スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

棋王戦&有効な解答

2019-12-18 19:27:19 | 将棋
 16日に指された第45期棋王戦挑戦者決定戦変則二番勝負第一局。公式戦の対戦成績は勝者組の本田奎四段が1勝,敗者組の佐々木大地五段が1勝。これは奨励会三段時代に指した新人王戦の対局を含みます。
 振駒で本田四段の先手。相掛かりから佐々木五段の横歩取りのような展開に。先手は形を決めてから横歩を取ったので,通常より少し損だったかもしれません。僕にはどこがどうというのは分からなかったのですが,先手が戦機を逸したために指しにくくしてしまったようです。
                                        
 先手が☗7七桂と跳ねたので,後手が封じ込められないように8六の飛車を引き揚げた局面。
 先手にとって勝負に持ち込む最後のチャンスがここだったようで,☗8四歩と打ち☖同飛なら☗9五角と打ち,この角を取らせている間に飛車を成り込むのがよかったようです。ただこの手順は非常手段に思えますので,このような手でなければいけないのでは,すでに先手が指しにくかったとみていいでしょう。
 実戦は☗8三歩と打ち☖同飛に☗7五歩と突きました。これは放置すれば☗7四歩☖同銀☗4一角の狙い。後手はそれを防ぐために☖5二王と寄りました。
 一番の狙いを消された先手は☗5六角と打ちました。これは放置すると☗7四歩があるので後手は☖6五歩。先手は☗3六銀と眠っていた駒を使いにいきましたが☖4六歩が銀取りになる急所の一着。☗4五銀は仕方ありませんが☖同銀☗同角のときに☖3六銀と手厚く打つのが好手で大勢が決しました。
                                        
 第2図は☗5四角の一手。後手はすぐに取り返さず,☖4七歩成以下,決めるだけ決めてから角を取りその手で先手の投了となっています。
 敗者組の佐々木五段の勝利。第二局が27日に指されることとなりました。

 もう一度,スピノザが予想した反駁を確認しておきましょう。
 第一に,人間は神Deusについて確実でなければ何事についても確実であることはできません。第二に,人間は人間の本性natura humanaの創造者が人間を欺くか欺かないかを知らない限り,神について確実であることはできません。第三に,人間は人間の本性の創造者が人間を欺くかどうかを知らないうちは,何事についても確実であることはできません。
 このうち第一の点は,デカルトRené Descartesがそれを是認するかどうかは別として,スピノザがデカルトの哲学から読み取った事柄です。ですからスピノザはこの点については反論する余地がなく,それを認めるほかありません。次に,この第一の点が成立するということを認めなければならないのであれば,第二の点が成立する限り第三の点も成立するといわなければなりません。ですから,スピノザの反駁に対するターゲットは,第二の点に集中しなければなりません。つまり第二の点に対する有効な解答というのが,スピノザが目指すべきところになります。
 では第二の点に対する有効な解答としてどのようなものが考えられるのかといえば,ひとつは,人間の本性の創造者が人間を欺くことはないということを証明するか,そうでなければ人間の本性の創造者が人間を欺くかどうかを人間が知らないとしても,人間は神について確実であることができるということを証明するかのどちらかです。もちろん,たとえば人間の本性の創造者なるものは存在しないというような解答も,それ自体では有効であるといえますが,そもそも反論としてあえて人間の本性の創造者を神と異なるものとして規定しているのですから,このような解答はあり得ないでしょう。
 一方,人間の本性の創造者というのは,スピノザの哲学においては神です。ですから神が人間を欺くことはないと解答することは可能ですが,反駁の中であえて神と人間の本性の創造者を分けている点に注目すれば,このような解答もまたあり得ないでしょう。ですから,最も有効な解答方法は,人間は人間の本性の創造者が人間を欺くかを知らなくても,神について確実であることができるということを証明することなのです。
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