昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

なるほど!ち思う日々(293)文明(6)

2014-09-01 04:30:43 | なるほどと思う日々
「いろいろとお世話になりました」
 ボクは叔父さんに最後の言葉をかけた。
 ボクがまだ小学校の頃、戦後間もない、食べることにも事欠く、ましてや子どもの好奇心を満たすテレビはもちろん、遊ぶ道具など何もない時代だった。
 
 そんな時、叔父さんから我が故郷の先輩、中谷宇吉郎の<雪の研究>などたくさんの本をいただいた。
  
 科学のことを平易に書いた本が多かったと思う。
 

 ボクにとって、優しいインテリおじさんだった。

 ご長男が親族を代表して挨拶した。

 
 今や新進気鋭のIT関連企業の社長である。
 しかし、彼はしばらく声が出なかった。顔を赤くして涙を流した。
 孫たちも優しいおじいさんのことを想い、涙を浮かべていたが奥さんは冷静に
ご主人にバイバイと手を振ってお別れした。
 
 ボクらには計り知れない長い闘病生活に終止符を打って、奥さんにとってはホッとした気持ちがすべてだったのだろう。

 葬儀が終わって、火葬場へ回り、精進落としにも参加してくださいと言われたが、夕方には仕事があるので、とお断りして直ちに式場を後にした。

 帰りの新幹線の中で、ふたたび<海辺のカフカ>を手に取り、そこでいうところの不自由な<文明>について思いを巡らした。

 ─続く─

 <色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年>の英訳が完成し、ロンドンでの発売に長い行列ができたという。
 
 
 アメリカでも<女のいない男たち>が発売された時、やはり徹夜で長い行列ができたそうだ。
 
 なぜ、村上春樹は海外でもこんなにもてるのだろう。
 「やり場のない若者の喪失感がある意味自分のライフスタイルを持った若者の姿を、彼は比喩やメタファーを駆使した美しい文体で表現し、共感を覚える読者を誘う」
 ・・・読書ミーティングの講師の解説を思い出した