晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

池波正太郎 『闇の狩人』

2017-03-30 | 日本人作家 あ
池波正太郎さんの作品中にたびたび料理が出てきて、
それらをまとめた本も出てるくらいですから今さら
説明もあれですけど。

「藤枝梅安」シリーズで、冬の寒い日に、梅安が
仕掛人仲間の彦次郎と夕飯を食べるのですが、その
メニューが、大根の千切りとむき身のアサリを薄く
はった出汁でさっと煮て、山椒と醤油をかけて、
「ふうふういいながら食べるのである」

というのがありまして、これ食べてみたいなあと
ずっと思ってまして、先日ついに作って食べまし
た。

原作では「このとき酒は冷のまま飲む」とありますが、
夕飯の時の汁物としていただきました。

「む……うめえ」

と、思わず(それっぽい)口調になってしまいました。

それはさておき、『闇の狩人』です。この作品は映像化も
されてるみたいですね。

盗賊(釜塚の金右衛門)の右腕といわれる雲津の弥平次は、
ある大掛かりな盗みを終えて、湯治に。

上州(群馬県)と越後(新潟県)国境にある温泉に入りに
山道を歩いていると、半死半生の若い侍が倒れているのを
見つけます。
これは追われてるのだと判断した弥平次は、この侍を隠し
ます。すると遠くのほうで数人の侍が探している声が聞こ
えます。

意識の戻った若い侍ですが、自分の名前も、どこから来て
どこへ向かうのかも分かりません。
次の盗みの下準備があるため江戸に戻りたい弥平次ですが、
若い侍を放っておけずに匿うことに。

温泉の宿屋から近くの山小屋へ移動している途中、この侍の
追手に見つかりますが、用心のために渡しておいた脇差で
あっという間に追手を斬って倒します。

どうやら、よほどの剣の使い手らしく、さらに、かなりの
重要な任務で江戸へ向かうのか、あるいは山越えで越後に
向かうのか。
弥平次は、若い侍に「谷川弥太郎」という名前をつけて
あげて、江戸に戻ります。

それから数年後。

弥平次の所属する(釜塚一味)では、頭領の金右衛門が
急死し、弥平次が次の頭領になることを辞退したために
後継者争いがおこります。

そんなこんなで頭を悩ませていた弥平次ですが、ある夜、
浪人が刀で何者かを斬ったところを目撃します。
「見たな」と、弥平次に声をかける浪人ですが、この声
に聞き覚えが・・・すると浪人が「弥平次どのではあり
ませんか」と。

久しぶりに再会した谷川弥太郎。しかし、いま自分が
どういう境遇なのかは話そうとしません。

弥平次は、何か込み入った事情でもあるんだろうなと
深く詮索はしません。

弥平次は飲み屋からでて家に帰ります。その後を何者か
が尾行しています。
すると、その尾行者は、これまたその尾行者を尾行して
いた弥太郎に斬られます。

弥平次のもとに「昨夜、何者かがあなたを尾行していた
ので、そいつを斬っておきました」という手紙が届き、
その(尾行者)を確かめると釜塚一味の盗賊だった
のです・・・

後継者争いでまさか自分の命が狙われていると知った
弥平次。

一方、谷川弥太郎ですが、いまはある香具師の元締の
もとで「仕掛人」となっています。
後日、別の(依頼)があり、弥太郎は、ある侍を斬る
ことになるのですが、斬り合っている最中、その相手
の侍が「笹尾平三郎・・・きさま、よくも・・・」
と言ったのです・・・

弥太郎のことを知っていると思われる侍はある大名家の
武士だったのですが、その大名家ではお家騒動の真っ只中
でありまして、それと谷川弥太郎こと(笹尾平三郎)の
関係は・・・

盗賊、仕掛人、そして大名家のゴタゴタと、鬼平犯科帳と
藤枝梅安と剣客商売という人気シリーズ三作の「いいとこどり」
のような気がしないでもないですが、その感想は、読み終
わった後に「そういえばそうだった」と気付いたもので、
読んでる最中はもうただ物語に夢中になっていました。

そしてラスト、ある登場人物の夕飯のシーンで締めくく
られるのですが、ここがもうたまらなく上手いなあと
思いました。
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山本一力 『道三堀のさくら』

2017-03-24 | 日本人作家 や
タイトルの「道三堀」とは、今の東京駅丸の内中央口
から皇居方面に向かいますと国道1号線、日比谷通り
にぶつかります。その交差点が「和田倉門」といいま
して、和田倉門から大手町を横切って日本橋川に合流
するあたりの「呉服橋」まで、距離的にはさほど長く
ない運河なのですが、この運河、江戸幕府が開かれる
前、つまり家康が江戸城に入城してすぐに掘られた、
江戸の中でも初期のお堀なのです。

家康の入城当時の地形に関係がありまして、現在の
日比谷あたりは「日比谷入江」といいまして、つまり
ガッツリ海でして、日比谷公園や霞が関から内堀通り
の向こう側は今の皇居ですから、つまり江戸城は今風
に言えば「ベイエリア」だったわけですね。
昔は海から船でそのまま城まで物資の運搬ができた
わけですが、この水路を掘った表向きは「行徳(千葉県
市川市)の塩を城に運ぶ水路のため」でしたが、実際は
攻め込まれたときに、日比谷入江を敵軍に封鎖される
と困るわけでして、その迂回路の役割で、江戸城のお堀
から大川(隅田川)の河口に出られる水路を掘ったんですね。

というのも、まだ家康は豊臣秀吉の部下の一人だった
わけでして、いつなんどき攻められるか分からなかった
のですね。

その後、日比谷は埋め立てられて、江戸湾から船で御城の
内堀まで行ける水路のうちの一本となります。

さて、ここからがこの本のストーリーとなりますが、
主人公の龍太郎の仕事は「水売り」です。
大川の東、本所深川エリアは埋立地で、井戸を掘っても
海水しか出ず、住民は真水を買っていたのですが、
その真水を運搬するのが「水売り」。

江戸の水は「神田上水」と「玉川上水」がありまして、
江戸中にこの上水道が張り巡らされて、その余った水
の排水口が、道三堀にかかる「銭瓶橋」にあり、この
水を船に積んだ樽に入れて、運ぶわけですね。

で、水を桶に移してそれを天秤棒で担いでお得意先を
まわったりするのですが、その水の重さが50キロ超と
いいますから、かなりヘビーな肉体労働です。
そのかわり給金は当時の町人でもトップクラス。

ある利権を巡って、龍太郎の所属する組合とよその
組合とで争いごとが起こったりします。

そんな中、龍太郎は、水売りの得意先のひとつ、深川
の蕎麦屋「しのだ」の娘おあきと恋仲。
ある日、日本橋の鰹節問屋の番頭が「しのだ」に来て、
深川に蕎麦屋を新規オープンしますんでよろしくと
挨拶に。

その蕎麦屋、間口が通常の三軒分もあり、客席数も
多く、日本橋の老舗鰹節問屋が経営するということ
で深川界隈の蕎麦屋は戦々恐々。

ところが、いろいろありまして、鰹節問屋は蕎麦屋
の経営を断念します。
そこで、予定地だった店に、浄水場を作る計画を
立てます。龍太郎もアドバイザーとして協力します。
が、このことでおあきと龍太郎はすれ違うことに・・・

あれは何年前だったでしょうかね、飲み水をペット
ボトルで売るということが当時けっこうなニュース
になったような記憶があります。
「こんな水が豊富な日本でヨーロッパの真似せんでも」
みたいな感じで。

江戸時代の下町では普通に水を買ってたというのが
面白いですね。


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池波正太郎 『剣客商売番外編 黒白』

2017-03-19 | 日本人作家 あ
「藤枝梅安」シリーズも読み終え、これからはシリーズ
ものではなく、長編短編は問わず単発ものを読んでいこう
と思ったら、まだこの作品があったではありませんか。

「番外編」ということですが、スターウォーズでいう
ところのエピソード1~3ぐらいの位置づけでいいの
ではないでしょうか。

スターウォーズを観てない方にとってはなんのこっちゃ
分からないでしょうけど。

さて、目黒にある剣術道場の主、浪切八郎は(あること)
で悩んでいます。
それは、浪切の弟子、水野新吾に関する良くない話。
なんでも、浪切に無断で道場破りをした、というのです。

弟子の非行なら師匠がやめさせればいいのですが、じつは
水野がこうなってしまったのは浪切に原因があるのかも
知れないので、問いただそうにも訊けません。

そしてここ数日、付近で起きている辻斬りは、じつは水野
の犯行だと分かった浪切は、さすがに放っておけずに
水野を斬り殪してしまうのです。

信頼のおける弟子にはこの一件を打ち明け、そして浪切は
道場から姿を消してしまいます。

しかし浪切は、2年後には必ず戻ってくると誓います。
それは、ある御前試合で浪切は秋山小兵衛という剣士に
負けてしまい、次は真剣勝負がしたいと小兵衛に果たし状
を送り、2年後にと承諾してもらったのです。

とはいうものの、どこへ行ったらいいのか迷った浪切は、
亡き父が「困ったらとりあえずあの人のところへ行け」
と話していたのを思い出し、とある料理茶屋へ。

茶屋の主は浪切を離れの一室で寝泊まりさせ、三食付き
という高待遇をし、さらに、京都へ行きたいという浪切の
ために道中手形を発行してくれます。

浪切は、世話係の女中、お信と仲良くなり、お信から
「自分の父を殺した奴がこの近くに住んでいる」という
話を聞いて、お信の敵討ちの助太刀で、浪切はその浪人
を殺します。
ところがその次の日、お信が手紙を残してどこかへ消えて
しまい、さらに茶屋の主から、先日の浪人殺しで町奉行が
捜査していると聞かされた浪切は、岡本弥助と名乗る武士
を紹介されて、なぜか彼といっしょに逃げることに・・・

いよいよ約束の日。小兵衛は勝負の場所である寺の境内に
います。ところが、時間になっても浪切八郎は現れません。
真剣勝負をしようと果たし状を送ったその当人が来ないと
なれば、もしこの一件を小兵衛が誰かに漏らそうものなら
浪切八郎は剣士として生きてはいけません。

「いったい浪切殿に何があったのか」

心配になった小兵衛は、目黒の浪切道場に行き、そこで、
浪切八郎が行方不明になっていると知るのです。

あの約束の日。浪切は、なんと岡本の案内で、京都に
いたのです。なぜ京都に。
冒頭に「スターウォーズ」を例に出しましたが、そう、
浪切八郎は「ダークサイド」に堕ちてしまい・・・

浪切と小兵衛のメインの話の他に、小兵衛の最初の妻
で大治郎の母であるお貞との出会いそして結婚のエピ
ソード、それからシリーズで登場する御用聞きの「四谷
の弥七」の父親である助五郎、さらに小兵衛が隠居場を
鐘ヶ淵にした話も出てきて、「おお、そういうこと
だったのね」と読んでてなにやら嬉しくなってしまい
ました。

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池波正太郎 『仕掛人・藤枝梅安7 梅安冬時雨』

2017-03-11 | 日本人作家 あ
さて、「藤枝梅安」シリーズもこれで終巻となって
しまいました。

大坂の香具師の元締、白子屋菊右衛門は消えたものの、
その残党が梅安の命を狙っていて、片時も安らぐこと
ができません。

といって、宿を転々とするのも、鍼医者という本業を
やっていくには不便で、品川台町の家から、目黒あた
りに新居を建てようと計画します。

そんな中、小杉十郎太を訪ねに品川台町の梅安宅に
老武士がやってきます。
たまたまそこに居合わせてしまった梅安の命を狙う
仕掛人。
こんな老人なんて斬ってしまえと仕掛人。ところが、
何がどうなったか、仕掛人のほうが斬られて・・・

実はこの老人、浅井為斎という名で、かの剣の名人、
秋山小兵衛をして「稀代の名人はただひとり、浅井
為斎先生あるのみ」と言わしめたほど。

今は備前岡山藩の下屋敷に住んでいて、偶然、小杉と
出会ったのです。

物語は、梅安、彦次郎、小杉と、江戸の香具師の元締
が、いよいよ白子屋の残党に反撃開始、といったところ
で終了。
これに、浅井為斎がどう関わってくるのかも楽しみだった
んですが。

あとは、編集者の人と池波正太郎さんの対談が文字起こし
されているのが掲載。

外国だと、例えばフレデリック・フォーサイスが「オペラ座
の怪人」の続編を書いたり、ジェフリー・ディーバーが007
の新作シリーズを書いたりと、別の作家が続編や新シリーズ
を書いたりするのが珍しくないような気がするんですが、
日本ではどうなんでしょう。
といってじゃあ「藤枝梅安」の続きを書いてほしい作家さん
がいるのかといったら思い当たらないですけど。

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ネルソン・デミル 『ナイトフォール』

2017-03-06 | 海外作家 タ
最近あまり読んでないなあ、という外国の作品です。

といっても実はこれ、ずっと家の本棚に置いて
あった、いわゆる未読本。
この作品はシリーズ3作目ということで、じゃあ
前の2作を読んでからじゃないといかんわなと、
放置してました。
ですが、それぞれが独立した話になっていて、
これから読んでも差し支えないらしく、そんなら
読みましょう。

1996年7月、ニューヨーク州ロングアイランド沖
で、トランス・ワールド航空パリ行きの便が空中爆発
をして、乗客230人全員死亡という痛ましい事件
がありました。

元ニューヨーク市警の刑事で、現在は連邦統合テロ
対策特別機動隊(ATTF)捜査官のジョン・コーリー
は、妻でFBI捜査官のケイトと車でロングアイランド
に向かっています。今日は、5年前に起きた航空機爆発
事故の追悼式があり、それに出席するのです。

結婚前、ケイトはこの事件の目撃者からの事情聴取を
担当していて、あれから5年、ケイトはどうやらこの
事故に関する政府の公式見解に納得がいってない様子。

追悼式の会場で、コーリーのもとに、FBIのグリフィス
と名乗る男が「この件を蒸し返すな」と、脅しとも取れる
言葉を残します。

ケイトに話を聞いてみると、5年前の航空機爆破は、
飛行中にタンクに引火したという事故調査委員会の
出した「公式見解」ですが、じつは、海中から飛行機
にめがけて(光の筋)が見えた、という目撃証言が
多数あったのです。

この(光の筋)は、爆発して上昇を続けた航空機と、
燃えながら落下した機体の一部が重なって見えた
「目の錯覚」というのが政府の公式な結論なのですが、
ケイトが集めた目撃証言の中には、元空軍兵士で、
(光の筋)を確かに見た、という人までいるのに、
政府の結論はこの可能性を隠そうとしているようなのです。

そうなってきますと、あれは「事故」ではなくて「事件」
なのでは・・・?

さらに、航空機の爆発した時刻に、海岸に「ある男女」が
いたらしく、その2人がビデオ撮影をしていた可能性があり、
これは当時、大掛かりな捜査が行われましたが、この2人は
見つからずじまい。

コーリーはこの件の真相究明に向かいますが、FBI、さらに
CIAまでもがこの件の真相を懸命に隠蔽しようとコーリーを
あの手この手で邪魔します。
いったい5年前に何があったのか。

この話の結末は、コーリーが懸命な捜査で真相を掴み、
それを問いただそうと、証拠隠滅に躍起になってた関係各位
に問いただそうとするところで終わります。
つまり、連邦政府側が「確かな証拠」を見せつけられて
ハハーと土下座しながら「コーリーさんごめんなさい」
これにて一件落着とはなっていません。

ものすごくシリアスな内容なのですが、読んでて思わず
ニヤニヤしてしまう表現があり、中には吹き出しそうに
なるところもあり、それが絶妙な配合で、文庫の上下
合わせて900ページを超える長さでも、読み疲れる
ことがありませんでしたね。

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池波正太郎 『仕掛人・藤枝梅安6 梅安影法師』

2017-03-01 | 日本人作家 あ
この「藤枝梅安」シリーズを読んでいる間に、
本屋で池波正太郎の他のシリーズものじゃない
作品をいくつか買ってきまして、まあゆっくり
と読んでいきたいと思います。

さて、6巻ですが、物語のはじめに、豪快に
5巻のネタバレをしてしまいますと、梅安ら
は白子屋菊右衛門を始末して、これでまた
平穏な暮らしを、と思いきや、白子屋の片腕
とされていた男が跡を継ぎ、「先代の敵討ち」
で刺客を江戸に送り込んでくる様子。
さらに前作で梅安を殺しそこねて逃亡した凄腕
の仕掛人もまた梅安の命を狙っています。

品川台町の自宅兼診療所には帰れそうになく、
転々としている梅安。
そこへ、日本橋の薬種屋「啓養堂」の番頭が
梅安を探しているとの知らせが。

「啓養堂」の主人、片山清助は「仕掛人」として
ではなく鍼医者としての梅安と親しくしていて、
その主人が具合が悪いというのです。

さっそく梅安は「啓養堂」へ。清助は時間こそ
かかりそうですが治療していけば良くなると
請け負う梅安。ですが、清助の具合の悪い根本
は、誰にも明かせないある悩みが・・・

白子屋との抗争の中で、梅安を助けてくれた
江戸の香具師の元締、音羽の半右衛門のもとへ。
そこで梅安は、今治療中の日本橋「啓養堂」の
主人の名前を口にすると、半右衛門の顔色が
変わります。

じつは、あるところから、清助を仕掛けてほしい
と依頼があったというのです・・・

次が7巻でもう終わりと思うとさみしいですが、
こればっかりはしょうがないですね。
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