
SBI大学院大学講師 刈谷裕子著(カリコせんせと呼んでいます)
発行:長崎出版
本書は時系列に並べられていますので、ほんとに読みやすいです。そして、学校で行われた生徒や先生方の「公開イベント」などの状況も述べられており、心も和みますが、「難しいことをやさしく話し」「やさしいことを深く掘り下げ」「深いことを愉快に話し」「愉快なことを真面目に」書き表しています。
ブランディングとかマーケティングというのは、ビジネス社会の用語と考えているのが一般的だと思います。しかし、本書では魔女が(カリコせんせのことですが、本にも魔女と書かれています)、生徒、先生、教科、学校も全てブランディングし、全てがマーケティングし、今現在も発展形として進化し続けさせている。魔法使いの話をしているのではありません。実録の話をしているのです。
おそらく、カリコせんせにお会いしたことのない方には理解できないかもしれないが、人を変える技術に関しては、心理学者よりも高いテクニックを持っていると思います。
滝野川女子学園の山口治子校長も、【彼女は次々と新しい「仕掛け」を“魔法のノート”から繰り出し、学園に魔法をかけ続けてくれています。】と本書の冒頭で述べているように、次々と人間の意識を変えていったのです。
例えば、第3章の「パーソナル・ブランディングの手法」では、【ブランドが幸福になるための法則】として、いくつかの思考法が述べられていて、自分自身もブランドであることを教え、そのためにはどうしたらいいのかを解説しています。
これだけ話しても、一般的なビジネスで使われるブランディングやマーケティングと違うことがわかるはずで、まずは自分自身のブランディングすることを勧め、価値を見つけ、課題を見つけ、夢を実現させる方法を解いています。
ドキッとさせられたのは、「怖さを知らないことの怖さ」という文言を読んだときでした。我々は確かに知らないことのほうが多いのですが、怖さを知らないというのは最も警戒しなければならない。
具体的な手法も掲げて説明していますが、理科教員の堀口幸子先生のODEM(パーソナル・ブランディング表)には驚いた。そこにはインサイト調査での「ポジティブ部分」も「ネガティブ部分」も全て書かれているからです。つまり、自分の長所や欠点が、文字になって公に晒されるわけです。
また、事業では販売目的でいろいろな活動をするわけですが、カリコせんせはこう述べています。
【ある程度は、テクニカルな部分で「知ってもらう」「好きになってもらう」ことはできるだろう。しかし、根底の部分で、その企業なり商品なりに、好きになってもらえる素地・要素がなければ、すぐにメッキははがれてしまう。】と。則ち、滝野川女子学園のブランディングは、インサイトから変革されたので、メッキがはがれることはないわけです。
経営者なら、多少なりともこのような変革を目指したいと考えているはずです。軸をしっかりさせ、「学校や会社にとって何が大事か」を考えさせられる場面です。
ブランディングはヒトやモノをブランドするだけでなく、授業の科目までもブランディングすることが、第6章の〈主要5科目「国・数・理・社・英」のブランディング〉で述べられていますが、これは各人の仕事も細分化してブランディングできることに気付かされます。