国鉄 貨車(車掌車):ヨ8000(後編)
前記事からの続きです。
KATOから発売のヨ8000は、5月29日金曜日には店舗に並んだようで、ちょうどポイント消化を兼ねてヨドバシカメラへ行ったのですが、割引率が悪くどうしようか考えている間に、なんと最後の1個が後から来た人に買われていってしまいました。
ただ、実物で確認したいところは見ることができたので、記事の続きを進めたいと思います。
一般乗客にはなかなか乗車する機会のない車掌車ですが、国鉄職員時代に大宮操車場駅で2年間入換を担当していた私としては、ヨ8000を含め、ヨ5000、ヨ6000には数えきれないほど乗ったことがあります。
車内設備を見ると、ヨ5000とヨ6000は車体長が違いますが似たような設備で、デスク付きの回転いすと、ロングシートで構成されています。暖房の引き通し管が無いため、暖房装置として石炭式のだるまストーブが設備されおり、室内隅に石炭置き場のような囲いがありました。
また、貨物室と合造のワフ29500も狭いながらも同様な雰囲気でした。
一方、後進のヨ8000は、木張りペンキ塗りの旧型車とは異なり、電車と同様な化粧板を張り付けてあり、蛍光灯の使用により車内は明るく清潔な感じです。
一番の違いはそれまでに無かった便所の設置。これは乗務する列車掛にとって一番の安心感だったと思います。ただでさえ運行時間の長い貨物列車ですから、トイレに行きたくなればそれなりの措置を考えなければなりませんから。
その分、ただでさえ狭い室内がより狭くなってしまったわけですが、一人乗務のためヨ5000ほどの広い空間は必要ないかもしれません。デスクテーブルもキレイで、回転イスは1客しかないコンパクト設計。ロングシートが確保できなくなったため、確かクロスシートタイプが1組あったように記憶しています。
そして、暖房装置としては石油ストーブになったため、点火は楽になったと思われます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/88/7b59779a2456299b4a5cd98f63a0fcab.jpg)
昭和62年5月16日 EF651050牽引 東北本線 上り貨物列車
昭和61年改正時に列車掛の乗務が原則廃止となった車掌車ですが、一部の列車にはまだ連結されていたものがありました。
貨物列車の大合理化が実施された昭和59年2月までは、車掌車の連結が必須でした。
入換の際も、工場入場への車両は別として、車掌車は1つの群線に溜めるようにしていました。大宮操車場下りハンプ入換では、10番線に溜めておいて、必要の都度与野方へ引き上げていました。
車体重量が常に空車であるため、入換でも一番楽な車両でしたね。しかも添乗位置に屋根が付いているのは車掌車くらい。しかし、ヨ8000だけは屋根が添乗位置までないため、雨の日の入換ではハズレでした。また、旧型車よりブレーキが固めなため、ほんの少しだけですが力が必要です。それでも10tしかありませんので、苦労するようなものではありません。
また、冬場の入換で事務所に戻るのが難しいとき、雨や雪が降っていれば暖をとりたいところ。旧型車では燃え切っていない石炭ストーブが心の拠り所となりますが、ヨ8000は石油ストーブのために暖気は残ることがなく、その点でもハズレでした。※旧型車でも石油ストーブに改造されていた車両もありました。
同期でも列車掛の試験に受かり、車掌乗務をしていた人が何人かいました。こんな車両に一人でのんびりというのもありか、と思いましたが、私はお腹が弱いことが分かったので、こんなところで乗るほんの短い旅でも良かったかもしれない。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/af/9169950cd3c9e78c5e6a546d7f634f02.jpg)
ここではあまり模型のことを書かないようにしているのですが、今回はちょうど機会が重なったので少しだけ触れたいとおもいます。
今回のKATO製ヨ8000のポイントは、今までの製品にはなかった両端のテールランプ及び室内灯の点灯でしょう。価格も高騰してしまいましたが、この時代としてはやむを得ない価格でしょうか?
そして、手ブレーキ側のステップの白色化ですね。これは、実際に入換で貨車に触れていた身としては非常に大きなポイントです。他社製品もそうですが、細かい部分なので他の貨車でもなかなか表現されませんでした。今までは自分で手塗り表現をしていた部分です。モデラーでも拘る人はあまりいないところかもしれません。
ここを敢えて表現した製品ですが、やはり白色成型の別パーツとなっているように見受けられました。ただし、その分全体が白色となってしまったのはちょっと残念かな?と思いました。
写真のように、実車のステップ踏面には白塗装されていませんので、模型は上から見る機会が多い分、逆に違和感を覚えます。
そしてもう一つの白色表現になりますが、ブレーキがある部分の手すりも白塗装されていなければならない部分です。入換手からすれば、安全に飛び乗るための命綱となる表示だからです。しかし、この部分も実車さえも手塗りされている部分だと思われ、Nゲージのような小さな模型において境目をきっちり塗り分けるのは非常に難しい部分です。
近年ではドアの足摺りや戸当たりのステンレス部分の表現までされているものが製品化され、グレードが非常に高くなっています。それでも、コストを考えるとやはりどこかで妥協しなければならないと思いますので、過度な要求は難しい。
やはり、自分で拘る部分は自分で手を入れて何とかする。モデラーであればそれくらいの気持ちは持っていたいものだと思います。
入換をしていた昔を思い出す度、ブレーキを掛けたくなる衝動に襲われます(笑)。
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KATOから発売のヨ8000は、5月29日金曜日には店舗に並んだようで、ちょうどポイント消化を兼ねてヨドバシカメラへ行ったのですが、割引率が悪くどうしようか考えている間に、なんと最後の1個が後から来た人に買われていってしまいました。
ただ、実物で確認したいところは見ることができたので、記事の続きを進めたいと思います。
一般乗客にはなかなか乗車する機会のない車掌車ですが、国鉄職員時代に大宮操車場駅で2年間入換を担当していた私としては、ヨ8000を含め、ヨ5000、ヨ6000には数えきれないほど乗ったことがあります。
車内設備を見ると、ヨ5000とヨ6000は車体長が違いますが似たような設備で、デスク付きの回転いすと、ロングシートで構成されています。暖房の引き通し管が無いため、暖房装置として石炭式のだるまストーブが設備されおり、室内隅に石炭置き場のような囲いがありました。
また、貨物室と合造のワフ29500も狭いながらも同様な雰囲気でした。
一方、後進のヨ8000は、木張りペンキ塗りの旧型車とは異なり、電車と同様な化粧板を張り付けてあり、蛍光灯の使用により車内は明るく清潔な感じです。
一番の違いはそれまでに無かった便所の設置。これは乗務する列車掛にとって一番の安心感だったと思います。ただでさえ運行時間の長い貨物列車ですから、トイレに行きたくなればそれなりの措置を考えなければなりませんから。
その分、ただでさえ狭い室内がより狭くなってしまったわけですが、一人乗務のためヨ5000ほどの広い空間は必要ないかもしれません。デスクテーブルもキレイで、回転イスは1客しかないコンパクト設計。ロングシートが確保できなくなったため、確かクロスシートタイプが1組あったように記憶しています。
そして、暖房装置としては石油ストーブになったため、点火は楽になったと思われます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/88/7b59779a2456299b4a5cd98f63a0fcab.jpg)
昭和62年5月16日 EF651050牽引 東北本線 上り貨物列車
昭和61年改正時に列車掛の乗務が原則廃止となった車掌車ですが、一部の列車にはまだ連結されていたものがありました。
貨物列車の大合理化が実施された昭和59年2月までは、車掌車の連結が必須でした。
入換の際も、工場入場への車両は別として、車掌車は1つの群線に溜めるようにしていました。大宮操車場下りハンプ入換では、10番線に溜めておいて、必要の都度与野方へ引き上げていました。
車体重量が常に空車であるため、入換でも一番楽な車両でしたね。しかも添乗位置に屋根が付いているのは車掌車くらい。しかし、ヨ8000だけは屋根が添乗位置までないため、雨の日の入換ではハズレでした。また、旧型車よりブレーキが固めなため、ほんの少しだけですが力が必要です。それでも10tしかありませんので、苦労するようなものではありません。
また、冬場の入換で事務所に戻るのが難しいとき、雨や雪が降っていれば暖をとりたいところ。旧型車では燃え切っていない石炭ストーブが心の拠り所となりますが、ヨ8000は石油ストーブのために暖気は残ることがなく、その点でもハズレでした。※旧型車でも石油ストーブに改造されていた車両もありました。
同期でも列車掛の試験に受かり、車掌乗務をしていた人が何人かいました。こんな車両に一人でのんびりというのもありか、と思いましたが、私はお腹が弱いことが分かったので、こんなところで乗るほんの短い旅でも良かったかもしれない。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/af/9169950cd3c9e78c5e6a546d7f634f02.jpg)
ここではあまり模型のことを書かないようにしているのですが、今回はちょうど機会が重なったので少しだけ触れたいとおもいます。
今回のKATO製ヨ8000のポイントは、今までの製品にはなかった両端のテールランプ及び室内灯の点灯でしょう。価格も高騰してしまいましたが、この時代としてはやむを得ない価格でしょうか?
そして、手ブレーキ側のステップの白色化ですね。これは、実際に入換で貨車に触れていた身としては非常に大きなポイントです。他社製品もそうですが、細かい部分なので他の貨車でもなかなか表現されませんでした。今までは自分で手塗り表現をしていた部分です。モデラーでも拘る人はあまりいないところかもしれません。
ここを敢えて表現した製品ですが、やはり白色成型の別パーツとなっているように見受けられました。ただし、その分全体が白色となってしまったのはちょっと残念かな?と思いました。
写真のように、実車のステップ踏面には白塗装されていませんので、模型は上から見る機会が多い分、逆に違和感を覚えます。
そしてもう一つの白色表現になりますが、ブレーキがある部分の手すりも白塗装されていなければならない部分です。入換手からすれば、安全に飛び乗るための命綱となる表示だからです。しかし、この部分も実車さえも手塗りされている部分だと思われ、Nゲージのような小さな模型において境目をきっちり塗り分けるのは非常に難しい部分です。
近年ではドアの足摺りや戸当たりのステンレス部分の表現までされているものが製品化され、グレードが非常に高くなっています。それでも、コストを考えるとやはりどこかで妥協しなければならないと思いますので、過度な要求は難しい。
やはり、自分で拘る部分は自分で手を入れて何とかする。モデラーであればそれくらいの気持ちは持っていたいものだと思います。
入換をしていた昔を思い出す度、ブレーキを掛けたくなる衝動に襲われます(笑)。
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