昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

三鷹通信(28)超高層マンションと老人のひとり住まい

2010-10-05 05:57:19 | 三鷹通信
 地方都市には珍しいツインタワーの超高層マンションが三鷹駅北口駅前に建設され一時評判になった。
 
 キムタクが子どもの教育にいい環境だからと買ったらしいなんて噂もあったが、これは眉唾らしい。
 こんな時期にはたして売れるだろうかと危ぶむむきもあったから、ひょっとして売主が流したガセネタだったかもしれない。
 いずれにしても我々庶民には高値の花だと見上げていた。

 たまたま大学の同窓会に講演をお願いした作家のH先生がこのマンションを見上げながら「三鷹はいいですね。こういう文化都市に住みたいな。ここに移ろうかな」とおっしゃっていた。

 ところが、先日突然「実はあのマンションを買っちゃいました。待望の武蔵野市の住人になりました」と電話をいただいた。(三鷹駅の北側は武蔵野市なんです)

 さすが松本零士と共同で小説<銀河鉄道999>を書かれ、稼がれた作家は違う。思ったら即、これだけの物件が買えるんだ。
 さっそくお誘いをいただいたのでいそいそと出かけた。

 ホテル並みの受付があり、受付嬢?もいる。
 ゆったりとしたロビーでコーヒーをご馳走になったが、ゲストには無料で提供されるのだそうだ。 

 続いて、23階のスカイラウンジを案内人付でご案内いただく。
 大テーブルに椅子が10脚、5~6人座れるソファーがありとてもきれいだ。
 キッチンもあり、宿泊用の部屋も隣接して用意されている。
 それにここからの眺望がなんとも素晴らしい。
 

 井の頭恩賜公園を眼下に、遠く新宿の高層ビル群、その先には東京タワーに、なんと建築中のスカイツリーが見えるではないか。
 地球の丸さが実感できるすばらしい眺望だ。
 このスカイラウンジは一時間1000円で借りることができるという。
 11階のご自身の部屋も見せていただいたが、西向きなので、天気によっては富士山も見えるという。

 さて、こんな素晴らしいマンションに住まわれていかがですかと感想を求めたところ、快適だよ!と返事が返ってくると思いきや、「いやあ、思ったほど快適じゃないね」という答が返ってきた。
「鍵をかけ忘れると管理人からうるさく言われるし、・・・盗られるものなんてないのにね。こないだも23階のスカイラウンジから11階の自分の部屋へ階段を歩いて降りたよ。・・・1階まで降りるエレベーターとは別なんだよ。・・・知らなくてね」
「・・・」
「こんな狭いところに年寄りが押し込められていると息苦しくて滅入っちゃうよ。・・・奥さんなんか来たくないと言って今でも元の庭付きの家に住んでいるだ。・・・ぼくも時々帰るけどね」

 H先生は御歳73歳、ベストセラーを今一度!とまだまだ執筆には意欲的だから「ホテルで缶詰にされて執筆活動されていると思えば」と言ってあげたら「なるほど、考えようですな」と頷かれていた。

 社会の一線を退いて、田園調布辺りの高級邸宅を手放し臨海都市の超高層マンションに引っ越すのが流行みたいに言われた頃もあったが、今はどうなんだろう。
 気楽で素晴らしそうに見えるマンション住まいも、老人のひとり住まいとなると、素晴らしき眺望なんて一時的なものに過ぎず、別な生活上の問題があるようだ。

 教訓<見かけだけで他人を羨むな>・・・負け惜しみ?

 


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2 コメント

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Unknown (タテさん)
2010-10-05 13:35:46
ん・・・。
考えさせられる内容ですね。美味しくて苦いコーヒーを頂いた感じです。
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シニア生活 (昭和のマロ)
2010-10-06 07:22:58
 タテさん、コメントありがとうございます。

 H先生にとって超高層マンションも単なる寝起きの場に過ぎず、シニアといえどもここを拠点に活躍の場が広がれば場所的に価値があると考えているようです。
 小学校の囲碁教室の話をしたら早速サポーターをやらせてくださいとおっしゃっていました。
 昔野球をやっていてスポーツにも関心があるようです。ちなみにタテさんと同じ大学出身です。
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