Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

You had me but I never had you

2019年04月12日 | 映画など

グリゴリー・チュフライ監督

「君たちのことは忘れない」を見る。

1959年のソ連映画で「誓いの休暇」という、

それはそれは珠玉の名編があったのだけど、

その監督が78年に撮ったのが本作。

時代背景は第二次大戦のさなか。

ナチスドイツと戦っていたソ連の

庶民の側から描いた映画はあまり見たことがなく、新鮮。

 

 

まるで日本映画の母もの映画を見ているような気分になるというか、

主役の母親であるロシアのおばさんが、

三益愛子や望月優子に見えてくる不思議。

ロシアと日本という違いはあるけれど、

子を思う母の姿は世界共通であり、

反戦への思いが頭をもたげる力強い描写に見入る。

 

次男が召集され、母親は悲嘆に暮れるが、

空襲で息子が怪我をしたところを見つけ、

そのまま家に連れ去り、自宅の納屋にかくまう。

見つかったら銃殺は免れない。母親はひたすら次男を隠し、

他人を寄せ付けず、捕虜だった長男が帰ってきても邪険にし、

家から追い出してしまう。

かくまわれた次男は、ずっと家にひきこもり、

かつての恋人が他の男と結婚するところを

窓から見て精神を病み、絶望する。

母親は、息子への愛情がエスカレートするあまり、

その言動に狂気を帯びていく。

サスペンスまがいの展開のなか、この映画の作り手たちは

人を狂気に陥らせる戦争というものに

焦点を当てているのは間違いない。

 

戦争が終わったときに、長男が列車の窓から

たいまつを持って白馬にのる人を見るシーンの美しさ。

暗闇に燃え上がる火のイメージに、

いろんな思いが伝わってくる。

 

ユング心理学の本にこうあった。

いわゆる母性というものは、

人を安心させ、安らぎをもたらすものではあるけれど、

その反面、人を飲み込み自由を奪うものだ、と。

そういえば、ポン・ジュノ監督の「母なる証明」も、

人殺しの息子を手段を選ばず

徹底的に守り抜く母親の話だったなあと

ぼんやり思い起こしたりするシネフィルでした。

 

コメント
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