角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

手間が「心」。

2008年08月24日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ22cm土踏まず付き〔4000円〕
鮮やかなひまわりプリントをベースに、合わせは紫のプリントです。真夏の象徴ひまわりの時期とは少しズレましたが、明るくお洒落な草履と思います。
「今日の草履」はゆっくりおしゃべりもしないまま、おばさまがお買い上げくださいました。
平生地はこちらになります。



やはり今日のお客様は花火帰りが多かったです。花火の美しさと共に口にされるのは、『いやぁ、寒いのなんの…』。花火終了まで降ったり止んだりが続いた昨晩、『みんな寒いだろうなぁ』と思いながら晩酌をしておりました。

そんな中でちょっと嬉しい出来事です。昨日午後の早い時間、ちょっとの休憩に外へ出ると、レストランでお食事を終えたおばさまグループが歓談しておりました。まず間違いなく花火見物ですから、ちょっとお声を掛けさせていただきました。それはみなさんの服装がいかにも「夏」だったからなんです。

『夜の河川敷は風が冷たいし、今晩はきっと雨が落ちますから雨合羽だけは必ず買ったほうがイイですよ。大曲に近づけば近づくほど売れ切れてますから、角館で用意しちゃったほうが無難ですねぇ』。
おばさまたちはやはり「寒さ対策」を考えてなかったようで、『そうですかっ、分りましたぁ』。

そのおばさまグループのおひとりが、今朝私のところへお顔を見せてくださいました。『雨合羽のことを教えてもらって、ほんとに命拾いしたようなもんですぅ。あんなに寒いとは思ってなくて、ほんとにありがとうございましたっ』。
お礼を言うためわざわざ立ち寄ってくれたんですね。少しの手間とお節介が、どうやら心に届いたようです。

かつて旧中仙町のドンパン祭りに出店していた当時、いろいろお世話になっていた男性がお客様を連れてお越しです。東京からお見えのお客様に、私の草履をご紹介くださったんですね。ご夫婦それぞれお気に入りをオーダーくださいました。
こちらの男性に言われたのは草履を編み上げるまでの手間ひま、『途中まで誰がに編んでもらうっていうワケにも行がねべしなぁ…』。

ずいぶん前に、角館で商いをされている大先輩にも同じようなことを言われたんですが、仮に誰かが途中まで編んでくれて、仕上げだけを私が編んで「はいっ、完成」というのは、どうしたって出来る相談じゃないですね。実演をご覧のみなさまは当然私が最初から最後までひとりで編み上げると思ってますし、もちろんそうでなければいけないでしょう。
「手間」はそのまま「心」に伝わると信じてますからね。

昨日一通のお手紙を頂戴しました。差出人は埼玉県さいたま市の女性で、二年ほど前に私の草履をお買い上げくださり、そろそろ買い換えたいとのこと。それでホームページを観たら、自分で作れるキットを見つけ、ぜひ挑戦したいといった文面でした。
在庫がありますから明日にでも発送するつもりですが、ホームページを観ることの出来る方が手書きのお手紙でご注文をくださる、こうした手間ひまが実は心に届くもんです。

ずいぶんしばらくぶりの草履職人102人目は、手間ひまを惜しまない「職人気質」の女性と感じ入りました。


コメント
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