晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宮部みゆき 『ステップファザー・ステップ』

2009-10-08 | 日本人作家 ま
私の尊敬する作家のひとりにジェフリー・アーチャーがいる
のですが、彼の作品はおもに3パターンの形式で、しかも
順番で出版され、まずは主人公の人生を壮大に描く、本人
が「サーガ」と呼んでいる大河ドラマ的作品があり、次に、
スピード感あふれるアクションエンターテインメント的作品が
あり、そして短編集、この3つ。
なかには番外編として戯曲もあったりするのですが、よくも
まあ、こんなに違った毛色の作品を次々に繰り出せるなあ、
と感心しきり。

で、宮部みゆきはというと、推理小説、時代歴史小説、そし
て短編と、おもに3パターンあり、いずれも高い評価を得て
おり、歴史小説や推理小説の短編もあり、長編でもユーモ
ラスな作品もあったりするのですが、ジェフリー・アーチャー
と同じく、バラエティ豊かだなあと思うのです。

『ステップファザー・ステップ』は、いちおうカテゴリー的には
推理小説にはいるのでしょうけど、それよりもコミカルで登場
人物たちが個性豊か、なんていうか、ハイセンスだなあと。

泥棒を稼業としている男は、ある豪邸に忍び込もうとします。
豪邸の隣家から侵入しようとしましたが、運悪くその隣家の
屋根を突き破り落下。しばらくして意識が戻ると、双子の男
の子がいたのです。
話を聞くと、双子の両親は揃って蒸発してしまい、子どもだ
けでの生活。そして突然降ってきた泥棒に怖がるそぶりも
見せず面白がっています。

なんだかんだで隣の豪邸から金をせしめて、その金は双子
の当座の生活費として渡します。しかし両親は帰ってこず、
なんだかんだで双子の父親代わりとなってしまい・・・

泥棒は組織的に活動していて、その胴元というか仕切り役
がいるのですが、脇役ながらいい味を出しています。
こういうバランス感覚は宮部みゆき作品は超一級ですね。
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ヨースタイン・ゴルデル 『オレンジガール』

2009-10-07 | 海外作家 カ
ヨースタイン・ゴルデルといえば、まず真っ先に思い浮かぶのが
「ソフィーの世界」で、基礎的な哲学を紹介した本で世界中で大
ベストセラーとなりましたが、ほかに読んだ作品は「アドヴェント
カレンダー」「カードミステリー」と、いずれもファンタジックな物語
で、どこか哲学めいています。

『オレンジガール』も、はじめこそラブロマンスぽいのですが、だん
だん読み進むにつれて、宇宙とは、人生とは、といった哲学を含
んだ話になり、最終的に深く考えさせられる作品に仕上がってお
ります。

15歳の少年ゲオルグは、4歳のときに父が亡くなり、それから11
年後、子供の時に遊んでいたおもちゃの車の中から父の書いた手
紙が出てきます。
父は医者で、病気で亡くなるのですが、死に対しての心構えと、息子
ゲオルグのことを案ずる内容で、やがて話は父の若いころの話となり、
「オレンジガール」との出会いを主体に書かれていきます。

学生時代の父は、ある日電車に乗ると、たくさんオレンジの入った大き
な紙袋を抱えた女性を見かけます。するとその女性は父に目を向け、
父も目線を離そうとせず、電車が揺れたときに袋を落としそうになった
女性を助けようとして、かえって袋を破いてしまい、オレンジがこぼれ落
ちてしまいました。
謝ろうとするも、女性は立ち去り、気になった父はそれから「オレンジ
ガール」を街中探し歩きます。
果たして「オレンジガール」は何者なのか、そして手紙には、大きくなっ
たゲオルグに、どうしても答えてほしいという質問が書かれていました。
その質問とは・・・

とてもいい話です。舞台設定はノルウェーのオスロを中心に、郊外の美
しい自然も描かれ、そして北欧の寒い様子もよく分かります。
作者の特徴なのでしょうか、どこかファンタジックな物語設定で、そこに
家族のことや学校のこと、そして宇宙のことといったリアルな話とのコン
トラストが絡んで、独特の色彩美が文章にあるようです。
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馳 星周 『鎮魂歌(不夜城Ⅱ)』

2009-10-03 | 日本人作家 は
「不夜城」では、新宿、歌舞伎町に暗躍する北京系、上海系、
台湾系、香港系などのグループの抗争を描き、騙し騙され、
裏切りなどといった人間のダークな部分がこれでもかと出て
きて、この本を読み終わってしばらく、新宿に行っても3丁目
から靖国通りの向こうは「悪の巣窟」なんだなあ、とビビッて
いました。

そしてその続編になる「鎮魂歌」。上海と北京の抗争はひと
まず収束しましたが、数年後、北京系の「四大天王」のひと
りが殺されます。殺された男はパチンコの偽造カード製造
で荒稼ぎをしていて、しかも当日、男の居場所を知っていた
のは北京系でも一部のみ。北京のボスは元刑事の日本人
滝沢に調べさせます。
犯人は、台湾系の大物、楊偉民の子飼いの殺し屋、郭秋生。
秋生は義理の父と姉を殺し、それを楊偉民が始末し、秋生は
台湾に戻って軍に入隊、その後歌舞伎町に戻り、殺人の仕事
を引き受けたのです。
しかし、今までは殺しが成功すればしばらくは東京から離れる
のに、今回の北京の大物殺害があっても、楊偉民は歌舞伎町
に留まるように秋生に告げ、さらに上海系のトップの愛人の
護衛(ボディーガード)をしてくれと頼んできます。

そんな中、秋生は楊偉民の「息子」、劉健一に会います。
二年前の抗争で、自分の恋人を銃で撃ち殺したことで上海と
北京との間の手打ちとした健一。
楊偉民はなぜ北京の大物殺害の後に上海トップの愛人のボ
ディーガードを秋生にさせるのか、その目的、意図が分からず
健一に訊ねますが、健一も楊偉民の目的は見えませんが、
しかしなにかを企んでいることは確かというのです。

秋生の仕事がふたたび上海と北京の争いの火種となるのか。
楊偉民の企みとは・・・
物語はやがて、「不夜城」の抗争よりも過激にえげつなくなって
いきます。元刑事の滝沢という男が、その場しのぎの言い訳や
日本のヤクザとトラブルを起こしたりして、より問題が複雑にな
り、前作よりもさらに明日が見えない。

愛が枯渇した人たち、とでもいうのでしょうか。
いとも簡単に一線を超えてしまう神経。しかし「生きたい」という
執念はすさまじく、しぶとさ、図太さは野生の獣のそれです。
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