Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

夢のあとさき・その1

2018年01月11日 | 日々、徒然に

もう10年以上前のことになるだろうか。

 

当時、とある雑誌をつくっていて、

その編集部にいきなりKという人物から、

自分を参加させろ、との電話があった。

電話に出たIくんは、「相当失礼な奴でしたよ」と。

 

まあでも、参加してくれるなら、

ということで、編集長につき合って、

その失礼な人物・Kと会うことになった。

会った場所は初台のオペラシティ。

かなりバブリーなその建物の中にある

グッズ売り場の前で待ち合わせた。

 

その人物・Kと会って、少し驚いた。

 

かなり背が低い人だった。

たぶん150センチぐらいだったと思う。

その容貌は小太りの女の子、といった感じなのだけど、

ヒゲを生やしていて、男だか女だかわからない人だった。

 

Kは初対面でいきなり、

「なんであんたがいるの?」と自分を睨みつけてきた。

その怒りの声は男の人のそれではなく、

女の人の声としか聞こえなかった。

実は編集長が1人でKと会う約束をしていたのだけど、

いかにも怪しい感じだったので、急遽、つき合うことにしたのだ。

そのことを知らされなかったことに、Kは激怒している様子だった。

 

自分はその時点でかなり頭にきていたので、

帰れば良かったのだけど、

好奇心というか怖いもの見たさというか、

そのままグッズ売り場の隣にあるカフェに入った。

 

彼は座ったとたん、オーダーを取りに来たお姉さんに、

甲高い声でストロベリーなんとか、という

パフェみたいなものを頼んだ、自分たちは普通にコーヒー。

彼はいきなり、とある有名俳優Tの名前を出した。

 

「俺は演劇をやってるんだけど、Tと知り合いでさ。

 あんたたちの雑誌でTのインタビューをやったらどう?」

 

演劇とか映画が好きな人なら

誰でも知っている有名俳優の名前と、

明らかに胡散臭いKとのギャップがものすごかったというか。

確かにその俳優は有名だけど、

インタビューしたい人は自分たちで決めたいし。

という意味合いのことを言ったら、

 

「なんで? 俺が書くんだよ。

 でも俺はレコーダー持ってないから、録音してもらわないと」

 

この人は何を言ってるのだろう、と思いながらも、

うちの雑誌はノーギャラでやってもらってます、と言ったら、

Kはぱっくりと口を開けて、

 

「なんだそれは。あんたどんな仕事してるんだ?」

 

と自分に質問してきたので、

本とか雑誌の編集、と答えると、

 

「じゃあ、それやらせてよ。俺、ここで書いてるから」

 

と、Kはある有名な雑誌を出して、

自分が載っているページを見せてきた。

今となっては覚えていないけど、よくこんな記事載せたなあという

ひどい記事だった記憶がある。

 

「ほら、どう? どう思う?」

 

無理矢理感想を求めてきた。

そのとき何て答えたのだろう。

「個性的ですね」とかなんとか、

適当なことを言ったような気がしないでもない。

 

「あんたんとこのその雑誌、発行部数は?」

 

と聞いてくるので、正直に答えると、

 

「はああ? たったそれだけ?

 売れてるの? なんだそれ?」

 

怒りの沸点が高い自分を褒めてあげたいところだけど、

ブチ切れてもよかったと今でも思う。

 

「映画の試写状が来るの? 

 じゃあそれ俺にちょうだいよ、ねえ」

 

とか失礼すぎる話が連発。

呆れて物も言えない自分と編集長。

 

いい加減、話が続かないので、打ち合わせは終了。

こいつのパフェ代なんか絶対奢るものか、と思い、

「じゃあ割り勘で」と言ったら、

 

「はあ? なんで? 普通そっちが出すでしょ?」

 

お前が会いたいって言ったくせに、と

またブチ切れそうになったけど、

「まあまあ」と編集長が「いいよいいよ」と。

結局2人でKのパフェ代を払うことになった。

もう二度と会うものか、と思いながら。

 

カフェを出て、Kは

 

「俺はこれからOさんのところに行くんだ」

 

と、高名な舞踏家の名前を出してきた。

きょとんとしていると、

 

「あれ、知らないの? Oさん、ああやっぱりね」

 

といかにも見下したような態度を取ってきた。

知るか。とろくに挨拶もせず、Kと別れて編集長と帰る。

こう書いていると、10年以上も前のことなのに、今でも腹が立つ。

よっぽどひどい記憶だったんだな、と思う。

 

ひどいのに会っちゃったなあ。

でも二度と会うことはないからいいや。

 

と思っていたら、数日後、

携帯が鳴って、出たらKだった。

カフェで会ったとき、

つい携帯番号を教えてしまっていたからだ。

 

つづく(たぶん)

 

 

コメント
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