角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

浪花節だよ人生は。

2008年08月14日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ22cm土踏まず付き〔4000円〕
エンジ基調の和柄プリントをベースに、合わせは茶色基調の小花プリントです。同系色合わせのこちら、和のお洒落感が存分に出ましたね。綺麗な草履と思います。
そしてベースの平生地がこちらになります。



今年は雨のお盆になりました。今朝降り始めた雨はときおり土砂降りの様相で、こんな天気が週末まで続くようです。カラカラに乾いていたところへの雨、ある意味恵みの雨とも言えますが、気になるのは今晩から連続する夏祭りなんですね。
三年前までこうしたイベントへ玩具で出店していた私は、今日の昼にはドンパン祭りのテント設営があり、夜は田沢湖芸術村の夏祭りでした。

草履職人となって玩具出店を取りやめた今、立場としたらただのお客さんです。天気が悪ければ行くも行かないも自由、でもどうしても頭をよぎるのはかつてのスタッフ側の目線なんですね。『他人のことなんかオレには関係ねぇ』とは、なかなか思えないわけです。

例年のことながら、展示パネルの在庫が数えるほどになりました。お持ち帰りできない場合はオーダーとなり、毎日三足ほどをご注文の草履に向けています。
今日、定番配色①のご注文草履を編み終え、「ご売約品」の札を下げて展示しておりました。そこへひとりのおばさまがお越しになり、『あら~、その配色がイイわねぇ。んっ、売約品なの!?また作ればイイじゃない、あたしにそれ譲ってっ』。

こうした会話は年に何度かあるんですが、やはりそれは出来ない相談でしょう。『待ってくれてる草履ですから、スイませんねぇ』とお応えすると、だいたいの方は順番をお待ちくださるか、在庫の中から選び直してくださいます。
こんなとき、たとえば『誰にも言わないでくださいよぉ』かなんか言って、売約品の草履をお譲りしたとしたら、そのお客様はお喜びになるでしょうね。でもやっぱり私には出来ないんですよ。

二週間ほども前でしょうか、数人のおばさまが実演席の前を通り過ぎました。その中のおひとりに見覚えがあって、少し考えて思い出しました。双子の娘たちが小学校に新入学した当時の教頭先生だったんです。
こちらの教頭先生とは一年間だけのお付き合いでしたが、今でも忘れられない言葉があります。

入学式からずいぶん日が経ち、いろんなPTA活動に参加していました。やがて冬になると、教頭先生から一通の「ご案内」が私宛に届いたんです。詳しい中身までは憶えていませんが、なんとかと言う「PTA研修会」の案内でした。
文面を熟読し、教頭先生が私に期待感を持って案内をくださったことは分りました。多少の無理をすれば、日程的にも参加出来ないことはなかったんです。熟慮の結果私が出した答えは「不参加」、教頭先生にはこんな内容の文書で回答しました。

『ご期待に沿うことが出来ず申し訳ありません。私はついこの間小学校PTAに加えていただいたばかりの身、そんな一年坊主が諸先輩を差し置いて参加するのは、どうしても気が引けます。決して参加したくなくての結論ではありません。どうかご理解ください』。

その後三月の年度末慰労会の場で、たまたま教頭先生と近くの席に座りました。ここでまたあらためて「不参加」を口頭でお詫びしたものです。すると教頭先生は朗らかに笑いながら、『浪花節のようなお父さんですねっ』。
後にも先にも私を“浪花節”と評したのは、こちらの先生おひとりでしょうか。

いまでもときどき自身の融通の利かなさを感じるとき、このときの言葉を思い出しています。

コメント (2)
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