スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

岡田美術館杯女流名人戦&行いの融和性

2017-02-23 19:20:55 | 将棋
 昨日の第43期女流名人戦五番勝負第五局。
 主催である報知新聞の副社長による振駒上田初美女流三段の先手になり里見香奈女流名人のごきげん中飛車。①の変化で☗3六歩とは突かずに☗7八玉と寄り,先手の穴熊,後手の美濃囲いという戦型になりました。終盤の寄せ合いに入るまでが長く,寄せ合いに入ってからも大混戦が延々と続く手数の長い将棋に。寄せ合いに入ったところでは先手が有利だったと思われますが,後手玉を取り逃がす結末となってしまいました。
                                     
 8三で清算して後手玉をおびき出したところ。ここで☗8六銀と当たりになっていた銀を逃げつつ圧力をかけにいきました。対して☖8四香。
 玉頭戦のようになっているので,上部を厚くした方が有利になりますのでこの2手は当然の指し手だったと思います。それでいえば次は☗8五銀打とするのが有力でしたが☗7五銀と逃げました。ですがこのために☖6五龍とその銀に当てつつ歩を取られ,入玉されるおそれが生じました。
 先手は☗8四銀☖同王と取って取った香車を☗6九香と打ちました。ただこれは☖6七桂と打たれてあまり効果的ではなかったようです。むしろ☗8六銀とやはり手厚く打ち,☖7四王には☗8二角と脱出路を封鎖するのが優ったようです。
 ☗7八馬と逃げつつ桂馬を取りにいきましたが☖6六銀不成と使われました。同じように☗8六銀と打てば☖7九桂成とはできなかったようなので,この交換は明らかに先手が損をしたように思います。
 ここから☗8六角☖7五銀打☗9五角☖7四玉と進みました。これで後手玉は6四~5五へと逃げ出せることがほぼ確定。いきなり後手が勝ちの局面になってしまいました。
                                     
 ☗9五角のところでは☗7五同角と取る手もあったようですが,どうも☗7八馬と逃げた手が甘かったようで,それが敗着という結論になったようです。
 3勝2敗で里見女流名人が防衛第36期,37期,38期,39期,40期,41期,42期に続いての八連覇で通算8期目の女流名人です。

 リュカスJean Maximilien Lucasの伝記に対してコレルスJohannes Colerusの伝記の中には,スピノザの思想とキリスト教の間の融和性を記述した部分は皆無です。これはある意味では当然です。なぜならコレルス自身がスピノザの思想は無神論であるとみなしていて,それに対して激しい批判を加えているからです。もしかしたらこの点に関しては,スぺイクが何を言ったとしても,コレルスの認識は変ずることがなかったかもしれません。コレルスは批判のために数多くの反駁者を紹介していますが,その中にブレイエンベルフWillem van Blyenburgが含まれています。ちょうどブレイエンベルフがスピノザの考え方を否定したのと同じ理由がコレルスのうちにもあったと解するのが妥当であり,この点に関してはコレルスは譲らなかったであろうと想定されます。つまりブレイエンベルフがそうであったようにコレルスもまた,『神学・政治論Tractatus Theologico-Politicus』の冒頭にスピノザが注意しておいたような,それを読むのに相応しくない人物に該当していたのだろうと僕は思っています。
 ところが,リュカスの伝記の中にはみられなかった点,すなわちスピノザの行いがキリスト教と融和的であったという記述がコレルスの伝記には含まれています。実際にその部分だけを読めば,スピノザは本当に無信仰であったのだろうかと疑いたくなってしまうような内容が含まれているのです。『ある哲学者の人生Spinoza, A Life』では,コレルスの伝記が,スぺイクの家に間借りしていた時代のスピノザは,キリスト教の実践者となったという通念を生み出すことになったと書いていますが,確かにそのような通念を産出する要素がこの伝記の中には含まれているのです。
 なぜそのような記述がコレルスの伝記に挿入されたかというと,僕にはふたつの要素が考えられます。コレルスはスぺイクの証言を基にそのように記述しているわけですから,これは他面からいえば,なぜスぺイクはそのような証言をコレルスに対してしたのかという理由であることになります。
 ひとつは,おそらくスぺイクは,スピノザの哲学思想にはほとんど関心がなかったであろうということです。つまり思想面とキリスト教の融和性については,スぺイクは証言できなかったろうと思うのです。
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