スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

汝自身を助けよ&両義性

2014-07-03 19:14:55 | 哲学
 『偶像の黄昏』は,「箴言と矢」という断章から始まっています。その9番目の断章が次のもの。「汝自身を助けよ。そうすれば誰でも汝を助けてくれる。これこそ隣人愛の原理」。
                         
 この断章がキリスト教の隣人愛の教えを念頭においたものだということは明らかでしょう。新約聖書のマルコ福音書の12章31で,イエスは律法学者の,あらゆる掟のうち第一のものは何かという質問に,第二の掟として次のように答えています。「隣人を自分のように愛しなさい」。
 これがいわゆる隣人愛です。ただし,キリスト教的な隣人愛というのが,一般的な意味での人類愛と同義であるとは僕は必ずしも思っていません。この隣人を,キリスト教徒とのみ解釈する考え方も成立し得ると思うからです。でもこのことは今は考慮に入れないことにします。
 イエスは自分を愛するように他人を愛せといったのです。これに対していえばニーチェは,他人を愛するように自分を愛せとか,他人を愛する前にまずは自分を愛せといったことになります。僕はニーチェのことばのうちには「よく効く薬」に擬えられるものがあるといいましたが,この断章はそのひとつでした。
 ニーチェが何を根拠にこのようにいったのかは分かりません。断章には説明は与えられないからです。しかし少なくとも,単にキリスト教の教義に反するために,わざわざこのようにいったわけではないことは確かだと思います。他面からいえば,ニーチェはここで自身がいったことの内容に関しては,正しいと確信していたと思います。
 他人を愛するということが,簡単に可能なことであるとは僕は考えません。しかしもしもそれが可能になったとき,つまり自分が愛する人を発見できたときに,その人を愛するのと同じように自分を愛するということも,やはり難しいことなのだと僕は思います。
 イエスのいったことが間違いだとはいいません。しかしニーチェのいったことも,また一面の真理であることは間違いないと思うのです。

 間接無限様態の無限性の由来が,直接無限様態ではなく属性であるということだけを示そうとするならば,単にそれは属性を原因として生起するとか,それは原因である属性によって無限であり永遠であるといえば十分だといえます。しかしスピノザはそのようにはいわずに,直接無限様態という様態的変状様態化した属性によって無限であり永遠であるといういい方を選択しました。この選択にもちゃんとした理由があったと考えるべきでしょう。そしてそれはもちろん,間接無限様態が直接無限様態を原因として生起するということ,他面からいうなら,直接無限様態も間接無限様態も,必然の第一のタイプとして必然的に存在する様態ですが,直接無限様態が間接無限様態に対して,本性の上で「先立つ」様態であるという真理があったからだと考えられます。
 つまり,ひとつは間接無限様態の無限性の由来が属性であるということ,もうひとつは間接無限様態に対して直接無限様態が本性の上で「先立つ」様態であるということ,この両義性を踏まえて,直接無限様態という様態的変状に様態化した属性といういわれ方がされているのだと理解するのが,正確にスピノザの意図を理解することだと僕は思います。様態的変状に様態化したものというのは,様態であるとも読み取れるし,様態ではないとも読み取れると僕はいいました。そしてこのいい回しのうちには,それら両義的な解釈がどちらも含まれているといえるかもしれません。つまり様態的変状に様態化した属性といわれるなら,それは様態でもあるし属性でもあるのです。しかしそれが単に様態であるということを示したいのであれば,様態的変状という必要はありません。様態というだけで十分であるからです。ですから様態的変状という語句そのもののうちに意図されている何かがあるとするなら,それはそれが様態であるということよりも,属性であるということだといっていいと思います。
 直接無限様態を原因として間接無限様態が生起するということと,直接無限様態という様態的変状に様態化した属性から間接無限様態が生起するということは,純粋な形相的出来事としては同一です。その出来事を十全に認識するという観点からは,後者が重要だということです。

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