関東ローカルではプレビュー番組も放送されているという、井岡一翔vs田中恒成戦ですが、関西では毎度お馴染み「せやねん」でも取り上げられていましたので、ご紹介。
試合前から、こういうテーマでいく、という感じの発言を意図して行う井岡一翔、今回は「モノが違う」「レベルが違う」という趣旨の発言で押しているようです。
しかし、スピードや機動力といった部分を主に、様々な能力を比較すれば「モノ」としてより上等なボクサーは、明らかに田中恒成の方です。
井岡一翔は「上」にいる田中恒成を、いかにして止め、その道行きを妨げ、力を削ぐか、という闘いを強いられるでしょう。
そして、当然本人もそのことはわかっているはずです。
田中恒成との間に厳然としてある「モノ」の差を、いかにして埋めるか。
そのために歴戦の経験を生かし、技術と覚悟をもって闘う。
その覚悟をそのまま言葉にしないのが、井岡一翔らしい、という感じですが、これは実のところ、相当に...という風に見えます。
対する田中恒成は、その膨大な才能を、自らが心底から認めてやれない葛藤を抱えて、ここまで闘ってきた人なのではないか、という風に見えます。
それを自他共に認めうるものにするため、必要な結果が、井岡一翔戦勝利であり、そこから繋がる「その先」なのでしょう。
少なくとも、その才能は、国内のスター対決がボクサーとしての頂点ではない、と言えるレベルのものです。
辰吉丈一郎攻略がキャリアの頂点だった薬師寺保栄とは、もう一段違うレベルで見なければならないボクサー。
それが田中恒成だと思っています。
試合予想は、専門誌などが大がかりな特集を組んでいまして、楽しく読ませてもらいました。
海外のブックメーカーでは田中恒成がやや優勢なのだそうです。
当日、双方のコンディションに左右されるのは当然で、コロナの影響によるブランク、井岡がサラス・トレーナーの指導を受けられなかったこと、田中が転級後の調整試合を行えず、初戦が世界戦になることなど、色々と不確定な要素があり、あれこれ語り出すと終わらない感じですが...。
私のざっくり予想(笑)は、田中恒成の勝利です。
サッカーの世界では、決定力は七難隠す、という表現をする批評家がいますが、ボクシングでも同様に言うとしたら、パンチ力は...と同等か、或いはそれ以上に、スピードは...という言い方も出来そうです。
しかし田中恒成は、過去の試合の中で、速いけど軽率、というときついですが、その速さを闘いの中において、勝利への最善に結び付けられていない、という印象を残してもいます。
その辺の揺らぎというか、不安定さが、井岡一翔という大物との試合で、いよいよ焦点が定まった、と言える闘いぶりに変わり、それを貫けるなら、田中の勝利はますます堅いと思います。
もちろん、井岡一翔がその技巧で...的確な左、ボディブローで肉迫し、田中恒成に苦闘を強いる展開も充分あり得るでしょうし、その末に勝利するのかもしれません。
こればかりは、当日のお楽しみ、ですね。
ただ、両者万全なら、やはり田中恒成に分があるのでは、と見ます。
今日は検診が行われたとのことですが、両者無事に、大晦日のリングに立って、その技量力量を存分に発揮してもらいたいですね。
あと二日。色々あった今年ですが、忘れ難い一戦で締め括ってくれることでしょう。楽しみです。
下の階級では井岡の硬いジャブ、大きなフレームとボディ打ちは明らかに突き抜けた武器でしたが、現在はそこまででなく、やはりコンビネーション、駆け引きと言った部分が重要で、どこかで恒成の攻撃に耐えないといけない。
上手く誤魔化し恒成をトラブルに落とし込めば逃げ切れると思いますが…ご指摘の通り、自分のうちにある素晴らしい才能にようやく目覚め始めた恒成が、その力を全開で解放する、そんな予感がします。圧倒する可能性すら否定出来ないかも知れません。今から楽しみでなりません。
もし、田中が序盤からスピード全開で飛ばし、井岡が追い上げる展開になれば、中盤か終盤に田中が苦しむことも、当然のこととしてあるでしょう。しかし、もし田中が(彼なりに)抑え気味に立ち、トップスピードを試合全般のどこに配置して駆使するか、という勘所を押さえて闘うようなことになれば、終わってみれば田中の大勝になっている可能性も否定出来ません。言えば井岡のやること、出来ることは決まっていて、田中の側は未知数がまだ残っている。良し悪し共に、ではあるのですが、そういう組み合わせでもありますね。
ざっくり田中有利と書いてみたものの、スーパーフライに区切っていえば、井岡の対戦相手の質は極めて高いですね。それまでの相手選びで、寸法厳選の、言ってみれば温い試合が続いた時期があったことの悪影響というのも、あまり見えません。
ただ、井岡の射程範囲、能力から逸脱した速さを田中が持っていることも確かで、その「枠」に捉えるための作業には、膨大な労苦が求められることでしょう。さて、どうなりますか...いよいよ明日ですね。