角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

それぞれのふるさと。

2008年08月01日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズLグループ25cm土踏まず付き〔4500円〕
ベージュ基調と青基調の「湯」プリントに、合わせは紺です。それぞれ残りが少なくなったので、ベースをふたつにしてみました。これはこれで違和感のない配色と思います。

昨晩三重県四日市市にお住まいのおばさまから、ご注文のお電話をいただきました。お声や話口調をお聞きすると、おばあちゃんと呼ばれる世代でしょう。
ちょうど二年前の夏に私と出逢い、展示パネルに飾られてあった二、三足の中からお買い上げだったそうです。

『好きな色で送ってくれるって言われたんだけどねぇ、なにもそこまででなくてイイから選んできたのよぉ』。おばあちゃんは二年前の夏を、昨日のことのように教えてくださいました。お話はその後も続きます。

『十三年前に亡くなった主人の故郷が田沢湖でねぇ、孫たちにおじいちゃんのふるさとを見せたくて連れて行ったの。主人は角館高校出身だったから、角館も見せに行って、そこであなたの草履と逢ったのよぉ。最初は痛いと思ったんだけど、足に馴染んだらほんとに気持ちイイのっ。なんだか主人のふるさとを感じてねぇ…』。

日々角館草履を編み続けて想うのは、旅から帰り日常の生活に戻ったあとでも「足元に角館がある」。これは私にとってとても大きな願いです。そしておかげさまで、そんなふうに感じてくださるご愛用者が増えている実感も持っています。
でもこちらのおばあちゃんは「旅の想い出」とは少し違う、「ご主人のふるさと」を私の草履に感じてくださったんですね。
おばあちゃんのお話はまだ終わりません。

『私も新しい草履が欲しいんだけど、もうひとつ私の実家にいる兄に履かせたいの。兄は足の血行が悪くて、夏でも靴下が離せないくらい足が冷たいの。それとかなり浮腫んでるから、鼻緒を緩めに作ってくださる?』。

血行不良による足のむくみに効果があるのは、7月19日のブログで取り上げたばかりです。
おばあちゃんに、二年前はなかった「土踏まず付き草履」をお教えしました。するとおばあちゃん、『あぁ~、今はそんな草履が出来てるのぉ。兄にそれを履かせてあげたい…』。

聞けばご実家は新潟県だそうです。ご主人のふるさとである秋田県仙北市、ご自身のふるさとである新潟県、それぞれのふるさとで角館草履が愛されることを願いますね。
心してお作りし、近日中に発送いたします。

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