スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

王位戦&定義の目的

2016-08-10 19:38:00 | 将棋
 旭川で指された第57期王位戦七番勝負第三局。
 羽生善治王位の先手。木村一基八段は矢倉なら受ける気があったようですが先手は角換りを志向。後手はそれは拒否して横歩取りに。早い段階で戦いになりましたが,ずっと均衡がとれていたのではないかと思います。
                                     
 先手が4筋に歩を垂らして後手が受けた局面。後手は駒得で馬ができているので,徹底抗戦するのは方針としては正しいのではないかと思います。
 先手は▲2四桂と跳ねて後手は△3一金と逃げました。このときに跳ねた桂馬は5六にも打つことができた局面で3六に打ったものですが,こちらに跳ねたのでその選択を生かした手順に進んでいたとはいえるでしょう。先手は▲1六飛と回りました。先手にとって最も懸念されていたのが飛車の働きでしたから,こう転換できるようになってその不安は解消できたといえそうです。
 △7四香▲7七歩としてから△6四歩で桂馬を取りにいきました。得していた駒をここに打ってしまうのはもったいない気がしますので,歩を使わせることが重要という判断だったのではないかと推測します。
 先手は▲1四飛△同歩と飛車角交換して▲7一角と打ち込みました。そこで△7一飛と打つのでは少し苦しい感はあります。先手は桂馬が生きているうちに攻めきらなければならないとみたようで▲6二角成△同飛と切って▲3二金と打っていきました。入手したばかりの駒を立て続けに打っていますので,手順自体は快調といえるのでしょう。取れば狙った桂馬に逃げられつつ成られるので△5二玉。先手は▲3一金と取るほかありません。
                                     
 実戦はこれを△同銀と取ったので結局は▲5三桂成とされ△同玉▲3三飛で先手の勝勢に。第2図で△6五歩と取れないのでは後手が厳しいと思います。それでも後手の負けなら,△6四歩と突いたところで何かほかの手を指さなければいけなかったということではないでしょうか。
 羽生王位が勝って2勝1敗。第四局は22日と23日です。

 なぜ事物の本性を見逃すということが危険なことなのでしょうか。他面からいえば,なぜ事物の定義はその事物の本性,内的本性を明らかにしなければならないのでしょうか。スピノザによればそれは,形相的な意味における自然を再現するべきである知性の秩序の連結を転倒させないようにするためです。
 これは『知性改善論Tractatus de Intellectus Emendatione』の主旨と関係した記述であるといえます。というのも『知性改善論』においては,知性の連結のうちに知性の対象となるような自然を再現させるということが目標のひとつになっているからです。けれどもこれは,『知性改善論』についてだけ妥当するような説明ではありません。あるいは『知性改善論』に限定された目標ではありません。スピノザの哲学全体の目標のひとつであると解しても差し支えないと思います。
 『エチカ』では第二部定理七が論証されるとき,ただ第一部公理四にだけ訴求されています。したがって第一部公理四の意味のうちに,すでに平行論の成立を予感させるものが含まれているといえます。ですからそれが目標として設定されるかどうかは別としても,知性が形相的な意味での自然を再現するという思惟の営みに関しては,否定されることはあり得ず,むしろ肯定されていると解して構わないと思われます。よって形相的自然の知性による再現と関連して記述されていると推定される『知性改善論』の当該部分の定義論の前提は,『エチカ』でも成立すると僕は考えます。
 これでみれば,事物の定義というのは,このような目的に資するものでなければならないとスピノザは考えていることになります。いい換えれば,ある事物を定義するということは,それ自体がひとつの目的であるとは考えられていないのです。この部分は意外と重要かもしれません。
 もしこのように考えるなら,ことばと観念が異なるということに注目すれば,もしも定義が知性による自然の十全な認識に役立つ内容を有しているならば,定義されるものがどういうことばで記号化されるのかはさして重要ではないという見解が出てくるでしょう。つまりこの部分には,唯名論を定義として肯定する要素があると考えられるのです。

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