泡 盛 日 記

演劇人(役者・演出家)丹下一の日記です。

「感想」に応えて

2008-09-30 11:51:21 | 丹下一の泡盛日記
 昨夜、娘2と椎名林檎が福岡の嘉穂劇場でやったコンサートのDVDをみる。ちょっと前のものだが好きな曲が次々と繰り出されるのでちょっと興奮。病気であぶない人だけど一生懸命で、ふとした表情が実にいい♪

 同志社のプロジェクトで参加した学生が本番をみた友人から「筋がまったくわからなかった」と言われたとの事。こんな時なんと言えばいいのだろうか。

 自分は子どもの頃ゴッホやセザンヌが好きで、その後クレーやマチス、ダリ、マルグリッドに親しみ、ジャクソン・ポロックや岡本太郎など無数のアーティストの作品に触れてきた。
 音楽は欧米のロックから入り、ベートーベンやチャイコフスキー、ラフマニノフ、たくさんのジャズ、そしてD・リー、各地の民族音楽に触れた。(当時歌謡曲にはまったく興味がなかった)山伏神楽の太鼓に心が踊る。ラムシュタインや椎名林檎が好きで、北島三郎も大好きだ。

 なので今では「ジャンル」という概念がほとんどない。もちろん歌舞伎や能、プレイバックシアターという枠はあるが、歌舞伎役者の幸四郎がミュージカルを演じるのをみて「歌舞伎役者がミュージカル」というよりも「松本幸四郎」という俳優または存在を第一に思う。

 そして、もちろんお芝居や演劇に「筋」または「物語」は必要な時もあると思っている。そして先日の小さな舞台作品も表には出ないが水面下で流れるストーリーはつくってあるつもりだ。
 リハーサルをみてくれた昨年参加の学生が「理由はわからないが、水の底って感じがしたのはなぜだろう?」と言ってくれてとてもうれしかった。
 だってその通り、その裏のストーリーはすべて水に関係していて水底のお話もあった。それこそ「水面下のストーリー」なのだ。

 韓国のTVドラマでは「ありえないこと」がしょっちゅう起こる、といわれる。記憶喪失で親族が他人になったり、突然の裏切りがあったり。自分はこれは朝鮮半島の歴史をみれば「ありえないこと」ではない、むしろリアリティがある話だと思っている。
 カフカの「審判」も「ありえない話」と言われたが、ナチスがしたことは「審判」にも共通し、「ありえないこと」が「ありえる」ことを我々は思い知らされたはずだ。
 朝鮮半島で起こった戦争で生き別れた母親に50年を経て再会したら「別人」になっていたのではなかったか。そして、2001年9月11日におこったことは「現実」だ。
 世界は「ありえないこと」で満ちている。

 以前そんな話をしたら「そんな風に深読みするんだ」と同業者に言われたことがあった。あえて言わせてもらうが演劇人が一般的な現代史すら知らない(または見ようとしない)ことのほうが自分には「ありえないこと」に思える。

 もちろん伝えるためにはストーリーが見えやすいほうがいいと思うこともあるし、「筋」がしっかりしている舞台に出演もする。
 そして今回の「感想」には「日本のテレビばかり見てないで。他にも色々と面白いものはあるよ~」と伝えたいな。
コメント
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