晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

中山七里 『連続殺人鬼カエル男』

2014-01-27 | 日本人作家 な
この作品は、このミステリーがすごい!大賞の最終選考に残った作品で、
ちなみにこの年の受賞作は同じ作家の「さよならドビュッシー」。
これをお蔵入りさせるのはもったいない、ということで出版となった
ようですね。

埼玉県の某市にある高層マンションで、口にフックをかけられて宙吊り
状態になっている女性の死体が発見されます。

現場には、拙い文章の犯行声明分が。これは猟奇的犯行なのか、はたまた
怨恨による犯行か、埼玉県警捜査一課の古手川は先輩の渡瀬と捜査に出ます。

しかし、被害者と生前に交際していたという男が見つかるのですが、怪しい
そぶりはあるものの、犯人ではありません。

そのうちに、第2の犯行が。

今度は、廃車工場で、プレスされる車の中に老人の死体が・・・

またも、拙い文章の犯行声明分が出てきます。

次々と起こる殺人事件。犯人を捕まえられない警察に対して、次第に市民から
怒りの声が上がるように。

すると、第3の犯行が起こって、この一連の事件には、ある”法則”があるのでは、
と気づいた渡瀬ですが、あまりにも幼稚な発想で、一旦はその自説を引っ込めます
が、記者会見の場で、ある記者にそこをズバリ予想され、それが記事になるや、
街はパニックに陥ってしまうのです・・・

連続殺人の”法則”とは、それによって次の犯行の被害者になるのは誰か。
警察は頼りにならないと自警団を作る市民。一部の過激な団体は、犯人は過去に
心神喪失か心神耗弱で減刑されたことのある人だと決めつけます。

そして、とうとう市民の怒りは頂点に達して、警察に殴りこみに・・・

先に「さよならドビュッシー」を読んでしまったので、2転3転のどんでん返し
の展開になるだろうなあ、と予想してたら、その通りでした。

市民がパニックになるという話は過去にも読んだことがありますが、いずれも
その原因というのは振り返ってみれば些細なもので、しかし、この話の中に出て
くる、市民が警察署を襲うシーンなどは、先の震災で、よく海外のニュース映像
で見るような市民がスーパーに入って商品を強奪したりするようなことは起こら
なかったことを考えると、日本人はそこまでモラルの崩壊は早くないんじゃない
かな、なんて思ったりして、フィクションとは分かっていても、うーん、という
変な感じが残りました。

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ローレン・ワイズバーガー 『ハリー・ウィンストンを探して』

2014-01-17 | 海外作家 ラ・ワ
去年の暮れ、文庫用の書棚を木材買ってきて自分で作って(DIYってやつ)
部屋にあふれてた文庫を整理してたときに「あれ、こんな本買ったっけ?」
というのが出てきたのです。

デビュー作「プラダを着た悪魔」は面白かったので、ほかの作品も読んでみ
ようかな、と買ったはいいけど、そのまま放置パターン。

『ハリー・ウィンストンを探して』は、ローレン・ワイズバーガーの3作目に
なります。
今回も舞台はニューヨーク。主役は30歳手前になる女性。調理師のエミー、
出版社勤務のリー、親が大金持ちのアドリアナの3人。

エミーは、長年付き合ってきた男にアッサリ振られます。彼女を慰めようと
リーはアドリアナも呼んで話を聞いてあげることに。

3人とも30歳を目前に控えての独身、リーには恋人がいるのですが、あまり
結婚を意識してはいません。アドリアナは親の金でニューヨークのペントハウス
に住み、夜な夜なパーティーに出かけては男漁り。

リーとアドリアナはエミーに「もっといろんな男を知って遊んだほうがいい」と
提案します。
はたして3人はいい男と出会えることができるのか。

とまあ、全体的にはそういう感じの話ですが、この3人のガールズトークという
んですか、話が弾んでる中にさらりと適度な嫌味だったり皮肉だったりが入って
きて、思わずクスリとします。

それにしても、この作者の「ニューヨークの切り取り方」は面白いですね。
誰に頼まれたわけでもないのにニューヨークに住んで、ニューヨークで暮らすなら
こう、みたいな背伸び感も描きつつ、でも浮世離れした中にあっても、どっこい
人間が生きているんだ、という視点。




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山本一力 『峠越え』

2014-01-14 | 日本人作家 や
山本一力の時代小説には、たびたびアウトローの大物が登場します。
まあアウトローといってもロー(法)じたいがコロコロ変わって曖昧
な時代だったので、より現代風にいえば「反社会勢力」ですか。

『峠越え』では、今戸の芳三郎、達磨の猪之吉など、賭場を仕切る類
ではなく、女衒(女性を買い付け遊郭などに売るスカウト業)と、テキヤ
が出てきます。

深川に住む女衒の新三郎は、いきなり兄貴分に呼び出され、なにごとかと
元締めの土岐蔵のもとへ。
つい最近連れてきた4人が全員病気持ちだったというのです。

また新しく4人を用意できなければ、弁償として大金を払うか、それもでき
なければ、江戸湾に沈められることに・・・

新三郎は二月の期間で4人を探してくると土岐蔵と約束し、東海道へ。

江ノ島の手前で、新三郎は男たちに襲われそうになっている女性を助けます。
その女性とは挨拶もそこそこに別れるのですが、その夜、新三郎が出かけた
江ノ島の賭場で、なんと女壷振りとして現れたのです。

名前をおりゅう。はじめは負けていた新三郎でしたが、おりゅうの壷振りと
相性が良かったというか勝ち続けます。

賭場もお開きになって、新三郎とおりゅうは会うことに。たちまち惹かれあう
ふたり。そこで新三郎は江ノ島に来た理由を明かします。
するとおりゅうが、江ノ島弁天の御開帳を江戸で開催するプロデュースをして
みないかと誘います。その売り上げの一部を返済して女衒業から足を洗えばいい
ではないか、と。

さっそく江戸に戻った新三郎は土岐蔵のもとに行って、江ノ島弁天の御開帳を
回向院でやるプロデュースを説明。成功したら女衒から足を洗う。失敗すれば
おりゅうは遊郭に、新三郎は縄でぐるぐる巻きにされて江戸湾に・・・

そんな命がけではじめた御開帳ですが、なんといよいよ明日という日に大嵐に
なってしまい・・・

さて、タイトルの『峠越え』なのですが、御開帳をやることになったはいいけど
さまざまなトラブルに見舞われ、それでも乗り越えてゆくという意味での「峠」
もあるのですが、もうひとつの意味も。

なんやかやで御開帳が終わって、新三郎とおりゅうは土岐蔵に呼び出されます。
すると、江戸のてきや業を仕切る”四天王”と呼ばれる4人との集まりに顔を
出してくれと言われ、その席で、てきや四天王と土岐蔵の5人が久能山参り
に行くので、そのツアーコンダクターをやってほしい、と頼まれるのです。
久能山とは駿府、つまり静岡にあり、江戸からは箱根の関所を越えなければなり
ません。もうひとつの「峠」とは、このこと。

ジジイ5人の旅なのでワガママは言うわ体の不調を訴えるわ、新三郎とおりゅうに
無理難題が・・・

この話のキーワードは、人との縁。凡人は縁を生かせず気づかず、大人は袖触れ合う
縁も大事にします。駅のホームや電車内で袖触れ合うだけで殺傷事件になってしまう
現代社会に訴えかけます。







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高杉良 『大逆転!』

2014-01-09 | 日本人作家 た
昨年は当ブログの拙いブックレビューを読んでいただきありがとうございます。
今年も暇つぶし程度に読んでいただけたら幸いです。

さて、2014年一発目の投稿。
本を読む習慣が無かったころ、せいぜい興味があったのは松本清張。あとは、
経済小説。海外で仕事してたとき、お世話になってた人に「何か日本の小説
あったら貸してください」といって借りたのが、清水一行と堺屋太一でした。
その当時は日本語に飢えてたというのもあって、むさぼるようにそれらを
読んでましたっけ。

ここ最近はもっぱら読書といえば、寝る前のリラックスタイムの一環となって
いるので、堅苦しい経済小説はちょっと敬遠ぎみでしたが、たまに読むのも
いいですね。

『大逆転!』ですが、話の内容は、昭和44年に実際にあった、三菱銀行と
第一銀行の合併から合併白紙という出来事。登場人物も一部を除いて実名。

昭和44年元旦の読売新聞に、「三菱と第一が合併」というスクープが取り上げ
られます。話は遡ること半年ほど前、第一銀行常務取締役の島村は、頭取の
長谷川重三郎に呼ばれ、そこで三菱との合併話を島村は初めて聞かされます。

旧財閥系との合併という話は第一銀行マンにとっては苦い記憶で、戦中に
政府の命令で三井銀行と第一は合併させられて帝国銀行になったのですが、
そのイニシアチブは三井が握って、結局戦後すぐに帝国銀行はもとの三井と
第一の分裂。

島村は、なぜ長谷川頭取がまたあの過ちを繰り返すのか、不思議に思います。
ところが話を聞くと、どうやら三菱の頭取ともおおまかな話はついているようで、
これには島村も反発します。

しかし、第一銀行創始者で「日本の銀行の父」といわれた渋沢栄一の実子である
長谷川頭取の周囲はイエスマンばかり。たちまち島村は形勢不利に。

こうなったらと島村は会長と相談役に話を持っていきます。会長も相談役も三菱
との合併には反対。

行内での島村の立場は苦しくなる一方。そして、大阪の東亜ペイントへの出向が
言い渡されるのです・・・

最終的にこの合併話は白紙撤回となるのですが、島村、会長、相談役の合併反対派
はどのような工作を練っていったのか。
財閥系ではない”庶民の銀行”からスタートした第一銀行マンとしての島村の矜持が
かっこよかったですね。

しかし、実際の話では、これから数年後に第一銀行は”農協に毛の生えたような”
と小馬鹿にしていた勧業銀行と合併します。

それからは怒涛の銀行再編ラッシュで、今ある銀行は合併前はどこだったっけ・・・
と思い出すのにも大変なくらい。第一勧銀は富士と日本興銀と合併してみずほになった
んでしたっけ。富士といえば安田系列の旧財閥系。島村の胸中やいかに・・・







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