さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

山中慎介13度目発表 左右の「強連打」者、ルイス・ネリーを迎える

2017-06-08 01:28:53 | 関西ボクシング



ということで、山中慎介13度目の防衛戦は、かねてから噂のルイス・ネリーに決定。
お盆の京都で世界戦とは、なんとも意表を突くスケジュールで、
観戦しに行くか否かは正直、迷うところではあります。
同じ「府立」でも、大阪にしてくれたら簡単なのに...と思いますが。


さて、ネリーについては三浦勝夫氏による、この記事が今のところ一番詳しいと思われます。
直近のマルティネス戦前に、計量パスに四苦八苦していたこと、
相手のランキングが直前に急上昇したことなどは、事実として知っておくべきことですね。

しかし、試合ぶりをいくつか見ると、山中にとり手強い部分を確実に持つ相手である、
それもまた、間違いないなと思わざるを得ません。
動画を探すと直近4試合がすぐ見つかります。ざっと見た感想などを。



まず2016年7月30日、ダビ・サンチェス戦。サウスポーがネリー、右がサンチェス。
WBC米大陸バンタム級タイトルマッチ。





初回、サンチェスの右フック、ガードの外を巻く一発を喰う。
しかし左強打をねじ込んで反撃。左ショート、次にアッパー気味のパンチで追撃。

2回、打ち合いで左ボディアッパーを決め、攻勢。
3回、連打から左でサンチェスをロープ際へよろめかせる。ダウンではなし。
4回、L字ガードで誘い左アッパー。対角線のコンビを重ねて攻勢、ボディ連打で倒す。
この回終了後、サンチェスが棄権。

元WBA暫定王者相手に、ネリーがその攻撃力を存分に見せた一戦。



2016年10月22日、リッチー・メプラナム戦。
黒トランクス、白ラインがネリー。青地に赤ラインがメプラナム。
サウスポー同士の対戦。この辺から本格的に山中挑戦を見据えていた?





初回、柔軟なメプラナムが、頭の位置を変える防御で外し、攻め込む。
しかしネリーが左一発合わせる。メプラナム、威圧され、前に出られなくなる。
ネリーが重い右ボディを連発して左へ繋げ、攻勢。

2回早々ネリーが出て連打。左アッパーで転がるようにダウン。
立ったがネリー左一発、二度目のダウンでストップ。

体格で勝る相手とはいえ、サウスポー相手にも違和感なく攻め、圧勝。



2016年12月17日、レイモンド・タブゴン戦。
金髪の右構え、タブゴンはこの前の試合で、ファン・エストラーダ相手に判定まで粘った選手。





初回、タブゴンがジャブを突く。ネリー少し見て立ったかと思ったら、
スリーパンチから左右の重いパンチをあれこれ打ちまくる。強引も強引。
この攻めで威圧しておいて両手を下げ、さらに出る。毎度のパターン。
しかし連打の最中、タブゴンの右を合わされ、不覚のダウン。

2回、正対しての攻防で、タブゴンのジャブ、右も入るが、ネリー強引に攻める。
左右ボディ、ワンツー、上にフック連打、ロープに突き飛ばしてボディ攻撃。
3回、タブゴン勇敢に打ち返すが、4回ネリーが左のレバーパンチから右フックを上に。
連打で詰めて、ストップ。

果敢に打ち返すタブゴンにやや手こずった印象。
正対しての攻防における防御勘、または意識の低さという、ネリーの弱点が見えた一戦。



そしてこちらが、三浦勝夫氏の記事にもあった、直近の試合。
今年3月11日、ヘスス・マルティネス戦。サウスポー同士の一戦。
白地に水色のサイドラインがマルティネス。映像は初回30秒くらいから。





初回、ネリーが右リードを多く出す。当然、後続の連打もスムース。確かに4分くらい闘っている。
2回、低い構えの肩越しに、マルティネスの左ヒット。ネリー少し間を置くが、連打で反撃。

3回、ネリーじりじり出て、ボディから左を上に返す。じっくり見てまた同じパンチを決める。
4回、L字ガードからジャブでセットアップ、左ヒットして連打で追撃。
ゴングと同時に左、マルティネス跪く。ゴングに救われた形だが、この回で棄権。

まだまだ荒いが、ネリーなりに攻防が整ってきたとも言える一戦ではあるか。


================================================


ということで、まずは防御から。
ガードの構えは普通の高さだが、あまり繊細な感覚での防御はない。
普通に構えているときは、足はあまり動かさない。
この時のポジショニングは避ける意識より、打てる位置取りの方に意識が傾いている印象。

試合が進むと、両手を下げて前に出たり、足を使う場面が頻繁にある。
低い構えから上下左右に、自在に強いパンチを連打する。
いわば攻撃の威力で威圧することを、防御の代用にしている面がある。
L字ガードから右ジャブを突いたり、左アッパーをカウンターする構えも見せる。

しかし連打の際、防御に穴が開いている。攻めて相手の手を封じているときは良いが
相手に打てる余地が残っているとき、単発ながら好打され(サンチェス戦)、
ダウンを奪われたりする(タブゴン戦)。


攻撃には、総じて威力があり、厚みがある。
ストレート、フック、アッパー、どの種類のパンチも、割と遠くから打てる印象。

攻める展開になると、連打が切れ目なく続く。「ワンツー止まり」を嫌う風。
大抵三発、或いは四発目まで返す。しかもパンチが左右共に重い。
身体の回転、腕の力、遠心力をフルに生かす打ち方で、当て際が強く、威力がある。的中率もけっこう高い。

この連打の組み合わせは、遠くから左右フックのボディを「散らして」おいて、
ストレートないしはアッパーを上、なおかつインサイドに狙い、続いて左右フックを上、アウトサイドから、
というパターンが基本のように見える。

だが、その連打の繋ぎにおいて、どこまで意識してかは不明なれど、右ボディ→左フック上とか、
左ボディ(レバーパンチの場合もあり)→右フック上など、相手にとって防御しにくい、
いわゆる「対角線のコンビネーション」が多数含まれる。
そうかと思えば左アッパー顔面へカウンター→左ボディストレートとか、
こんなんやられたら相手は辛いなぁ、と思うようなパターンの連打も。


ということで、全体的に見ると、パンチの威力を前提に試合を組み立て、回すタイプ、というところです。
強打で相手を威圧出来る展開においては、無類の強さを発揮しています。

反面、展開によっては雑な、理屈に合わないボクシングをしていて、
力づくでその無理を抑え込めない場合は、意外に脆さを、或いはその兆候を見せてもいます。


で、山中慎介がどう対するべきか、ですが...。
相手の構えの違いによって、展開を想像してみました。

まず立ち上がり、普通に構えている時、右ジャブや左ストレートで叩いておきたいですね。
ネリーのパンチは、フックもストレートの距離で飛んでくるような印象もあるので、
距離には十分、気をつけて欲しいですが、このギャップが山中を苦しめることもありそうです。

L字ガードのときは、ジャブによるセットアップを心がけているか、左アッパー狙いか、です。
右肩のショルダーブロックは、上手いのかどうか、なんとも言いにくいですが、
山中の左が当たりそうな気はします。相手の狙いを外して打ちたいところ。

両手を下げたときは、ネリーが好打の手応えを得たときがほとんどです。
つまり山中が劣勢、ピンチの時ということになります。
ただ、山中がリードする展開で、強引に攻めてくる場合は、打ち時、狙い時でもありましょう。


はっきり言えば、この防御で山中の左を防げるとは思えない、それが結論だったりします。
しかし、最近の試合で、再三ダウンしたり、好打を浴びたりしている山中の姿を考えると、
やはり一度や二度は、何らかの形で、ネリーに好機を与えてしまうのでは、と危惧もします。

右ジャブや足捌きを徹底するより、左ストレートの威力で相手を止める、という風なところは、
物凄く大ざっぱに「大別」すれば、山中もネリーと同様...というのは躊躇しますが、
似ていなくもない...ような気もしなくない...と思ったりします。

ことに「最近の」という条件付きで、山中がネリーと同じ「土俵」に上がる、というような場面が
長く続くようだと、ネリーの強打連打に巻き込まれ...という想像が、現実になるかも知れません。


長きに渡る防衛ロードの果てに、具志堅用高の記録と並ぶ一戦において、
山中慎介の心技体が、高い集中を保ち、研ぎ澄まされたものであれば、充分攻略しえる相手だと思います。

ルイス・エスタバの記録を抜く、12度防衛がかかった一戦において、具志堅がマルチン・バルガスに
快勝した試合は、新記録達成への高い意欲がリングで爆発したかのような、見事な勝利でした。
山中慎介が、次の試合で、同じような姿を見せ、快勝することを、まずは何をおいても期待します。


しかし、この挑戦者は、ひとつ間違った方へ展開が転んだら、全てを力づくで破壊してしまう、
理屈では計れない、爆発的な力を持った相手でもあります。
アンセルモ・モレノのような「格」には遠い、と思う反面、キャリアの上昇期にある選手、
という面も含めて、ある部分ではモレノ以上の脅威ではないか、とも。

当日、会場にて、或いはTVの前にて、我々は極めて高い緊張を強いられることになるのでしょう。
単に、試合が楽しみ、待ち遠しい、というだけでない心境に、今はあります。
もちろん、そのような緊張を、鮮やかに打ち砕いて勝利する、山中慎介の姿を見たいものですが...。


コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする