平成14年11月5日 (火) 訪れる寺無し
距離:27K ふるさと館 ~ 高橋旅館 (3)
大きな柿の木です 母屋の屋根をはるかに越えておりました
奇麗な曳き込み水で鎌を洗っている人が居ました。「飲ませていただいても
よろしいですか?」私は話しかけました。水はクリスタルのように透明でキラ
キラ光っていました。彼が言うには「役所の人がこの少し先で遍路小屋を作
ると言って調べに来ていた。ここには水があるしね。狭いけれど泊まれるよう
にするらしい」高知県は遍路の事を大事にしてくれているようです。アンケー
トもそうでしたしね。それで私は言いました。「トイレを作ってもらってくださ
い、トイレが少なくて困っています。千人記念大師堂にもトイレはありません
でした。向かいの商店で借りたのですが、その応対はあまり感じが良くありま
せんでした。お礼のつもりで一品買ったんですけれど…。
大瀬小学校の前は通りましたが、大江健三郎さんの生家を見つける事は出
来ませんでした。残念!!
宿がもう少しと言う川の土手に小林さんご夫妻の姿が見えました。私達はそ
の姿に向かって歩いていきました。
今夜の宿(高橋旅館)は時代劇に出てくる旅籠の様な作りでした。黒光りして
ギシギシ軋む廊下、その廊下には太い竹竿が洗濯物を干す為に、天井から
吊り下げられていました。
部屋に入りますと「洗濯物を部屋に干さないでください、見つけると、1万円
いただきます」と張り紙がありました。古い建物を保護する為でしょうか。
食事は皆さんと一緒に階下の部屋でした。昨日と同じ3組でした。50歳前後
の姉妹は関西の人で2回目。1回目は飛行機で来て、乗り物で廻ったそうで
すが、物足りなくて、今回は歩き遍路に挑戦したそうです。今回は45番岩上
寺までで、道後温泉で疲れを取ってから帰られるそうです。
小林さんは千葉県舟橋の方。ご主人が「和夫さん」昭和13年生まれ、奥様が
「いさをさん」昭和16年生まれ。ご主人は背が高くて、実直そうな方です。始は
とっつき難そうでしたが、お話ししているとそうでもありませんでした。優しさは
男の沽券に関わると、優しさを包み隠しておられる感じでした。主導権は勿論
ご主人だそうです。
奥様は優しい笑顔の持ち主です。でも芯は中々しっかりしておられるとお見受
けしました。ホームヘルパーの資格を取って、ボランティアで老人のお世話を
しておられるそうです。俳句を全く独学で始められたそうで、遍路中、窪川の駅
で「正岡子規生誕100年」の投句用紙を見つけ、旅の恥は掻き捨てと応募され
たところが見事入選されました。この事は家族以外には話しておられないそうで、
毎年、旅行を共にしている古くからの仲よし4人組にもお話ししていないで、私
に話してくださったのが人に話す初めての事だそうです。何でも初めてと言われ
る事は嬉しい事です。又、後からいただいたお手紙によれば「美味しいお茶の
伊藤園」とか「奥会津全国俳句大会」などにも投稿されて佳作入選されたと言う
事です。何と良い趣味を見つけられたのでしょう。
又娘さんに習ってパソコンをしますので「メル友」になってくださいと言われまし
た。暫くすると「アドレスを作ってもらいました。メールをいただければ、私にと
って記念すべき初メールです」とお知らせがあり、私は直ぐに初メールをお送
りしました。目出度くメル友の誕生です。
☆ … … … … ☆
小林いさをさんの句
星が降る 冬の室戸の 遍路道
秋遍路 常より優しい 夫あり
来し方と 行く末の間を 秋遍路
目を閉じて 地蔵眺むる 里の秋
時重ね 心重ねて 花遍路
私はいさをさんの句が好きです。遍路の歌なので自分の感情を詠っていただい
ているようで良く解るのです。特に「来し方と 行く末の間を秋遍路」が好きです。
歩くと言う事は「無」なんです。ただひたすら次のお寺を目指しているのです。そ
のぽっかり明いた空間に時折「今までの事」「これからの事」がス~ット入り込ん
できて、その事を一生懸命考えている自分の気づくのです。
私はいさをさんがパソコンを使えるようになられたら、句集を作られるようにお勧
めしています。還暦までにはまだまだ時間のあるいさをさん「還暦記念句集」等
如何でしょう。お待ちしています。
句集は残念ながら、まだのようですが、「遍路記」を一冊の本にされました。私のこの記録を
読んで(私の手作りの冊子をお送りして読んでいただいておりました)一念発起され、立派な
記念本を作られて私にもお送り頂きました。膨大なページ数で、日にちも経っているのに良く
覚えておられたと関心してしまいました。
高橋旅館 (7泊目)
遍路中こんな日の出を何度拝んだ事でしょう…
夜明け前の冷気が一度に緩み始める感じです
「在った!!」この道でいいのかと不安になった時
この印を目にした喜びを
歩き遍路者の皆さん何度と無く味わっていると思います
距離:27K ふるさと館 ~ 高橋旅館 (3)
大きな柿の木です 母屋の屋根をはるかに越えておりました
奇麗な曳き込み水で鎌を洗っている人が居ました。「飲ませていただいても
よろしいですか?」私は話しかけました。水はクリスタルのように透明でキラ
キラ光っていました。彼が言うには「役所の人がこの少し先で遍路小屋を作
ると言って調べに来ていた。ここには水があるしね。狭いけれど泊まれるよう
にするらしい」高知県は遍路の事を大事にしてくれているようです。アンケー
トもそうでしたしね。それで私は言いました。「トイレを作ってもらってくださ
い、トイレが少なくて困っています。千人記念大師堂にもトイレはありません
でした。向かいの商店で借りたのですが、その応対はあまり感じが良くありま
せんでした。お礼のつもりで一品買ったんですけれど…。
大瀬小学校の前は通りましたが、大江健三郎さんの生家を見つける事は出
来ませんでした。残念!!
宿がもう少しと言う川の土手に小林さんご夫妻の姿が見えました。私達はそ
の姿に向かって歩いていきました。
今夜の宿(高橋旅館)は時代劇に出てくる旅籠の様な作りでした。黒光りして
ギシギシ軋む廊下、その廊下には太い竹竿が洗濯物を干す為に、天井から
吊り下げられていました。
部屋に入りますと「洗濯物を部屋に干さないでください、見つけると、1万円
いただきます」と張り紙がありました。古い建物を保護する為でしょうか。
食事は皆さんと一緒に階下の部屋でした。昨日と同じ3組でした。50歳前後
の姉妹は関西の人で2回目。1回目は飛行機で来て、乗り物で廻ったそうで
すが、物足りなくて、今回は歩き遍路に挑戦したそうです。今回は45番岩上
寺までで、道後温泉で疲れを取ってから帰られるそうです。
小林さんは千葉県舟橋の方。ご主人が「和夫さん」昭和13年生まれ、奥様が
「いさをさん」昭和16年生まれ。ご主人は背が高くて、実直そうな方です。始は
とっつき難そうでしたが、お話ししているとそうでもありませんでした。優しさは
男の沽券に関わると、優しさを包み隠しておられる感じでした。主導権は勿論
ご主人だそうです。
奥様は優しい笑顔の持ち主です。でも芯は中々しっかりしておられるとお見受
けしました。ホームヘルパーの資格を取って、ボランティアで老人のお世話を
しておられるそうです。俳句を全く独学で始められたそうで、遍路中、窪川の駅
で「正岡子規生誕100年」の投句用紙を見つけ、旅の恥は掻き捨てと応募され
たところが見事入選されました。この事は家族以外には話しておられないそうで、
毎年、旅行を共にしている古くからの仲よし4人組にもお話ししていないで、私
に話してくださったのが人に話す初めての事だそうです。何でも初めてと言われ
る事は嬉しい事です。又、後からいただいたお手紙によれば「美味しいお茶の
伊藤園」とか「奥会津全国俳句大会」などにも投稿されて佳作入選されたと言う
事です。何と良い趣味を見つけられたのでしょう。
又娘さんに習ってパソコンをしますので「メル友」になってくださいと言われまし
た。暫くすると「アドレスを作ってもらいました。メールをいただければ、私にと
って記念すべき初メールです」とお知らせがあり、私は直ぐに初メールをお送
りしました。目出度くメル友の誕生です。
☆ … … … … ☆
小林いさをさんの句
星が降る 冬の室戸の 遍路道
秋遍路 常より優しい 夫あり
来し方と 行く末の間を 秋遍路
目を閉じて 地蔵眺むる 里の秋
時重ね 心重ねて 花遍路
私はいさをさんの句が好きです。遍路の歌なので自分の感情を詠っていただい
ているようで良く解るのです。特に「来し方と 行く末の間を秋遍路」が好きです。
歩くと言う事は「無」なんです。ただひたすら次のお寺を目指しているのです。そ
のぽっかり明いた空間に時折「今までの事」「これからの事」がス~ット入り込ん
できて、その事を一生懸命考えている自分の気づくのです。
私はいさをさんがパソコンを使えるようになられたら、句集を作られるようにお勧
めしています。還暦までにはまだまだ時間のあるいさをさん「還暦記念句集」等
如何でしょう。お待ちしています。
句集は残念ながら、まだのようですが、「遍路記」を一冊の本にされました。私のこの記録を
読んで(私の手作りの冊子をお送りして読んでいただいておりました)一念発起され、立派な
記念本を作られて私にもお送り頂きました。膨大なページ数で、日にちも経っているのに良く
覚えておられたと関心してしまいました。
高橋旅館 (7泊目)
遍路中こんな日の出を何度拝んだ事でしょう…
夜明け前の冷気が一度に緩み始める感じです
「在った!!」この道でいいのかと不安になった時
この印を目にした喜びを
歩き遍路者の皆さん何度と無く味わっていると思います