昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

小説<手術室から>(37)目の手術(12)

2015-09-30 03:45:02 | 小説・手術室から
 お隣の手術は予想していたものより難儀なものらしかった。
「どうしてあなたはもっと早く来なかったの? 具合が悪くなったのはもっと早くに気づいていたはずよ」
 
 先生は母親が子どもを叱るように話しかけている。

 秀三の方はそのまま放置された。
「少しかかりそうですからもうしばらく待っていてください」
 途中で助手が言ってきたが、血圧計の腕帯が右腕を規則的に絞めつけ、そのデータを記録しに打ち出す音がむなしく響くだけで、長時間放置された。
  
 
 ・・・待たせることになるのならイヤホーンでラジオでも聞かせる用意でもしておいてくれたらいいのに。
 
 どこかの病院では手術中バックグラウンドミュージックで患者の心を癒す工夫をしているって聞いたよ。せめてそのくらいの配慮をしてくれたらいのに。あの営業マンの口舌じゃないけれど、どうもこの病院は旧態依然として進歩がない。もっと患者を大切にしなきゃ治るものも治らないってことが分からないのかな。
 精神的なものが病気の症状を左右する重要な要素であることは医学界では周知の事実だろうが! メンタルケアの重要性に対する認識がかけているね・・・
 いつものように秀三は理屈をこねくり回していた。

 ─続く─

 <好奇心コーナー>
 

 大風台風は与那国島に81メートルという記録的な数字を残して台湾を横断していった。

 



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