中塚明『司馬遼太郎の歴史観』高文研、
そりゃ、今読む本だぜ。
世の中、嫌韓、在日差別、根強く残っているしな、慰安婦問題も徴用工問題もまるで決着できずにいる。根っこから掘り返さにゃ、相互理解なんて難しいさ。
で、なんで司馬遼太郎なんだ?
司馬遼太郎の明治観、朝鮮観、日本人の常識?ってやつ、引き寄せ続けてるからなぁ。
司馬遼太郎、大好きだったのよ、次から次と夢中で読んださ、昔。ストーリー、面白いしさ、キャラたちお見事!唯物史観に慣れ親しんだ身としちゃ、d人物が動かす歴史、新鮮だったねぇ。歴史の見方てものを教わった気がした。
だが、『坂の上の雲』にぶち当たって、ちょっと待て!おかしくねえか、日露戦争を境に日本が変ったって???
おいおい、回り舞台や一人4役早変わりじゃねえんだから、一瞬で切り替わる!なんてできんだろ。嫌でもだらだらつながってるもんじゃないの?歴史って。
あのめためたに叩きのめされたアジア太平洋戦争、おっと、「大東亜戦争」なんて呼び方自体が木っ端みじんに粉砕されたんだからな、後戻りしちゃなんねえぞ自衛隊!の敗戦後だって、吉田茂から岸信介、ほらな、先の大戦の戦犯までいけしゃあしゃあと登場してるじゃないか。もちろん、朝鮮や中国への差別感だってしっかり引き継がれて、今なのさ。
そんな日露戦争ビフォーアフターみたいに上手く顔すり替えたりできっこないよな、って、ずっと思っていたのさ。明治は良かった!明治維新は世界に誇れる変革!明治100年万々歳!そうなのか?
ここらで一つ、しっかり見直してやろうじゃないの。司馬遼太郎ときっぱり離縁するためにもさ。
明治維新からの日本は、いたいけない少年国家で先進列強のお眼鏡に適うよう優等生を目指し続けたけど、日露戦に勝って自惚れ増長、夜郎自大、いじめっ子ジャイアンになっちまった。って、これ本当か?国際法も守り、弱い者いじめなんてしないいい子だったってへぇぇぇ?
中塚先生、遼太郎のメガネの曇りを拭ってくれる。朝鮮には対しちゃ、明治維新どろか、それ以前から、態度大かぁ!いびり放題、たかり常習だったんだ。吉田松陰しかり、西郷どんしかり、福沢諭吉もひでぇもんだ、朝鮮なんて、独り立ちできないから占領しちまえって。
優しいいい子の明治日本、ほんとの顔は、日清戦争のきっかけだって、日本軍による李朝王宮の急襲占拠がきっかけだし、それに憤激して日本を追い出せって蜂起した東学農民軍に対しちゃ、みんな殺しちゃぇ!の大虐殺、3万人以上殺し尽くし、村々を焼き払った。
それって品行方正のいい子のお仕事?
さらには、反感持ってロシアを頼ろうとした王妃を暗殺しちまった。これも日露戦争の前!
どう見たって、気弱な優等生じゃなかっのさ、お隣さんに対しては。それらとんでねえ犯罪行為の事実、知らんぷりしてんのね、司馬遼太郎。それどころか、朝鮮の人たちは、反抗も出来なきゃ国づくりも出来ない、穏やかだが無気力、太古のまんまだなんて、なにトンチンカンほざいてんだよ、って話し。
司馬遼太郎が日露を境に変質したって証拠として上げるのが、日露戦史のご都合主義的でいい加減な書き方。これも中塚先生に粉々に打ち砕かれる。
なぁに、日本の軍隊は、江華島事件(明治8年)にしても日清戦争にしても、事後に書かれた戦史は、改竄だらけ、都合の悪いことは隠ぺい、歴史を手前らのいいように書き換える身勝手さはなにも、日露戦争後には始まったわけじゃないってことが、とことん重箱の隅的に暴かれちまってるのさ。
って、ことで、日清戦争は紳士的に戦ったとか、武士道が生きていたとか、歴史に誠実だった、なんてのはすべて大嘘。
おい、司馬先生、罪は重いぜ。
その後から今に生き続ける、明治は良かった、日本には武士の情けがあるっておとぎ話の書き手、広報担当の役目果たしちまったんだからさ。
まいったことだよなぁ、素直に歴史と向き合うまえに、大人気の司馬史観と戦わにゃいかんのだからさ。
そう言えば、自衛隊日報隠ぺい事件なんての、おう、日本の軍隊の伝統、しっかり受け継いでるじゃないか!都合悪けりゃなかったことにするってさ。安倍政権での文書抹消、改竄の数々、もはや、日本人の、いや、日本の権力者のお家芸!その究極が歴史修正!日本はなんにも悪くなかったからねぇ!アジアの諸国の独立のお手伝いしたんだからねぇ!って、いい加減にしろ。
いやはや、日本は明治を今にしっかり引き継いでおりますですよ、保守の皆様方、ご心配にゃ及びません、とくとご安心を、司馬遼太郎先生もお守りくださってますし。