置き換えれば、ほぼそのまま韓国人ナショナリストの考えと一致する。(^^) ということは、小林の本を読めば韓国人の心情が何となく理解できる、のかもしれない。そういう意味でも、読む価値あり、だ。
 かといって、もちろん私は小林の考えを嫌悪する。テロを肯定するというのは正気の沙汰ではないし、理由がどうあれ日本の行った戦争が正しかったとはどうしても思えない。何より、彼の考えには「経済」についての考察が完全に抜け落ちている。経済を無視して日本のあり方を語ることなど相当無理があるし、今の日本人が70年以上前の姿に戻ることなど、絶対に不可能だ。