松本清張さんが亡くなってもう20年か。早く感じるなぁ、とっても。出会いはいつだったのか忘れてしまったけれど遥か昔の中学生時代だったか。小学生の頃はシャーロックホームズや江戸川乱歩が好きだった。ドロドロとした人間模様もそれなりにあったのだろうけど、洋書の児童書にはそこまで描かれてはいなかったので分かり易かった。日本のミステリーは横溝正史は先祖の怨念や土地にまつわるオドロオドロしい複雑怪奇。対しての清張さんは社会派と言われ、政治、金、女をテーマにしたものが多く、それなりの年齢にならないと理解し難かったのだ。初めに手にしたのが何だったのかも覚えてはいない。たぶん「点と線」「ゼロの焦点」「霧の旗」あたりだったか? ページを進むのがもどかしいような、読んでしまったら楽しみが終わってしまう、との寂しさも感じながら読んだこともあった。今回のドラマ「市長死す」はタイトルすら知らなかった。主演は反町隆史。そぐわない気がしてのらなかった、初めは。新聞のドラマ評にはほめ言葉が並んでいたのでちょっとその気になって見た。久々の反町君は相変わらずだけどちょっと落ち着いたかな、の印象。(そりゃそうだ。こちらが見知っているのはGTOやビーチボーイズの時代の彼。あれから何年経ってんだー)老いらくの恋に血迷った伯父である市長の死の真相を突き止める重要な役。それらしく犯人を追い詰めとりあえずの恰好はついていた。ちらりと嫌な感じを見せた犯人役の石黒賢もやや良。そして何よりも女の恐ろしさを淡々と演じた老いらくの恋の相手役、木村多江。この人の怪しさが素敵だった。怪しさをほめるのも変だけれどそう言いたくなるような演技。とびきりの美人じゃないけれど、内側に強い芯の通ったこのタイプの女がいちばん怖いと教えてくれた。女のでさえこう感じたのだから男からしたらたまらない話だったんじゃないのか。この女心を彼はどうやって理解したのか。不思議な人だ、松本清張さんは。読むたびにそう思わせられた。
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