ソフィア・コッポラ監督「プリシラ」を見る。
プリシラとは、エルヴィスの妻、プリシラ・プレスリーのこと。
ポスターを見る限り、甘い映画に見えるのだけど、
けっこうな苦味というか雑味というか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/4f/68cd653d03ee186ae7699c47a46e85ac.jpg)
ソフィア・コッポラという監督は、
ゆるゆるとした日常描写に本領を発揮する人だと思う。
「ロスト・イン・トランスレーション」も
「Somewhere」も、セレブな人たちが、
ダラダラと日常を送りながら、
内面に少しずつ溜まってくる違和感のようなものを
浮き彫りにしていく。
演出は軽快でリズミカル。
その時代背景に合った音楽に合わせて、
本作でいうと、プリシラが14歳でエルヴィスと出会い、
そのファッションから髪型、表情が変わっていくところが興味深い。
このあたりが本作のいちばんの見どころで、
彼女の容姿の変遷がアメリカの戦後カルチャーを写しだしていると
言ったら深読みのしすぎだろうか。
プリシラを演じるケイリー・スピーニーは25歳というけれど、
冒頭に登場したときの彼女はお子様にしか見えない。
メイクやスタイリスト、演技が上手なんだろうけど、
エルヴィスという10歳離れた男性と、
しかも世界一のスーパースターとの恋愛は、
ごくごく控え目に、じわじわと火が付いていくような感じで
いじらしいというか、じれったいというか。
その初々しい感じが、だんだん影をひそめるようになり、
すれ違いと小さな諍いが続いていく。
プリシラは最後までエルヴィスを理解できず、
エルヴィスのほうもプリシラへの愛情は
とことん不器用だということが描かれていく。
金持ちやセレブの憂鬱さなんか
理解できない(したくない)けれど、
なんとなく感じることができるのが
ソフィア・コッポラという監督の良さというか。
見たことのないものを見せてくれるのが
映画の魅力のひとつだと思ったりするのです。
補足として。
2年前に公開されたバズ・ラーマン監督の「エルヴィス」は、
悪徳マネージャーのパーカー大佐の視点から描いていて、
本作と比較すると興味深いのだけど、
エルヴィスという人の描き方がほぼ同じなので、
そういう意味で、2本立てで見ると良さげです。
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