マル鉄・鉄道写真館

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鉄道陸閘:東武鉄道亀戸線

2017-10-09 00:09:00 | 駅・停車場・操車場
鉄道陸閘:東武鉄道亀戸線


これまでも何度か利用したことのある東武亀戸線。
総武本線亀戸駅から東武伊勢崎線を結ぶ、途中に3駅しかない短路線で、電車も2両編成が走っています。

ローカル然としていますが、走っている区間は都会ですので、特に景色を意識して乗ったことがありませんでした。
今回、途中の小村井駅から亀戸駅まで歩いてみました。犬も歩けば棒に当たる、事前に何も調べずに歩くというのも、新しい発見があって面白いものです。


※撮影は、平成29年10月1日、東武亀戸線 東あずま~亀戸水神間にて。




この写真を撮るとき、線路の勾配に気が付きました。
この写真ではちょっと判りづらいのですが、手前の東あずま駅から亀戸水神駅方向に向かって上り勾配になっています。
先に大きそうな道路もあるような雰囲気でしたので、何か道路を跨ぐために上り勾配になっているものだとばかり思っていました。




暫し歩いてみると、そこにあったのは「亀第16号踏切道」という踏切でした。そして、その横にあったのは・・・




一級河川「北十間川(きたじゅっけんがわ)」でした。
むかし、河川の仕事をしていたのでその存在も勿論知っているし、墨田区、江東区、江戸川区などの江東低地帯の経緯も知っています。
この低地帯を構成するのが荒川水系荒川・隅田川・綾瀬川や、利根川水系から来る江戸川、中川で、その間に人工河川の新中川やこの江東内部河川が縦横に走っています。北十間川もその中の一つになります。

それにしても、結構な高低差があり、川の水面よりも土地の方がかなり下にあるのを実感します。
この北十間川も水位を下げて現在の水面を保っていることから、水門がなければ通常でも水没してしまっているのではないか?と、容易に想像がつきます。






踏切をそれぞれの方向から撮ったものです。
初めは違和感のみだったのですが、その違和感の原因は比較的に早く分かりました。




この門のような物体、工作物です。
門の内側に溝が入っています。これは何か・・・

むかしの仕事の記憶が蘇ってきました。

これは「陸閘」ですね。
「陸閘」は、平時には交通を優先して堤防や護岸を欠き取っていますが、高潮や津波が来た時にそこから海水や川の水が陸地に流れ込んで甚大な被害を及ぼすことになるため、緊急時に閉鎖して護岸の代わりをする施設です。
「陸閘」は水門のように機械的に開閉できる大規模なものや、用水の水門くらいの人力でハンドルにより開閉できるものがあります。

しかし、施設規模の小さなものは、この場所のように角落し(分厚い鉄の板)をこのガイドに差し込んで壁にするようなものもあります。

鉄道ではWikipediaに有名なものが紹介されていますが、かつての仕事の範疇であった場所に簡易ながらもこのような施設があるのを知りませんでした。




おそらく、昔は必要なかったものと思われますが、地下水の汲み上げ過ぎによる地盤沈下が原因となり、このような施設が必要になってしまったものではないかと想像します。


今思えば、江東低地帯を走る鉄道は、この東武亀戸線や伊勢崎線鐘ヶ淵駅前後、京成本線の京成小岩付近、押上線の一部くらいしか地べたを走る路線は思い当たらず、殆どが高架化されているように思います。
道路を跨ぐため、複数の鉄道が交錯するためなどの物理的な理由は勿論そうですが、江東低地帯の河川をいくつも横断する上で高架線でクリアするしかなかったのではないか?などと想像してしまいました。