晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

山崎豊子 『白い巨塔』

2015-10-31 | 日本人作家 や
あらかじめ書きますが、今更、です。

言い訳とかそういうのではないのですが、まず山崎豊子の作品を読もうとするのには非常に気力がいるものでして、心してかからないと読み終わってグッタリするのです。
じっさい「沈まぬ太陽」や「大地の子」を読み終わったときは頭がぐわんぐわんして、次の本を読みはじめるまで時間が必要でした。

あと、去年入院してたときに読もうかなと思ったのですが、ドラマを見て内容を知っているので、あんまり入院中に読むものではないな、と思い、そのままにしておいて、ようやく読む気になった、と。あ、入院といっても手術はしなかったので関係ないといえば関係ないんですけどね。しかも大学病院じゃなかったですし。

さて、あらすじを書こうにも長すぎてどこまで書いていいのやら。もうホント、ザッと書きますと、国立浪速大学付属病院である癌の手術が行われたのですが患者は容態が急変して死亡、遺族は執刀医の第一外科の財前助教授を訴えます。財前は外科医として定評があり、教授選、ドイツでの学会参加など多忙の中での裁判。同期で友人の内科医、里見はこの裁判にいたる経緯の当事者ともいえる立場で、裁判でどのような証言をするのか・・・

医療裁判の難しさ、大学病院や医学界の陰謀渦巻く人間関係、研修医の待遇、などなど問題を提起。

驚いたのは、裁判の一審が終わった時点で一度はこの小説は完結している(文庫1~3巻)んですね。ただ、あまりに反響が大きかったため、続編というかたちで二審を描いた(文庫4,5巻)んですね。

やっぱり財前=悪、里見=善といった単純な構図になってないところが、読み終わって「あースッキリした」ではなく「医療従事者ではないけれど、いち人間として考えなければならない問題」という気持ちにさせられます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

宇江佐真理 『斬られ権佐』

2015-10-17 | 日本人作家 あ
この話は、仕立て屋の息子で与力の小者の権佐という男の話です。

権佐は仕立て屋の仕事のかたわら、八丁堀の与力、菊井数馬の小者を務めています。妻は医者のあさみ、ふたりの間にはお蘭という五歳の娘がいます。
あさみの父は八丁堀の医師で、長崎で修行してきたあさみは美人で有名で、言い寄る男は数知れず。その中に数馬もいました。

数馬と権佐は知り合いで、ふつう与力は小者を使ったりしないのですが、権佐は数馬の捕物の手伝いをするようになり、あさみのことを聞いた権佐は一目見て「美人だなあ」と思ったぐらいで別にどうしようとしたわけではなかったのですが、ある日、あさみに振られた男があさみを襲おうとして、それを助けに入った権佐は体じゅうを刀で斬られて、そしてあさみは権佐を手術でなんとか治療します。意識を失いかけた権佐にあさみは「あんたのお嫁さんになってもいいから」と励まします。
命をつなぎとめた権佐でしたが、体は不自由になり、仕立て屋の仕事は簡単な手直しぐらい、捕物の手伝いは歩くのがやっとの状態ですが、弟の弥須に手伝ってもらっています。

あさみは同情から権佐の嫁になったのか・・・

一方、権佐にしても、数馬があさみのことを好きだったことは知ってるので、なんとも微妙な立場。

表題作「斬られ権佐」は、上記の登場人物のざっと紹介があり、本筋の事件へ。向島の松金という料理屋で亭主が殺されて番頭が重傷。後添えに入った女将がどうもあやしいのですが、番頭の治療をしているあさみの診療所に若い男が・・・

「流れ灌頂」は、そば屋と幽霊の話。権佐が子供のころからの馴染みのそば屋「はし善」は最近、蕎麦の味が落ちたと噂で客が減っているよう。というのもそれまで蕎麦を打ってた息子が独立してそば屋を出したことで、父親の蕎麦では味がいまいち、ということ。
そんな中、あさみのところに女性の急患が。その女性は「はし善」の息子の嫁だったのです。聞けば、息子のそば屋はツユの味がいまいちで客足が悪いとのことで、嫁は妊娠していたのですが堕胎し、すぐ働きに出て体を悪くしたのです。そのころ、堕胎専門の医者の近辺で幽霊騒ぎが・・・

「赤縄」では、陰間茶屋で相対死(心中)事件がおこります。ふたりの男がお互いを刺したよう。陰間とは、男娼のことで、女形の役者が副業あるいは専門でやっていて、この事件では陰間と相手は武士。その武士は大名家の家臣で祝言が決まっていたというのですが・・・

「下弦の月」では、あさみが数馬の家を訪れて、まだ数馬はあさみに未練が残っていると知り、権佐に言うと「考えすぎだ」と一笑。そんな中、権佐が腹痛を訴え、診てみると、腹に水がたまっていてしばらくは安静にしていなければならず、あさみはこれを機に小者を辞めるように数馬のところに。ところが数馬は「権佐は捕物が好きで生き甲斐だ」と。そして町では不審火が相次いで・・・

「温」では、おしげという女性が殺されます。おしげはお菓子屋の隣に住んでいて、近所の子供たちが集まっては般若心経を聞かせて飴玉を配っていたのですが、そんなおしげの下手人は鋏研ぎの青年というのです。しかしその青年にはアリバイがあり、調べを進めていくうちに、おしげに子がいたことが分かり・・・

「六根清浄」では、いよいよ権佐の具合が悪くなり、あさみは医者の仕事がいそがしく、娘のお蘭が花見に行きたいとせがんでも連れて行ってあげられません。そんな中、ある盗賊が人足寄場から戻ってくるとのことで、奉行所はざわつきます。その盗賊には娘がいるのですが、一膳飯屋にあずけられて、もう父には会いたくない、と。すると、お蘭の行方が分からなくなり、捜索していると、件の盗賊の娘がかどわかしに遭い、そのときにいっしょに女の子がいたと・・・

これはキャラクター設定が面白くて続編を期待していたのですが、豪快にネタバレを書いてしまうと最終話で権佐は死んでしまい、続編は期待できませんでした。まあつまりそのくらい面白かったということです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

宇江佐真理 『三日月が円くなるまで』

2015-10-09 | 日本人作家 あ
この話は、じっさいにあった南部藩と津軽藩の確執を題材にしていて、南部を仙石藩、津軽を島北藩にしています。

仙石藩の武士、刑部小十郎は大八車をひいて「紅塵堂」という古道具屋に着きます。この古道具屋の主は小十郎の父の知り合いで、小十郎は「紅塵堂」の貸し家に住んで、ある任務をするのですが・・・

発端は、仙石藩主が徳川将軍家に、隠居所を建てるのに仙石の領地の檜を使いたいとお願いします。藩主はさっそく家臣に命じますが藩の財政は逼迫していて、藩主は断ることに。しかし、それを聞いていた島北藩主が「自分の藩の檜を使ってください」と横やりを入れてきたのです。
もともと島北藩と仙石藩は隣地で仲が悪く、「仙石の腑抜け、独活の大木」と馬鹿にされる始末。これに怒ったのが仙石藩の正木庄左衛門。正木は島北藩主を斬ると飛び出したのです。

この正木と小十郎は同じ歳で、小十郎の「任務」とは、正木の助太刀。

さっそく小十郎は江戸のどこかに潜んでいる正木を探すことに。ところで小十郎の住むことになった貸し家は元蕎麦屋で、なんと一家心中したとのこと。
夜に物音がして怖いので、見かけた托鉢僧にお祓いをしてもらうことに。賢龍という修行僧は仙石藩の出身で、なんだかんだで小十郎の家に泊まることに。

やがて正木の潜伏場所もわかり、島北藩主襲撃の計画も進んで・・・

「紅塵堂」の娘と小十郎の恋の行方も面白いですね。

『三日月が円くなるまで』とは、仙石藩の領地を端から端まで歩くと三日月が満月になるまでかかる、というたとえ。実際の南部藩も今の岩手県の南部から青森県の下北半島まででしたから、たしかにあれを南北縦断すると考えたらゆうに十日以上はかかりますね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

浅田次郎 『あやしうらめしあなかなし』

2015-10-05 | 日本人作家 あ
この小説は「こわい話」の短編となっていて、こわいだけではなく、それこそタイトル通りの「かなし」い話だったり不思議な現象だったり。

設定としては、奥多摩の山奥にある母の実家の神社に「私」が子供のころに泊りに行って伯母から聞かされた話ということになっています。

「赤い絆」では、ある男女が神社に泊りにやってきます。この神社は講中の宿坊をやっているので泊めることに。しかしその男女、お互いの手首を赤い紐で結んで、男は学生風、女は堅気に見えないといったワケアリ。
その夜、男女は毒を飲んで、急いで医者を呼んできたのですが、男はすでに手遅れ、女はもがき苦しんでいます。神主は女を死なせてやろうとしますが、医者は「それは殺人だ」と止めます。そして翌日、男の家族が神社に来るのですが、まだ女は生きていて・・・

「虫篝」は、関西で会社を倒産させて東京に逃げてきた男の話。津山は関西でゼネコンの下請けの会社の社長でした。しかし会社は倒産、妻と子供を連れて夜逃げ。東京で貸し家に住み、仕事も見つけ、ひっそりと暮らしていたのですが、津山の近辺で自分そっくりな「あいつ」がウロウロしているのです。その「あいつ」は身なりも整っていてベンツに乗って、まるで社長だった時の津山なのです。そんな話を大家にすると、大家が自分にも似た話があると・・・

「骨の来歴」は、私の友人、吉永の話。吉永は高校時代の同級生で、今は軽井沢の山荘で株のトレーダーをして暮らしています。私は久しぶりに吉永に会い、昔話を聞くことに。吉永は高校を卒業して浪人時代に高校の同級生だった佐知子と交際していたのですが、佐知子の親から交際を反対され、佐知子は自殺。佐知子の親を呪った吉永でしたが・・・

「昔の男」は、銀座にほど近いところにある小さな病院の浜中ナースの話。婦長の逸見から「昔の男と会うの」と言われて、浜中は驚きつつも、病院から緊急連絡があっても自分が出ますから、と逸見さんのデートをバックアップします。一方、浜中は恋人とデート。そのとき、逸見さんと例の男を目撃します。その夜に病院から電話が。急いで病院に行く浜中。しかしそこには逸見が。浜中を信頼できずに携帯の電源を切っていなかったのか。落ち込む浜中。そこに優しくなぐさめてくれる総婦長が。しかし彼女の傍には逸見さんといた例の男が・・・

「客人」は、四十歳で独身、親の遺産で悠々自適に暮らす河野の話。新盆で、銀座のデパートに盆提灯を買いに行き、その帰りにふとバーに寄ります。バーのママと河野は話がはずみ、なんとママは河野の家に来ることに。そこで迎え火を焚いているうちに、河野にいやな記憶がよみがえり・・・

「遠別離」は、第二次大戦の衛兵、矢野の話。矢野は赤坂の歩兵一聯隊の留守部隊。視力が弱く丙種合格、いつ戦地に出されるかわかりません。その夜は風邪で具合が悪く、歩哨の交替のときに黒いコートを着て百合の花束を抱いた老婆が見えて・・・

「お狐様の話」は、「私」の伯母の小さかったころの話。神社に十歳くらいの女の子がやってきます。執事と女中のお付きを連れてきたその女の子は、狐に憑かれたとのことで、はじめのうちは伯母と普通に話をしていたのですが、そのうちに言動がおかしくなり・・・

できれば夏の寝苦しい夜に読みたかったのですが、いまはもうすっかり夜は涼しくなりました。読む時期を間違えた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする