スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

竜王戦&第三部定義二

2011-07-26 23:56:05 | 将棋
 第24期竜王戦本戦トーナメントは1組の4人が残り,今日は佐藤康光九段と深浦康市九段が対戦。対戦成績は佐藤九段が19勝,深浦九段が18勝。
 振駒で深浦九段の先手。佐藤九段の作戦は一手損角換り1-Ⅱ。相腰掛銀となり,先手が4筋に飛車を回り2六に角を打つ形。先手が4筋から仕掛けると後手も7筋から反撃して中盤の争い。夕食休憩後,数手のところでいきなり激しくなるかもしれないと注目しました。
                         
 ☗9五同歩は取ると思いました。いろいろな組み合わせがありそうですがすぐに☖4五銀右。ここで銀を取らずに何かするのではないかと考えていたのですが☗同銀。となれば☖同銀☗同飛は一直線。☖5四角と打つのだろうと思っていましたが☖6九銀でした。☗6八金右☖7八銀成は自然な進行で,☗同玉もここではこう取りたい感じがします。それから☖5四角(第2図)。
                         
 実戦の金銀交換を入れた方が先手玉は薄くなるので得とみての選択だったと思われます。☗5五馬☖4四歩☗5四馬までは僕にはこれ以外に考えられません。☖同金も僕が本線で考えていた手。☗4九飛はごく自然な逃げ場所だと思います。☖6四桂と打って攻めていく手を検討していましたが☖5五金の進出。善悪は別にこの手は佐藤九段らしい手だと思います。☗6七銀打とがっちり守る手と☗4四飛から反撃に転じる手のふたつを検討。実戦は前者で,こちらも深浦九段らしい手だと思います。☖6四桂☗6五銀といった手順を検討していましたが☖5四桂。ここは何か攻めてみたい感じ。☗2四歩が思い浮かぶのですが,歩切れの後手に歩を渡すのでどうかと思っていると☗7三角でした。これは考えていなかった手。催促の意味がありますから☖6六金は当然。☗同銀☖同桂は一本道で桂先の玉寄せにくしといいますから☗6七玉(第3図)もこう逃げるところでしょう。
                         
 上部を押さえたいところ。ひねって金銀を打つ手もあったかとは思いますが☖6五歩は最も自然という気がします。☗5五角成☖5四金というのを検討していたのですが,これは先手が困りそうです。しかし☗4七銀と受けたのは驚きました。不屈の闘志を感じた一手だと思います。あんまり急がなくてもよいように思いましたが☖7八銀。読み筋だったようですぐに☗5六玉と逃げました。対して☖8九銀不成。後手玉に迫っていない現況では取れません。ただどう指せばいいのか僕にはまったく分かりませんでした。実戦は☗3八銀。☗4六銀と出ると王手飛車を食らうので,代案として引いたのではないでしょうか。☖7八桂成☗5八金☖7七桂成(第4図)はすぐに先手玉に迫っているわけではないですが,この局面では自然な進行ではないかと思います。
                         
 ここで☗4四飛と出ました。これは指しておきたい手という印象。☖7六成桂と取ったのに☗2四歩も攻めとして指したい手。☖同歩は当然でしょう。☗4一飛成か☗2三歩のどちらかで,実戦は後者。☖同王かと思っていましたが△同金でした。☗6二歩で飛車の横利きを遮断。☖6六成桂と寄るかと思いましたが単に☖3三角。☗4一飛成はこの一手で☖3一金(第5図)もこう受けるところでしょう。
                         
 ☗同龍で寄ればいいのですが無理そうなので☗5二龍の王手。☖4二歩は当然と思え,次の☗4四歩はいい手だと思いました。成らせるわけにはいきませんから☖同角。手の流れから☗4三金かと思いましたが☗5五銀でした。ここで☖6六成桂。3か所ありますがまあ☗4七玉と逃げるでしょう。☖2六角は考えていなかった手で,どんな効果があるのか分かりませんでした。当然☗2七歩で,ここは後手が勝つのは大変になったと思いました。☖6八成桂くらいしか考えられませんでしたが☖9三飛☗6四角成としてから☖6八成桂。角を取るのは怖い感じもあるので☗同金。☖5九角成はこれしかありません。☗5八金打で捕獲。6八の方を取ると思っていましたが☖同馬でした。☗同金(第6図)は自然。
                         
 どう指すか分かりませんでしたが☖4一銀と受けました。☗5一龍とこちらに逃げるのは自然と思います。飛車筋を通して☖5四歩ですが,この手は善悪が微妙そうだと感じました。☗同銀と取るのも自然な指し方だと思います。そこで☖5ニ桂と馬取りに打ちました。☗5五馬とは逃げづらいので☗8二馬はこう指すと思いました。☖5六歩☗同歩は検討通りですが☖3三飛は考えていませんでした。☗4五桂はまた自然に思える攻めでここは先手がはっきりとよくなっていると思い,検討終了。ところが☖4四桂☗3三桂成☖同桂(第7図)となってみると後手玉はすぐには捕まらないのでまだ難しいところがありそうだと思い直して検討再開。
                         
 ☗5五馬は☖5六成桂があるだけに驚いたのですが,☖5七歩でした。これには☗同金と思いきや☗6八金。ここで☖6六成桂。☗同馬☖同桂☗同玉まではさすがに検討手順。☖8八角を考えていましたが☖5八歩成☗同金としてから☖2八角と反対側に打ちました。☗3七角☖3九角成☗4八金☖4五桂打☗同銀☖同桂までは検討手順。☗同玉を考えていましたが☗5五角(第8図)と王手に出ました。
                         
 ☖3三銀は攻めを考えるなら打ちたくないでしょうが安全ではあります。☗4九金とは引けませんから☗4九歩と受けました。☖5七金も取れないので☗4五玉。どうでもいいことですが,たとえば第7図の時点で一時的に桂馬は4枚とも後手が持っていたのですが,ここではそのすべてが先手に。ここからも大激戦であることが窺えると思います。☖4八金は当然。☗5四玉と入玉を狙いにいきました。☖3八金もここでは有力な取り方と思います。対して☗4五桂の詰めろ。☖4四金で受けました。何もせずに☗6三玉と入りました。☖5五金は当然。☗同龍と取ったので☖7一歩と打って捕まえにいきました。☗3三桂成☖同金☗4五桂(第9図)は検討通り。
                         
 単に受けていては後手が勝てそうもありません。☖7ニ銀☗7四玉☖6三角☗8四玉☖9ニ桂☗9三玉☖7五馬☗8二玉☖8一歩☗9一玉までは検討通りで,そこで☖4五角と外しました。この局面では☗同龍とできないので☗9四桂の受け。☖6七角成に☗7三歩と打ちました。☖7七馬は自然な手で☗5一飛とつなぎました。☖5五馬☗同飛成も自然で☖7三銀と払いましたが,ここで再び☗4五桂(第10図)。今度こそ大勢は決したと思いました。
                         
 この後,先手が寄せられないように堅実を期したので手数こそ伸びましたが,最終的には大差で先手が勝っています。200手を超える死闘を制した深浦九段は,久保利明二冠との挑戦者決定戦進出を賭けて丸山忠久九段と対戦します。
 実際には27日午前0時20分過ぎの更新ですが,便宜上,26日付にしてあります。

 前回の第一部定義四の考察の最後のところで約束しましたように,今回からはスピノザの哲学における能動actioと受動passioということ,とりわけ人間精神の能動と受動ということを,具体的にどのように理解するべきなのかということに関して,考察していくことにします。この問題は,前回の考察の中で派生してきたものですから,前回の続きであるとも考えることができますし,しかし一方で,スピノザによる属性attributumの定義Definitioというものをどのように理解するのかということと,人間精神mens humanaの能動と受動ということをどのように理解するのかということは,完全に別の問題でしょうから,前回とはまったく関係がない考察であると考えることもできると思います。僕がこの考察を前回のテーマである第一部定義四の中では行わずに,こうして稿を改めたのは,後者の考え方に依拠したからですが,一方,この問題の発生というのは明らかに前回の考察と深く関係していますので,今回の考察の中でも,前回の考察,とりわけ第一部定義四に関するマシュレの分析に回帰していくことは,当然ながら生じてくるだろうと思います。
 とはいえ,こうしてこの問題を新しい形で探求していくわけですから,今回の考察は今回の考察で,前回のテーマとは関係なく,それ単独で成立させなければなりません。もちろん僕自身,そうなるように努力する所存です。しかしそのためにはまず,テーマの設定というのが重要になると思います。そこでここでは,第三部定義二というのを,第一部定義四とは関係のないテーマとして設定することとします。
 「我々自らがその妥当な原因となっているようなある事が我々の内あるいは我々の外に起こる時,言いかえれば(前定義により)我々の本性のみによって明瞭判然と理解されうるようなある事が我々の本性から我々の内あるいは我々の外に起こる時,私は我々が働きをなす[能動]と言う。これに反して,我々が単にその部分的原因にすぎないようなある事が我々の内に起こりあるいは我々の本性から起こる時,私は我々が働きを受ける[受動]と言う」。
 これは『エチカ』の岩波文庫版の中での約束事ですが,()の中は,ラテン語版Opera Posthumaではなく,オランダ語の遺稿集De Nagelate Schriftenから補われたことを示し,[]の中に関しては,訳者である畠中尚志による補足です。
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