スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

クイーンエリザベスⅡ世カップ&『知性改善論』

2012-05-01 18:58:11 | 海外競馬
 4月29日に香港のシャティン競馬場で行われたクイーンエリザベスⅡ世カップGⅠ芝2000mに,日本からルーラーシップが参戦しました。
 13頭立てで8番枠からの発走。発走後は押していましたので,ある程度の位置を確保しにいったものと思います。結果的に逃げた馬の直後,インの3番手に。おそらく前半の1000mが62秒台のスローペースになったと思われ,これは絶好位だったといえるでしょう。問題は脚が残っていたとして,スペースが開くかどうか。逃げた馬は最初のコーナーでもやや外に膨れていたのですが,4コーナーでも同様。狙いすましたかのように1頭分だけ開いた最内に突っ込み,直線に入ると先頭に。残り300mの辺りからは後ろをぐんぐんと離していき,残り150m付近ではセーフティーリードに。大型ビジョンで確認したジョッキーが最後は手をあげてのゴール。4馬身近くの差をつけての快勝でした。
 優勝したルーラーシップはこれまで重賞は4勝していましたが,大レースは初制覇。今年はとても強力な相手は不在というメンバー構成で,力を発揮すれば勝つこともあるだろうと思っていました。ただ,大レースになると自身の内面的な問題からその能力を十全に発揮できないというケースが多かった馬。この快勝は一皮剥けたということかもしれません。おそらくこのくらいが最適距離で,こちらに回った陣営の選択も見事だったと思います。父はキングカメハメハ,母は1997年JRA賞年度代表馬のエアグルーヴ。半姉に2004年JRA賞最優秀古馬牝馬のアドマイヤグルーヴ,半兄に長距離重賞2勝のフォゲッタブル。Rulershipは支配者の地位。
 騎乗したのはイタリアのウンベルト・リスポリ騎手で,馬の国籍における日本馬の騎乗としては,昨年の高松宮記念以来の大レース2勝目。昨年の日経新春杯でもこの馬に乗って勝っていて,ほかの騎手よりも手が合っているように思います。
 管理しているのは角居勝彦調教師。昨年の秋華賞以来の大レース制覇で,昨年のドバイワールドカップ以来の海外GⅠ制覇。香港では2005年に香港マイルを制していて,GⅠ2勝目。日本馬による海外重賞制覇はドバイワールドカップ以来で,香港でも2005年の香港マイル以来で,このレースは2002年,2003年に続いて9年ぶりとなる3勝目。
                         

 『短論文Korte Verhandeling van God / de Mensch en deszelfs Welstand』に続いては『知性改善論Tractatus de Intellectus Emendatione』の認識論です。
 『知性改善論』は未完のまま終わっています。そしてこれが未完となってしまった理由について,ドゥルーズGille Deleuzeは共通概念notiones communesの発見という観点から説明しています。
 『知性改善論』の最後の部分は,人間の精神mens humanaのうちに所与のものとして十全な観念idea adaequataが実在し得るかという問題を扱っています。そしてそれは,有名な例でいえば卵が先か鶏が先かというようなトートロジーに陥ってしまっています。ドゥルーズの説明では,そのときにスピノザは共通概念というのを発見したのだが,それをそこに導入するためには,もはや『知性改善論』には力不足な点があるので,スピノザはそれを中途で放り出し,『エチカ』において改めて体系だててこの概念を導入したというようになっています。
 これは哲学の変遷という側面からみるならば,非常に妥当な説明であるといえるでしょう。ただし,『知性改善論』が未完に終わってしまった理由として正しいのかどうかは,正直なところ僕には分かりません。というのはある人間が執筆中のものを断念して新たに書き始めるという場合,そのすべてを執筆中のものの内部の条件にだけ求めることは必ずしもできないと思えるからです。すなわち何らかの外的理由によって『知性改善論』は未完のまま残されたと考えることもできるわけです。たとえば僕はスピノザにとっては哲学そのものよりも,実践という側面が重要であったと思っていますが,時代的状況がスピノザをある実践の方向に向かせるということによって,『知性改善論』の執筆を中途で放棄させるようになるということは,可能性としてはあり得るわけです。ですからなぜ『知性改善論』が未完のまま放置されてしまったのかということの理由に関しては,僕ははっきりとしたことは分からないですから,この点については見解opinioを表明すること自体を控えます。
 未完に終わったとはいえ,岩波文庫版の『エチカ』の訳者である畠中尚志が述べているように,『知性改善論』は『エチカ』の序文的な意味合いというのが大いにあります。よってそこで表明されている認識論の基礎部分は,『エチカ』と大差はないものになっています。
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