昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

金沢便り(20)武士の家計簿

2010-12-13 06:15:07 | 金沢便り
 <金沢便り>と言っても、いつものように金沢の山ちゃんから送られてきたものではない。
 金沢を舞台にした映画<武士の家計簿>が上映中という新聞記事を見て、こちらから懐かしんで見に出かけた。
 中学の同窓生から毎月送られてくる地方月刊雑誌<アクタス>に、金沢でロケ中と載っていたので記憶にとどめておいたのだ。
 (その経緯は<金沢便り>15に書いている)

 朝、武家屋敷の門前、主人公直之(堺雅人)は、父親信之(中村雅俊)とともに、母親お常(松坂慶子)と嫁お駒(仲間由紀恵)からお弁当を手渡され登城するシーン。
 ああ、懐かしい長土塀の武家屋敷だ。

 ぼくが、中学生まで過ごした家のすぐ近くだ。静かな佇まいでどんな人が住んでいるのだろうと覗いてみたりしたことを思い出す。

 城内の大きな部屋で多数の武士たちが机の前に正座して、帳簿を見ながらそろばんを繰っている。

 直之はそのうちの一人で、父親に幼い時からそろばんを仕込まれ、猪山家代々の御算用者として加賀藩の財政処理に携わっている。
 彼は<そろばん侍>と言われたほどのずぬけた数学感覚を持ち、御蔵米の勘定役として任命されたとき、飢餓で苦しむ農民たちが受けた<お救い米>の量と、出荷した量との数字が合わないことを見抜き独自で調査、城の役人たちの不正事実を知る。

 米の横流し、経理の不正を知った直之は上司から疎まれ、能登への左遷を言い渡される。
 しかし、不正に気づいた農民たちの「ひもじいよ!米よこせ!」という騒動が発端となり、悪事は露見、信之は一転して殿から異例の昇進を言い渡される。

 ところが身分が高くなるにつれて出費が増える。そんな折、4歳の嫡男を内外にお披露目する<着袴の祝い>を前に、直之は家計が窮地に追い込まれていることを知る。すでに父信之が江戸詰めでかさねたぼう大な借金があったのだ。

「そろばんしか生きる術なく、不器用で出世も期待できない・・・それでもいいか」と問いかけ、「生きる術の中に私も加えてください」
 と嫁になってくれたお駒とともに知恵をしぼり、祝膳に欠かせない鯛の代わりに<絵鯛>を使う。
  

 恥さらしだと責める父母の前で、直之は<家計見直し計画>を宣言。
 世間の目を気にする父、愛用品を手放したくない母を「お家を潰すほうが恥じである」と説得、



家財道具一式の処分を決定、質素倹約し膨大な借金の返済に充てる。

 塗りの弁当箱は竹皮に、安く買い求めた1尾の鱈は、鱈汁、白子の酢醤油、昆布じめにと幾種ものおかずに。
 そんな猪山家の奮闘振りを見ていると、何かわが身につまされる思いがした。
 多分ぼくは、借金先送りの、のんきなとうさん信之役かなと・・・。

 直之役の堺雅人さんはインタビューに答えている。

 先の見えない時代に、侍として、家族の長として自らができることを考え、行動に責任を持つ姿はかっこいい。・・・
 金沢は、謙虚さと華やかさがバランスよく同居している街だと思う。
 その雰囲気が猪山家の面々の生き様からもにじみ出ている。
 今回の映画は、金沢を舞台としたからこそ、味わい深く仕上がったと感じている。




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