沢木耕太郎「深夜特急1~6」(新潮文庫)を読む。
いつか読もうと思っていた本で、ようやく叶ったというか。
1冊1冊はとても薄いので、6巻を一気に読むことができた。
なぜこれまで読まなかったかというと、
下手に影響を受けて、またアジア行きてえ、
とハマってしまうのも癪だなと思ったというか。
沢木耕太郎が書くものにはそういう力がある。
でも杞憂だった。
バックパッカー、当時はヒッピーと言ったのだろうけど、
旅から旅、出会った人々との交流は読んでいてスリリングで、
ちょっともの悲しい。そんな体験してみたい、と誰もが思うだろう。
香港の連れ込み旅館での滞在や、
マカオのカジノでギャンブルにハマるくだりなどは楽しく読める。
しかし、タイからマレーシア、そしてインドで貧民街の人々を
目の当たりにするあたりから、次第に旅の疲れというか、
倦怠感のようなものが漂ってくる。
そしてトルコからギリシャ。ヨーロッパに入ると、
旅に対する慣れというか、達観するようになるというか。
まるで子供が生まれてから、少年から青年、
そして大人になってだんだん老成していく過程に似ている。
当時、沢木耕太郎は26歳ぐらいだったと思われるが、
旅の終わりの頃は、まるで老人が書いているような文章になっている。
10代の頃に読んでいたら、もろ触発されて
アジアに飛び出してしまうのだろうけど、
おっさんになった今、こういうものが人生なんだなと
しみじみ読めたりするわけで。
実際、沢木耕太郎は旅から帰ってすぐこの作品を書いたわけではなく、
完結まで17年かかったというか、17年かけたことからも、
この作品が単なる旅行記以上のものになっていることがわかる。
それでも行きたくなるけれど。アジア。