スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

カーンの雑感⑮&観念の原因

2023-09-24 18:54:02 | NOAH
 カーンの雑感⑭でいったように,カーンは吉村道明の生きざまを継いで,まだ現役を続けられる状況で引退し,そのまま復帰しませんでした。ですからカーンは,引退した後に復帰するということについては批判的で,残念だと語っています。これはカーンの率直な心情だといっていいでしょう。
 カーンはこの観点から馬場についても語っています。馬場は現役のまま死んでしまいましたから,プロレスラーとしてのいわゆる引退というのはありませんでした。晩年の馬場は義兄弟タッグとして悪役商会と試合をするというのがほとんどで,前半の試合に出場することも多かったです。カーンはこのことについて,馬場がそういう位置で試合をするようになるということは考えられなかったけれども,自分の力が落ちているということを認めてメーンで試合を続けるということはしないで現役を続けたということは素晴らしいと語っています。カーンはまだ馬場が日本プロレスのエースであった時代から馬場に対して好感をもっていたわけですから,その馬場が前座といっていい位置で試合をするようになったことを考えられなかったというのは事実でしょう。また,引退して復帰するというようなレスラーや,力量が衰えてもメーンで試合をすることに固執するようなレスラーよりも馬場の方を評価するというのも,まだトップでやれる力量を持ちながら現役を退き,復帰をしなかったカーンからしてみれば当然のことといえそうです。
                                        
 カーンは引退した後は,馬場と会う機会は一度もなかったそうです。馬場の死後にカーンが経営する店に来た,『全日本プロレス超人伝説』などの著者である門馬忠雄から,馬場は死ぬまでカーンのことを心配していたとカーンは伝えられたそうです。カーンは猪木よりも馬場を尊敬していると公言していますし,門馬も著書では馬場派であるといっています。馬場がカーンや門馬をどう思っていたかは知る由もありませんが,これが門馬のリップサービスであるとはいえないように感じます。
 カーンの雑感はこれで終わりです。

 第二部定理四九でいわれているように,意志作用volitioは観念ideaを超越するものではなく,観念そのものが含んでいる肯定affirmatioないし否定negatioにほかなりません。いい換えれば個々の観念と個々の意志作用は同一です。したがって,ある意志作用がその観念の原因causaであることはできないのです。つまり,知性intellectusは,たとえばXの真の観念idea veraを有することを意志するがゆえにXの真の観念をもつようになるのではなく,Xの真の観念をもつということと,Xの真の観念をXについて肯定するaffirmare意志作用は,知性のうちに同時に,他面からいえば同じ思惟作用のふたつの側面として知性のうちに現れるといわなければなりません。そして知性のうちにXの観念があるということが,その知性がXの観念を神に帰しているということなのですから,これはつまり,知性はXの観念を神に帰することを意志することで実際にXの観念を神に帰するのではなく,Xの観念を神に帰するのと同時に,Xの観念を神に帰するような意志作用を有するようになるのです。
 これをひとつの実例で説明しておきましょう。
 僕は今回の考察の過程で,円の形相的本性essentia formalisは,一端が固定されもう一端が運動する直線によって形成される図形であるといい,知性が円の真の観念を有するとは,このことを知性が概念するconcipereことであるといいました。そしてこのとき,直線のこのような運動motusは知性による任意の思惟作用であるから,これを円の定義Definitioとしてみた場合には,確かにこの言明には円の発生が含まれているけれども,ある虚構もまた含まれていると指摘しました。これでみれば,知性が任意の思惟作用によって円の真の観念を有するようになるといっているようであり,それを円の真の観念を有する意志作用であるとみる限り,知性は円を真に認識するcognoscere意志作用を有することによって,つまりその意志作用が原因となって,知性は円の真の観念を有するようになるというようにみえるかもしれません。しかし実際にはここでいわれているのはそういうことではないのです。
 その考察の過程でこれもいっておいたように,知性がこの直線の運動を概念するということは,円の真の観念と結びつくことによって真verumであるといわれるのです。

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