帝拳ジムの若手、新人ボクサーが米国のオールスターボクシングというプロモーションと契約を結んだ、という話です。
大手とはいかないものの、その次のレベルくらいにはある会社なんでしょうかね。詳しくは知らないんですが、名前はなんとなく知っている会社です。
「複数試合契約」を結んだのは、フェザー級のサウスポー中野幹士と、先日デビュー戦を飾った藤田健児、そしてデビュー戦を待つ村田昴の三名で、遠からず「米国デビュー」を果たすことになるのでしょう。
コロナ渦で試合が思うように組めない、というのは、要するに国内ではなかなか受けてくれる相手がおらず、海外から噛ませさんも呼べない、という事情あってか、と思いました。
しかし、考えたらキャリアの浅い内に海外で練習して試合して、という話は、葛西裕一のような前例があります。
まだ日本ランキングも上位ですらなかった葛西は、元高校王者で、帝拳からデビューしましたが、率直に言って線が細く、そこそこのところまではいくのだろうが、その先どうこうという「大物」ではないなあ、としか見えない選手でした。
しかし、米国で6回戦くらいの試合をみっつ闘って、その合間にミゲール・ディアス氏だったか、何しろ海外のトレーナーの指導を受けて帰国。
A級賞金トーナメントを勝ち上がり、日本タイトルを獲得する過程で、見るからに「身体が出来」て、フォームが安定し、必然的にパンチの威力も増し、圧倒的な強さを見せるようになりました。
米国での試合は、WOWOWで全部放送されましたが、最後の試合なんかは暑い中でスタミナも切れかけ、えらいことになってましたけど、それもこれも含め、若い選手を浅いキャリアの段階で海外に出した結果、目に見えて伸びた「好例」としての葛西裕一の姿は、記憶に鮮明です。
もちろん、何の後ろ盾もなく、遠慮容赦なくきつい相手を当てられる状況では、普通に考えてやっていけるものではないでしょう。
それを逞しく勝ち抜ければ凄いですが、残念ながら非現実的な話でもあります。
しかし、きちんと「後ろ盾」あった上での渡米、そこで練習のみならず試合も、という話を実現しうるあたりは、良い意味で「大手ジム」たる帝拳の面目躍如、というべきでしょうね。
今回契約に至った三人の中から、葛西裕一の好例を再現する選手が現れるか。
或いは、それを上回る成果を得る者が出るか。長い目で、楽しみに見守りたいですね。
葛西さんと言うとバスケスに1ラウンドで負けた試合が印象強いですが、西岡さまを後年世界の、それもトップの中のトップに導いた功績は大ですね。
現実問題として、日本で色々難しいから、というのはあるとしても、これを良いきっかけにして、誰か一人でも伸びてくれれば、というところもあるんでしょうね。葛西裕一は、世界戦では厳しいところもありましたし、国内、東洋でも、もうひとつ強い相手(横田広明とか、崔在元とか)と闘っていればなあ、と思ったりもしますが、デビュー当初の印象からすると、飛躍的に伸びた時期があり、こんなに強くなるとは、と驚かされたボクサーでもあります。トレーナーとしての評価も、仰るとおり西岡利晃を「ヘルプ」した、という面では高く見るべきなんでしょうね。