Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

知らん仏より知っとる鬼

2014年12月03日 | 日々、徒然に

菅原文太さんが亡くなって、しばらく呆けている。

とはいっても仕事はしているし、朝起きて夜寝るという

当たり前の日々を過ごしているのだけど、自分の体の中身が

どこかに飛んで行っているような、そんな気がしてならない。

高倉健さんが亡くなったときもショックだったけれど、

それとはちょっと違う感覚というか。

 

健さんと時を同じくして、亡くなってしまい、

共にヤクザ映画の大スターだったことで、比較されているけれど、

まったく違ったタイプの俳優だったと思う。

フィルモグラフィを見てもそうだし、

おそらくその生き方も、だ。

 

初めて菅原文太という名前を意識したのは

「トラック野郎」からだと思う。

そのときはもう押しも押される大スターだった。

寅さんと比較されることも多いけれど、まさに70年代半の文太さんは、

渥美清と共に、日本映画界の代表的存在だったと思う。

 

「トラック野郎」シリーズが終了する79年前後、

「犬笛」や「炎のごとく」といった

主演作が不入りということもあって、

助演にまわって個性を発揮するようになる。

寺山修司監督の「ボクサー」(77)では清水健太郎、

長谷川和彦監督の「太陽を盗んだ男」(79)ではジュリーをサポート。

そのあたりは「幸福の黄色いハンカチ」で

主演しかできなくなった健さんとは対照的だし、

結果的に俳優としての可能性を伸ばしたのは文太さんの方だと思う。

ジブリ映画で声優をやったりする柔軟性もあったというか、

そもそもこの人の最大の魅力はあの渋くて太い声だ。

 

そんな文太作品から好きな映画を選ぼうとすると、

「仁義なき戦い」の5本と「トラック野郎」の10本は別格というか、

ある意味、完璧な映画なので、それ以外のものを挙げてみると——。

 

加藤泰監督の「緋牡丹博徒・お竜参上」(70)。 

任侠映画では長らく、鶴田浩二と高倉健が君臨していて、

藤純子の「緋牡丹博徒」シリーズも、このふたりが

相手役で出ていたのだけど、ようやく俳優としてのステータスが

上がってきて、ついにお竜さんの相手役になった文太さん。

本作は、加藤泰の名作中の名作ということは置いといて、

そのドスさばきは、圧倒的に泥臭い。

健さんのキレイな剣裁きとは真逆にある下品なところが、いい。

 

 深作欣二監督の「人斬り与太・狂犬三兄弟」(72)

泥臭いと言えば、任侠映画の人気が下火になってきたところに、

実録路線と呼ばれる、現代劇のリアルなヤクザ映画が台頭し、

そこで文太さんが演じた「人斬り与太」シリーズの2作目。

まさに狂犬。どの組織にも属すことができず、

自分に正直すぎるアウトローを鮮烈に演じた文太さん。

「仁義なき戦い」が生まれる直前の、傑作中の傑作。

ちなみに三兄弟とは、文太、田中邦衛、三谷昇。濃すぎでしょう。

 

岡本喜八監督の「ダイナマイトどんどん」(78)。

「トラック野郎」でコミカルな個性を発揮した文太さんは、

勢いに乗って、ヤクザ同士の抗争を野球で解決するという

痛快きわまりない野球映画の主演を張る。

どうも不入りだったみたいだけど、

明らかにこれは、日本映画における

野球映画の最高峰だと断言しよう。

岡本喜八監督のスピーディーな演出が素晴らしい。

 

近年も「傷だらけの天使」とか「どら平太」「バッテリー」といった映画で、

重鎮的なポジションで観客を楽しませてくれた文太さん。

山田洋次監督の「東京家族」を降板したのが残念というか。

結局、山田監督の映画に出なかったのも健さんとは

違うタイプの俳優だったせいかもと思ったりする。

 

文太さんが亡くなっても、

「仁義なき戦い」を見れば、また会える。

だから悲しむことなく、

あのギラギラした文太さんをスクリーンで見続けようかと。

 

 

 

 

 

 

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2 コメント

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Unknown (denkihanabi)
2014-12-04 00:55:51
この件に関しては、コメントするべき人は私ではない。黙祷。
返信する
Unknown (taco)
2014-12-04 18:20:59
コメントしてほしいのは、
すでに鬼籍に入ったEなのだけど、
代わりに書こうかと。
返信する

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