旺文社の学習雑誌「時代」シリーズは、ルネ・シマールと山口百恵を1975年のイメージ・キャラクターに設定し、日本でルネ旋風が巻き起こった1974年から、ルネ・シマールの特集記事をたくさん掲載していました。
その中でも「中一時代」の1974年11月号は、グラビア記事や新曲「小さな生命」の歌詞など、ルネ・ファンには嬉しい記事が満載されており、今回の記事タイトルになっているミステリー小説も掲載されていました。そして、「フォト・ミステリー」と銘打たれたその小説は、ルネと長谷直子の写真が、物語の場面に合わせて構成されたものでした。
当ブログで紹介するに当たり、全編を載せるには少し長いこと、掲載された写真と同じコスチュームのピンナップが存在し、当ブログで未掲載なこともあるため、前中後編に分けてアップしていきます。早く結末が読みたいという方も、後編までお待ちください。
ルネ・シマール 長谷直子が特別出演
フォト・ミステリー
ほんとうに死ぬかもしれない……空いっぱいに星がちらばり、かすかに吹きぬける潮風が、ルネの心をここちよくとおりすぎた……
潮騒の中の少女
作/せき らん 写真/力丸恒美 構成/石垣好晴
「ちょっと、とめてください。」
夕闇せまった第三埠頭に、車は静かに停止した。
この港町、K市でのコンサートを最後に、まもなく帰国の途につく予定になっているルネ・シマールだったが、吹きあげてくる潮風に車窓をあけ、遠く故国を思いやるように、ぼんやりと夕暮れの風景にみいっていた。
その埠頭の先端には少女がたたずんでいる。黒々とたゆとう海面に視線をおとし、ブロンズの像のように身じろぎもせず、ただスカートのすそだけが風にゆられている。少女の右肩には一羽の鳥がとまっていた。その鳥のするどいくちばしと、羽毛のかがやきまでもが、ルネにとって、異国での旅情をせつなくかきたてる風景のひとつだったかもしれない。
ルネは、ホッとちいさなため息をつき、車をホテルにむかわせた。
「おはよう、ルネ。」
翌朝、K市のホテルでめざめたルネは、さっそく直美の訪問をうけた。
「ルネ、みてこれ! あっ、ごめんなさい。ルネは日本の新聞は読めないのね。いい……」
直美は持ってきた朝刊をひろげながら、いつものようになれたフランス語で読んできかせた。
今未明、K港の第三埠頭近くに打ち上げられた
男の水死体が発見された。K警察署の調べで、
大垣重太郎(48歳)K市狩猟会会長、死因は
溺死と判明したが、遺体の両眼がえぐられており、
怨恨による他殺の線が強いとして捜査を開始し
た。なお死亡推定時刻は昨夜七~十時のあい
だとみられている……
「第三埠頭って、きのうわたしたちが行ったところなのよ。こわいわ……」
「ふうん、狩猟会の会長さん……」
直美にはこたえず、べつのことをつぶやきながら、ルネはベッドからおりたった。
K市での公演は三日間、きょうはその第二日めである。ホテルから自動車で会場へむかいながら、ルネは沿道にはられたポスターに目をやっていた。
”カナダからやってきたアイドル ルネ・シマール”
”魅惑のスター ルネ”
道歩く人々は、”魅惑のスター ルネ”が、今自分たちの横を通りすぎようとしていることに気づかない。暖かい秋の日ざしの中で、車のスピードメーターはあがっていった。
「あぶない!」
突然キキィというブレーキ音がひびき、車が急停止した。
「チェッ、やっちまったよ……」
佐伯という運転手は、いまいましそうにつぶやいた。路上には、一匹の犬がピクリともせずに横たわっている。
「おまえがわるいんだぞ。急にとび出してくるんだから」
ブツブツいいながら、すでに息絶えた犬を道路のはしにひきずっていった。
「とりあえずあそこにおいて、あとでかたずけにきますよ」
車にもどった佐伯は、そういって遅れた時間をとりもどそうとでもするように、乱暴なスタートをきった。
「でも人間じゃなくてよかったですよ。犬じゃあせいぜい飼い主にどなられるくらいですみますからね」
そんな佐伯の態度とは別に、かなしそうなルネの姿をバックミラーはうつしだしていた。
ルネのステージは午後七時におわった。着がえをすませてマネージャーたちの笑いにつつまれながら楽屋を出ようとしていた、ちょうどそのとき、電話がけたたましく鳴った。
「……はい。……えっ、そんな……はい。……はい、わかりました。すぐいきます。…………………
ルネ、佐伯さんが殺されたんですって、いま警察の方からの電話で、この劇場の裏手の雑草の中で発見されたんですって、すぐいきましょう」
運転手の佐伯が殺された!!
空き地の周辺には、すでに現場保存のため縄がはられ、やじ馬にかこまれた空き地の中央には、死体検死の係官たちが、もくもくと立ち動いている。
そのやじ馬たちにまじって、ルネと直美はぼうぜんと立ちすくんでいた。
ついさきほどまであんなに元気だった佐伯運転手が。今は冷たいむくろと化している。しかも全身に無数の傷をおい、血だるまになって倒れているのだ。
ルネはこの日、自分の目の前で、ふたつの生命が消えていくのを目撃したのだ。
「ひどいわ……。なぜあんなことを!」
直美の悲鳴ともとれることばが耳に入ったかどうか、ルネはさきほどのかなしげな表情とかわって、かるい驚きにもにたまなざしを、やじ馬たちのなかの一点にそそいでいた。 (中編に続く)
最新情報
ルネ・シマール映像については、現在YouTubeやカナダのファン・サイトでご覧いただく事が出来ます。最新の映像はファン・サイトの方が次々にアップしてくださっていますが、もっと早くご覧になりたいという方、また、カナダのTV番組に関心のある方は、是非こちらをご利用ください。同じチャンネルで、他の国の番組も検索する事が出来ますよ♪
※「イカす!ブロードバンド天国 世界のネットTVガイド」
http://ikaten.squidtv.net/worldtv/americas/canada.html
必ずルネが出演している番組やニュースに当たるとは限りませんが、CBCやRadio-Canadaを初め、カナダの仏語圏ケベックのTV局がご覧いただけますよ!
その中でも「中一時代」の1974年11月号は、グラビア記事や新曲「小さな生命」の歌詞など、ルネ・ファンには嬉しい記事が満載されており、今回の記事タイトルになっているミステリー小説も掲載されていました。そして、「フォト・ミステリー」と銘打たれたその小説は、ルネと長谷直子の写真が、物語の場面に合わせて構成されたものでした。
当ブログで紹介するに当たり、全編を載せるには少し長いこと、掲載された写真と同じコスチュームのピンナップが存在し、当ブログで未掲載なこともあるため、前中後編に分けてアップしていきます。早く結末が読みたいという方も、後編までお待ちください。
ルネ・シマール 長谷直子が特別出演
フォト・ミステリー
ほんとうに死ぬかもしれない……空いっぱいに星がちらばり、かすかに吹きぬける潮風が、ルネの心をここちよくとおりすぎた……
潮騒の中の少女
作/せき らん 写真/力丸恒美 構成/石垣好晴
「ちょっと、とめてください。」
夕闇せまった第三埠頭に、車は静かに停止した。
この港町、K市でのコンサートを最後に、まもなく帰国の途につく予定になっているルネ・シマールだったが、吹きあげてくる潮風に車窓をあけ、遠く故国を思いやるように、ぼんやりと夕暮れの風景にみいっていた。
その埠頭の先端には少女がたたずんでいる。黒々とたゆとう海面に視線をおとし、ブロンズの像のように身じろぎもせず、ただスカートのすそだけが風にゆられている。少女の右肩には一羽の鳥がとまっていた。その鳥のするどいくちばしと、羽毛のかがやきまでもが、ルネにとって、異国での旅情をせつなくかきたてる風景のひとつだったかもしれない。
ルネは、ホッとちいさなため息をつき、車をホテルにむかわせた。
「おはよう、ルネ。」
翌朝、K市のホテルでめざめたルネは、さっそく直美の訪問をうけた。
「ルネ、みてこれ! あっ、ごめんなさい。ルネは日本の新聞は読めないのね。いい……」
直美は持ってきた朝刊をひろげながら、いつものようになれたフランス語で読んできかせた。
今未明、K港の第三埠頭近くに打ち上げられた
男の水死体が発見された。K警察署の調べで、
大垣重太郎(48歳)K市狩猟会会長、死因は
溺死と判明したが、遺体の両眼がえぐられており、
怨恨による他殺の線が強いとして捜査を開始し
た。なお死亡推定時刻は昨夜七~十時のあい
だとみられている……
「第三埠頭って、きのうわたしたちが行ったところなのよ。こわいわ……」
「ふうん、狩猟会の会長さん……」
直美にはこたえず、べつのことをつぶやきながら、ルネはベッドからおりたった。
K市での公演は三日間、きょうはその第二日めである。ホテルから自動車で会場へむかいながら、ルネは沿道にはられたポスターに目をやっていた。
”カナダからやってきたアイドル ルネ・シマール”
”魅惑のスター ルネ”
道歩く人々は、”魅惑のスター ルネ”が、今自分たちの横を通りすぎようとしていることに気づかない。暖かい秋の日ざしの中で、車のスピードメーターはあがっていった。
「あぶない!」
突然キキィというブレーキ音がひびき、車が急停止した。
「チェッ、やっちまったよ……」
佐伯という運転手は、いまいましそうにつぶやいた。路上には、一匹の犬がピクリともせずに横たわっている。
「おまえがわるいんだぞ。急にとび出してくるんだから」
ブツブツいいながら、すでに息絶えた犬を道路のはしにひきずっていった。
「とりあえずあそこにおいて、あとでかたずけにきますよ」
車にもどった佐伯は、そういって遅れた時間をとりもどそうとでもするように、乱暴なスタートをきった。
「でも人間じゃなくてよかったですよ。犬じゃあせいぜい飼い主にどなられるくらいですみますからね」
そんな佐伯の態度とは別に、かなしそうなルネの姿をバックミラーはうつしだしていた。
ルネのステージは午後七時におわった。着がえをすませてマネージャーたちの笑いにつつまれながら楽屋を出ようとしていた、ちょうどそのとき、電話がけたたましく鳴った。
「……はい。……えっ、そんな……はい。……はい、わかりました。すぐいきます。…………………
ルネ、佐伯さんが殺されたんですって、いま警察の方からの電話で、この劇場の裏手の雑草の中で発見されたんですって、すぐいきましょう」
運転手の佐伯が殺された!!
空き地の周辺には、すでに現場保存のため縄がはられ、やじ馬にかこまれた空き地の中央には、死体検死の係官たちが、もくもくと立ち動いている。
そのやじ馬たちにまじって、ルネと直美はぼうぜんと立ちすくんでいた。
ついさきほどまであんなに元気だった佐伯運転手が。今は冷たいむくろと化している。しかも全身に無数の傷をおい、血だるまになって倒れているのだ。
ルネはこの日、自分の目の前で、ふたつの生命が消えていくのを目撃したのだ。
「ひどいわ……。なぜあんなことを!」
直美の悲鳴ともとれることばが耳に入ったかどうか、ルネはさきほどのかなしげな表情とかわって、かるい驚きにもにたまなざしを、やじ馬たちのなかの一点にそそいでいた。 (中編に続く)
最新情報
ルネ・シマール映像については、現在YouTubeやカナダのファン・サイトでご覧いただく事が出来ます。最新の映像はファン・サイトの方が次々にアップしてくださっていますが、もっと早くご覧になりたいという方、また、カナダのTV番組に関心のある方は、是非こちらをご利用ください。同じチャンネルで、他の国の番組も検索する事が出来ますよ♪
※「イカす!ブロードバンド天国 世界のネットTVガイド」
http://ikaten.squidtv.net/worldtv/americas/canada.html
必ずルネが出演している番組やニュースに当たるとは限りませんが、CBCやRadio-Canadaを初め、カナダの仏語圏ケベックのTV局がご覧いただけますよ!
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます