さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

嘆くにはあたらない

2011-07-10 18:29:39 | 関東ボクシング
かつてラスベガスと並び、アメリカのビッグファイトの舞台として知られた
アトランティックシティで行われた下田昭文の初防衛戦は、無念の結果となりました。

序盤から、指名挑戦者リコ・ラモスの右リードを時に食いつつも、頭を振って外し、
接近戦で右ガードを上げて左を防ぎ、右ジャブから左、ボディ打ちで攻め込んで
ラモスを守勢に追い込んで、採点でもリードしているように見えました。

ただ、序盤から、思いの外ふところの深いラモスとの距離感が掴めないせいか、
或いは初の海外、米国遠征ということでの気負いなのか、ややもすると大振りのミスがあり、
前にのめったところに小さい右リードを合わされる場面もありました。

全体的に下田が攻め、ラモスはそれを見て対応、という形で試合は進み、
中盤にさしかかる頃にはラモスがやや下田を持て余しかけていると見えていたので、
7回の終局はあまりに唐突に映りました。

あまりにも唐突に動きが落ち、止まり、ガードも低い状態の下田に、
ラモスが右で探って、左フック。まともに決まって下田ダウン、立ち上がれず。
ちょっと見たことが無いくらい唐突で、衝撃的なフィニッシュでした。


新王者リコ・ラモスは、なるほど要所に豊富なアマチュアのキャリアを感じさせ、
冷静に下田を見た上での対応も的確でしたが、同時に下田の力を持て余し、
思うに任せない展開に、消極的に見えるところもあり、下田なら十分攻め落とせたかと思います。
それだけに惜しい、と改めて思わされた試合でした。

ボクシング界の国内市場の現状から、致し方ないというのが実情だろうとはいえ、
若き王者下田が、ボクシング・シーンの国際市場にデビューする一戦だっただけに、
なおさら今度だけは勝って欲しかったです。
本当に、最後の唐突な失速が惜しまれます。精神的な部分も大きかったのかもしれませんが。


しかし、米国東海岸のリングで、日本人ボクサーが強豪と真っ向から闘うという、
従来の日本のボクシングの常識からすれば「冒険」であるこういう試合に臨むことに、
今回の結果をもって、不要な恐れをを持つべきではないと思います。

こういう試合に挑めば、時に西岡利晃のように快哉を叫べる勝者がいて、
時に今日の下田のように、悲嘆に暮れる敗者を見ることになります。
そして、そういう勝敗を積み重ねることこそが、日本のボクシングが
世界のスタンダードの中に生き、どうも今や日本国内では得られそうにない、
ボクサーにとっての真の名誉と栄光を掴むために、避けては通れない道なのです。


今日、下田昭文は敗れました。敗北はさまざまに敗者を責め、苦しめるでしょう。
しかし彼の喫した敗北は、選ばれし者のみが喫することの出来る、嘆くにはあたらない敗北です。
彼が再び起ち、今日闘ったような試合のリングで、彼の姿を見られる日を待ちたいと思います。


コメント (5)
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