Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

戦火のかなた

2019年11月28日 | 読んでいろいろ思うところが

白川優子「紛争地の看護師」(小学館)を読む。

シリアやイラク、南スーダンやイエメン、

そしてパレスチナなどの紛争地で

医療支援を続けている「国境なき医師団」の

看護師さんによるルポルタージュ。

 

 

どのエピソードも想像を絶するものばかりだけれど、

白川さんが南スーダンで医療支援に赴いた際、

反政府軍の攻撃から逃れるために

国連基地の敷地内に診療所を移したのはいいけれど、

次第に食料や水が欠乏し、医療どころか

スタッフの命にかかわる事態になってしまうところ。

国連からの支援はまったくなく、戦闘に巻き込まれる恐怖に

おののきながら、ついにはナイル川の水を飲むことになる。

川には内戦で犠牲となった人たちの

遺体がたくさん流されていたという。しかし、飲まざるを得ない。

塩素で消毒されているとはいえ、茶色く濁った水を。

 

白川さんはそのときの状況をこう書いている。

 

「私は最後まで抵抗していたが、他のメンバー全員がその水を

本当に口にしたのを確認し、最後は覚悟を決め、

もう何も考えずに飲んだ。苦さを想像していたその生ぬるい水は、

むしろ甘かった。それがかえって気持ち悪かった」

 

勇気があるとか、ヒューマニズムにあふれている、

と賞賛するのは簡単だ。

平和な日本で看護師をすればいいのに、どうしてそんな危険な

ところに行くんですか、と聞くのも愚問だろう。

 

それまでの経験と知識を最大限に活用しつつ、

職務を全うしようとすることに

忠実というか覚悟がある人たちに向かって、

安易な言葉をかけることは、やっぱりできない。

 

まずは、世界には多くの戦争が起こっていて、

犠牲となっている人たちがいるということを認識すること。

そして、白川さんのような医療的な支援はできないけれど、

自分に何ができるか、を考えるきっかけにするべきなのだろう。

 

コメント
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