スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

研究&1024個

2021-09-10 19:04:47 | 将棋トピック
 三浦九段がコンピューターから指し手の援助を受けているか否かを当時の僕が判断するときに,三浦九段にとって不利な状況と思えることは,2点だけでした。ただ,これは僕からみた場合であって,当事者たち,つまり棋士たちの間では,少なくとも現在と比べたときには,三浦九段にとって不利と思える別の状況が確かに存在していたと僕は考えます。この点についても説明しておかないと,おそらく不公平になるでしょう。
 三浦九段は2013年4月20日に行われた,第2回電王戦の第五局に出場し,GPS将棋と対戦しました。この準備のために三浦九段にはGPS将棋が貸与され,その後も三浦九段はソフトを使用した研究を続けていました。しかし当時は,ソフトを使用して将棋の研究をするという棋士は少数でした。このために,ソフトを使って研究をすることで棋士の棋力がどれくらい向上するのかということはまったく分かっていませんでした。というか,そもそもソフトを用いた研究が,有益であるのかどうかさえ半信半疑といった状況であったのです。現在は,AIの棋力が人間全般の棋力を上回っているということが知られているだけでなく,AIを研究に導入することで,人間の棋力を向上させることができる,いい換えればAIを将棋の研究に導入することがきわめて有効であるということがはっきりしています。なので2021年の状況と,2016年の状況というのは大きく異なっていて,その分だけ三浦九段にとっては不利であったのです。
 三浦九段はこの当時,自分はソフトを用いて研究しているのだから,自身の指し手とソフトの推奨手の一致率が高くなっても不思議ではない,という主旨の発言をしていました。この発言が今されたとしたら,だれでもそれに納得ができるでしょう。ところが当時はそういう状況になかったために,この発言自体に信憑性があるというようにすら認識されなかったのです。三浦九段はこの時点では3年くらいはソフトを用いた研究をしていたのですから,本当は三浦九段はきわめて当然のことを言っていただけなのです。
 当時の状況からして,三浦九段のこの発言の信憑性が,棋士の間で共有されなかったのは仕方がなかったと僕は思います。一方で三浦九段はすでにこの時点で,将棋界の未来の現実について正しく発言していたのです。

 この問題を第二種の認識cognitio secundi generisで答えることは,そんなに難しいことではありません。高さが4個,横が8個,縦に32個の立方体が積まれることによってひとつの直方体が形成されているのであれば,立方体の数は4×8×32で,この計算をすれば1024という答えが出るので,1024個という解答を導き出すことができるからです。近藤がこれを直観的に1024個と答えることができるというとき,それはこのような計算をしなくても答えを出すことができるという意味です。
                                        
 第五部定理二八の意味は,第二種の認識が第三種の認識cognitio tertii generisの呼び水になる,あるいはなり得るということであって,それは逆にいえば,第三種の認識である設問に答えるためには,何らかの第二種の認識の蓄積が必要だということです。このとき近藤は,直観scientia intuitivaによって1024個という答えを出すために,自身のうちにストックされている知識がどういうものであるのかを説明しています。それによれば,4というのは2²であり,8は2³であり32は2⁵なので答えは2¹⁰ということになり,2¹⁰は1024であるということです。よって近藤は4×8×32という計算をしなくても,1024という答えを導き出すことができるのです。この点は注意しておいてください。近藤は計算するのが早いから1024という答えを直観的に導出できるのではなく,知性intellectusのうちに蓄積されている知識ないしは情報によって,1024という答えを直観的に出しているのです。
 ただし,この問題が数学のテストで出された場合,1024という答えをそのまま出すだけでは十分ではありません。数学のテストというのは,答えを直観的に導き出すことを主眼に据えているのではなく,それを理性ratioによる推論によって,つまり第二種の認識で答えることに主眼を置いているからです。同様にもしこれがなぜ1024になるのかということを他人に説明するためには,直観的に1024と分かるのだと答えても無意味です。それでは説明を求められているのに説明にはなっていないからです。なのでこのような場合には,4×8×32という式で1024を導くと答えますし,同様に説明することになるのです。
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