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日本経済の真実

2010年07月04日 22時02分39秒 | 

 ベストセラーとなっている辛坊治郎氏の「日本経済の真実」を読んでみた。アマゾンのレビューと読むかぎり、これほど賛否がくっきりと分かれる本も珍しい。内容としては、要するに小泉・竹中による改革路線は正しかったが、その後の政権でぶれてしまったため、日本経済の将来は危機的状況にある、というものだ。小泉・竹中の新自由主義的な政策が日本に格差をもたらした、という考えが現在は主流になっているが、むしろ逆であり、小泉改革こそが日本の経済成長、財政健全化にとって最善だった、とのことである。それどころか、発展途上国の労働者と同じ程度の仕事しかできない日本人は所得が下がって当然であり、政府は逆に大企業こそを優遇し、法人税も引き下げねばならない、とまで言っている。極端に低い評価のレビューがあるのも、おそらくこれが原因だろう。
 ずいぶんとバッシングされているこの本だが、私としては納得できる部分が多かった。政治家などは口が裂けても言えないような本音を、辛坊氏が代わりに言ったんじゃないかと思う。郵政民営化がなぜ必要だったのか、その本当の理由(やはり郵便貯金の運用を民間に開放することだった)も分かりやすく書いてあった。小泉政権時代後期の2004年~2005年は日本経済のあらゆる指標(GDP成長率、失業率、財政状況、等)が改善していた、ということも、統計図表を使って明確に説明されていた。
 私が特に重要だと思った内容は、1107兆円にのぼる巨額の財政赤字について、である。これこそが、「ある日、この国は破綻します」というサブタイトルにつながっている。ご存じの通り、これほどひどい財政赤字を抱えている国は、世界でも日本ぐらいである。政府の借金をどうにかするには、ハイパーインフレを起こすか徳政令でも実施して棒引きにするか、どちらかしかない、というのはずいぶん前から言われていることである。これ、本当にどうするんだろうか。もう本当に、国民全体が真剣に考えなければいけないだろう。日本政府の借金は国内から借りているだけで、日本国民の個人資産は1400兆円もあるのだから大丈夫、などという話を聞くこともあるが、「アホか」と言いたくなる。その「1400兆円」のうち半分以上を強制的に政府へ納めてしまえば確かに「大丈夫」なんだろうが、そんなことできるわけねえだろう。しかも、その個人資産にしても、団塊の世代が老後生活に入っていくにつれ、これから減っていくのは目に見えている。
 では、どうすればいいのか。この本では明確な処方箋は示されていない。強いていえば、小泉・竹中政権の「小さな政府」路線に戻って、日本国内に存在する企業の実力を上げていくことにより、経済が再生し、税収を増やしていくしかない、というところだろうか。小さな政府はいいけど、どうやって企業の力を付けていくのか、それは簡単に答えが出ないだろう。
 私としては、道は二つしかないと思う。単純だが、増税するか、政府の支出を減らすが、のどちらかである。毎年毎年、国家予算・一般歳入の約半分を国債でまかなう、というのは絶対にどこかおかしい。歳入内訳、または歳出内訳のどちらかが異常なのである。今の日本がそれほど「大きな政府」をしているとは思えないので、やっぱり歳入の構造に異常がある、と考えるのが自然ではないだろうか。とすれば、やはり増税しかない。「それよりも税金の無駄遣いを減らせ」なんて言葉をよく聞くが、一般歳出の半分近くが無駄遣いだとでもいうのだろうか。そう言う人は、どの予算項目のどの部分が無駄なのか、具体的に説明してもらいたい。ちなみに、消費税を10%に上げたところで、日本の財政赤字には「焼け石に水」である。