試合が始まってすぐに、お、今日は動いて立ったな、というのが見えました。
過去二戦ではほとんどなかった左右へのステップがあり、ジャブが目に見えて増え、
身体の移動を伴った、膂力のあるワンツーも数回。
ここ数年の、強引なプレッシングが中心のスタイルとは全然違いました。
高校時代の村田って、こんな感じやなかったかなという印象でもありましたね。
普通のボクシングに寄せている、というか。
カルロス・ナシメントは、ちょっと身体が緩く見えましたが、
それでも村田が単調に、強引に考えなく押し込んで、そのまま押し切れるような感じでもなく、
序盤に見せたショートの打ち合いでは、なかなか良い狙いも見えました。
しかし村田のブロックで、アウトサイドのパンチはほぼ防がれていて、
インサイドにはカウンターが来るのであまり打てないという展開の中、
右クロスやボディ打ちを食い出して劣勢、3回に右アッパーから連打でダウン、
4回にストップという流れに抗う力は見せられませんでした。
もし、村田が二戦目のような隙を見せていたら、あれこれ巧さを見せて
村田を苦しめるだけのものがあったように思いますが、村田はそういう余地を与えずに
密度の濃いボクシングでナシメントを撥ね付けた、そういう印象でした。
全体的には好印象ですし、前回とは全然違った。集中し、引き締めてきたなー、という感じでした。
3回、事実上試合を決めた右アッパーは見事でした。タイミングも角度も、
相手の読みを外した組み立ても、そして高いガードからあのパンチがスムースに出たことも。
あと、右ストレートも、上下に散らす狙いがあって、ぎこちない感じもありましたが、良。
気になるのは左フックでしょうか。右からの返しのバランス復元がうまく出来てない。
左の膝が少し硬いか、身体を左側へ出さず(出せず?)に、軸を正面に置いたまま、
相手の右回りを追うので、どうしても力がかからない感じです。
ダウンを奪ったときのように、相手を打ち込んで崩して、正面か右側へ打つときは良いのですが...。
しかし全体としては、改めて好印象でした。ジャブを出そうという心がけがあれば、
それだけであれだけ次の攻め手があるし、パワーも生きる。
三戦目でこのキャリアの相手を圧倒し、4回にストップ出来る力量は、やはり流石金メダリストです。
中国の観客は「何だ、ゾウ・シミンよりずっと凄いじゃないか」と驚いたんじゃないでしょうか。
何にせよ、次の試合がまた楽しみになりました。
試合ごとに良かったり悪かったりは、これからも色々あるでしょうが、
一つの試合で課題が見えた後、目に見えて違いを感じさせる試合を出来ることは、
村田諒太の優れた素質の証明ではないか、と思えました。良い三戦目でした。
さて、四戦目は未定でしょうが、シンガポール登場という話が、試合後のインタビューで出ていましたね。
5月7日にマカオで決まったというドネアvsベチェカ戦興行にも、ひょっとしたら?ですね。
もっともこの試合は米国のプライムタイムに合わせるでしょうから、フジが日曜昼間に放送枠を
取るのかどうか、ちょっとわかりませんけれど。
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この後のカードでは、下田昭文がメルビン・ソンソナに3回KO負けを喫したとのことです。
これは残念無念。
比国の天才少年ボクサーと言われたソンソナ、挫折を経ても、その強さは失われていなかったのでしょう。
どんな様子だったのか、かなうなら試合映像を見たいものです。
フジテレビの放送については、香川さんがほとんどマネージャー状態だったのが笑えました(^^)
まあ、ボクシングを対世間に認知してもらうための、広報のような仕事をしておられるわけで、
それは大変有り難いと思いますが、もう少しだけ冷静にやっていただけるといいなぁ、と...。
試合後の別室インタビューは、ああいうことをフジテレビ的感性でやると、
とんでもなく寒いことになるんやないか(汗)と心配して見ていましたが、まあ破綻無く、無事でした。
冬季五輪も真っ青、スベり倒し全開やないかな、というのは杞憂だったようです。
と、試合後に流れているファイティング原田評伝ドラマを、飛び飛びで眺めながら書いていますが、
笹崎会長を演じる鶴さん、過去に原田を演じ、たこ八郎こと斉藤清作を演じ、今回は会長。
笹崎ジム完全制覇ですね。これであと、海津文雄でも演じれば隙無しですが(^^)