Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

半笑いの美学

2019年04月04日 | 日々、徒然に

とある版元の編集さんから

実に5,6年ぶりぐらいに連絡をいただく。

仕事の依頼ということで、ありがたい限りというか。

恐ろしいほどの混み具合の予感に、思わず半笑い。

にやけているのではない。人間、本当に哀しいときは

笑うんです、という小津安二郎の言葉を引くまでもなく、

人間、本当に辛いときほど、ヘラヘラしてしまうのです。

 

 

大事な一人娘が嫁いでも、長年連れ添った妻に先立たれても、

この人はいつも穏やかな半笑いを浮かべていたなあと。

あんたはええ人じゃ。

 

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骨つきチキンは好きじゃない

2019年04月04日 | 映画など

ピーター・ファレリー監督「グリーンブック」を見る。

下品な白人の用心棒と、

セレブな黒人ピアニストが織りなす

ほっこりしたロードムービーでオスカー作品賞とな。

この監督って「メリーに首ったけ」とかの人だよね?

あんなおバカな映画(褒め言葉)を撮っていた人が、

こんな身に滲みる良心作をつくるなんて。

 

 

 

ほっこり、とは書いたけれど、

舞台となった1962年のアメリカ、

特にディープサウスと呼ばれる南部は

露骨な人種差別がまかり通っていた時代だ。

 

本作はそんな時代に

あえて黒人のシャーリーが公演して回るわけで、

運転手である白人のトニーは

黒人に対して差別意識はあるけれど、

人間としては悪くない(ここ、重要)ことがだんだんわかってくる。

そんな彼が、南部で受けるあまりの黒人差別に怒り、

シャーリーの高貴な人柄に惹かれていく。

 

これは町山智浩さんがラジオで語っていたのだけど、

いわゆる骨付きのフライドチキンって

おもに黒人が食べるものだとされていて、

つまりお上品にナイフとフォークで食べる部位以外の

骨付きの肉、白人が食べたがらない部位を

黒人に食べさせていた歴史があるらしい。

 

実際、育ちのいいシャーリーが

骨付きのチキンの食べ方に

四苦八苦する場面が出てくるのだけど、

あの世界的に有名なフライドチキンのチェーンが

白人で白いヒゲのおっさんをマスコットにしているのは、

歴史のねつ造、というか、

二重三重に黒人を踏みつけているのではないか、と。

 

そうしたことを踏まえると

この映画の描写の細やかさがよくわかるというか。

冒頭で金に困った白人のトニーが

ホットドッグの早食い競争をする場面など、

恵まれない白人たちの境遇を描くところも含めて

「食いもの」からいろんなことが浮き上がってくる。

 

粗野で学のないトニーが妻への手紙を書くときに、

シャーリーが文学的なアドバイスをする場面がいい。

このシーンが何度も繰り返されて、

最後の最後で感動を呼ぶわけで、

ここまで書くとネタバレになりますな。すみません。

 

ともあれ登場人物が手紙を書く、というのは

かなり映画的だと思うのだけど、なぜだろう。

文字が言葉として音声になり、

その響きが遠く離れたところまで

飛んでいく感じがいいのかな。

 

 

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