さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

不安より期待が勝る6戦目 井上尚弥、アドリアン・エルナンデスに挑戦

2014-02-19 11:53:54 | 井上尚弥


普通なら、たった6戦目でアドリアン・エルナンデスに挑戦なんて、と書くところです。
このマッチメイクが成立した理由として、王者サイドが井上の戦績を見て、その力を軽視したから、
という側面があると思います。日程的にも詰まっていて、それでも来日するわけですし。

私は、こういう少ない試合数での世界挑戦には、基本的には反対の立場を取ってきました。
まあ、昔と比べて王者の技量が低い例が多いですから、相手によっては、という気もしますが、
長い目で見て、仮に王座奪取に成功しても、その後が大変という例は、いくらでもありますし。


しかし井上尚弥については、そういう過去の例とは違っています。
昨年12月に両国で初めて直に試合ぶりを見て、あまりに圧倒的な速さ、鋭さ、強さに驚かされました。

これは、ローマン・ゴンサレスやドニー・ニエテスにはまだ及ばないものの、将来的には攻略もありうる。
アドリアン・エルナンデスや井岡一翔なら、今挑戦しても勝てるかもしれない、と思うほどでした。

常に相手の身体の芯を鋭く狙うパンチの軌道、ことに防御の隙を叩き、一撃で試合の流れを
我が物に出来る左フックは、世界王者相手にも充分通じるレベルだと感じましたし、それ以外にも穴が見えない。
好機を得ても急きも慌てもせず、バランスが良く、安定していて、その上で、突出した攻撃を重ねていく。
見ていてとにかく驚かされてばかり。これで5戦目、いったいどうなっとるの、という感じでした。

過去にこういう早期挑戦をした例の中でもかなり若く、しかしアマチュアで約80戦のキャリアがある。
しかも高校レベルだけでなく全日本選手権を制し、国際大会にも多数出場。
五輪予選でもあと一勝で出場権を獲れるところまで行ったという裏付けがあるからでしょうか、
例えば辰吉丈一郎と比べても、才能の突出度はさておき、全体的な完成度は高く見えました。

とにかく、理屈がどうであれ、やはりあの試合ぶりには、驚愕させられました。
過去に何度も書いたとおり、U-15大会に代表される、全国的なキッズボクシングの普及と、
その育成年代のピラミッドの裾野は、思った以上に広がりを見せている。
その中から勝ち上がってきた、新時代の旗頭たる者の技量とは、かくも圧倒的なものなのか、と。


今回の試合、普通なら、過去に打たれた試合がほとんどなく、耐久力など未知数な部分が...とかなんとか、
不安な気持ちが先に立って不思議の無いカードのはずです。

まして、最近不調気味とはいえ、アドリアン・エルナンデスの強打と体力、勝負強さは
まだ若く、プロキャリア5戦の選手にとっては、当然ながら脅威です。
井上の側にも、攻撃のきっかけになる手が、実は左フックの好打のみに限定されているとか、
上記した耐久力や体力、体格面での不安など、マイナス要素があることも事実です。


しかし、井上尚弥ならば、という気持ちが、私の心中では勝っています。
彼の勝利が、彼自身の天才の証明のみならず、日本のボクシング界が取り組んだ
育成年代への指導策が結実したことによる、エポックメイキングな戴冠劇となり、
新たな時代が始まることを、予感では無く実感させてくれるものになるのでは、と。

正直言って、過去にこの手の試合について、これほど前向きな気持ちになったことはありません。
もちろん、選手の才能に惹かれたファンの甘い期待に過ぎない、という結果になるかもしれませんが、
それでも、そういう予防線を張らずに、今、正直な自分の期待を書いておきます。


ということで前記事でも書いたとおり、TVで普通に見られる試合ではありますが、
この日は、敢えて会場に足を運び、この目でこの一戦を見届けることにしました。
井上尚弥の勝利と、その先に見える、新時代の豊穣な光景を期待します。楽しみです(^^)

コメント (5)
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