粟生隆寛が引退を表明したとのことです。
拙ブログの、数が限定されるカテゴリをひとつ割いているように、当時、日本の若手ボクサーの中でもっとも「大成」を期待された選手でした。
しかし...という言い方は、フェザー、ジュニアライトでWBCタイトルを制したボクサーに対して、適当ではないかもしれません。
実際、優れた才能の持ち主であったことは、誰もが認めるところだと思います。
そして、それ故にこちらが感じてしまった様々な不足が、彼を苦しめたというのもまた、事実かもしれません。
粟生に対して思うところは、2年前、結果としてラストファイトとなったガマリエル・ディアスとの再戦前に、記事にて書いています。
そして、実際の試合は、残念ながら新たな未来を切り拓く、というものではなかったように見えました。
その後、試合が組まれなかった今日まで、苦しい日々を過ごしてきたのでしょう。
試合ごとに波が...というより、信じがたい「落差」を感じたことも再々でしたが、良いときの試合ぶりは、やはり並大抵の才能ではないな、と感じたものでした。
それもこれも含めて、忘れ難いボクサーでした。お疲れさまでした、と労いたい気持ちです。
が、ガマリエルディアスに負けた試合などは一体、、と思いますし、近い時期に内山さんや三浦さんがいた事を考えると、ここ一番弱い感じに見えました。それでもあのセンスは私達を楽しませてくれました。お疲れ様ですね。
まあ、元々というか、この辺りのクラスから層が厚くなってきますかね。粟生の場合、なんといってもタイベルト戦の星が大きいかなと。けっこうな快挙だと思います。ターサック戦なども見事でした。三浦隆司は、粟生が勝ち続けていたら、後のキャリアがどうなっていたかわからないですね。
しかし、あれこれありますが、こういうレベルの才能が出てきて、それを見られたことは、基本的に、ファンとしては嬉しいことでした。
逆に粟生にすれば、リナレスの存在はもちろんプラスになった部分も多いでしょうが、なかなか重いよねとも勝手に想像してしまうわけです。名門帝拳ならではのぜいたくな話なんですけど。
帝拳のように有力選手が多く集うジムでは、階級が近いと、それぞれに思うところがあるものでしょうね。それが表だって語られることはほぼ皆無ですが...その昔、新人王トーナメントで笹崎ジムの原田政彦と斉藤清作が勝ち上がり、斉藤が辞退した話は、美談仕立てで語られていて、それはけっして偽りではなかったらしいですが...時代も違い、また「段階」も違う粟生とリナレス、或いは三浦隆司などとの間には、語りにくい思いがあったのでしょうね。
オリンピック銀メダリスト、タイベルトにダウンを奪っての戴冠は見事でした。「高校六冠」という、国内だけの権威から、本物のトップアマを下した快挙でしょう。
最後まで、長谷川の弟分から抜け出せなかったようにも見えますが、長谷川が果たせなかったラスベガスのリングに彼は上がりました。相手があのベルトランでなければ、もっと・・・。
現役時代は、なんとなく熱狂的には好きになれませんでしたが、最後の長いブランクの間、何回も帝拳ジムの選手の練習風景に一緒に頑張る写真が映りこんでいました。傍で見ている以上に、ボクシングが好きだったんだろうなと思います。本当にお疲れさまでした。
色々と心身共に難しいというか...普通のボクサーとはまた違うところでの懊悩があったのでしょうね。タイベルト戦は会場で、良い席で見ていたもので、本当に感心させられました。ベルトラン戦はもう、単に相手の「仕業」がどう、というのに加えて、指導体制や状況含め、色々とナニでしたね。
日本国内でアマチュアのトップといってもあくまでジュニア年代、国内限定の話で、それが世界の舞台、あの階級で、いくつかの試合では非常に優れた才能を見せたというのは、もっと高く評されていいことでしょうね。それ故に晩年は色々と苦しんだことでしょうが。