晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

北村薫 『覆面作家は二人いる』

2019-03-28 | 日本人作家 か
今年は、いや今年どころか去年も一昨年も、投稿する作品は
ほとんど時代小説か海外作品。
ま、読書をリラックスタイムとしているので、読んでる最中
は別の国、別の時代に浸れる、悪く言えば「現実逃避」でき
るということで、あえて国内の現代の小説は選ばないのかも
しれません。

ですが、時代小説と海外小説(しか)読まないというのも、
なんとなく不健康といいますか偏食といいますか。
そんなわけで選んだのが、北村薫さん。

「時と人」三部作、直木賞の「鷺と雪」など有名どころは読
みましたが、本職であるミステリって読んだことないなと思
い、デビューから3年目の初期の作品を読んでみました。

とある出版社の「推理世界」編集部に、(新妻千秋)という
ペンネームの原稿が届きます。
岡部良介は、先輩から「これ読んで」と言われ、次に「明日
この人に会って来て」と急展開。
原稿に目を通すと確かに面白いは面白いのですが、ところど
ころ(妙な)部分があるのです。
そもそもこの(新妻千秋)は男なのか女なのか。

さて、書かれていた住所に着いたのですが、江戸時代の武家
屋敷かというくらいの広大な敷地。インタホンを押して出て
来たのが「執事の赤堀です」というではありませんか。
この世に執事なんて実在したのかと驚く良介。

執事がいうには、原稿を送ったのは(お嬢様)ということで
送り主は女性であることが判明。そして部屋から出てきたの
は、絶世の美女。年齢は19歳。

そもそもこんな豪邸に暮らす何不自由ないお嬢様がなぜ小説
を書こうと思ったのか聞くと「自分でお金を稼いだことがな
いから」とのこと。

それはさておき、何気ない会話の中で、良介は彼女の推理力
に驚きます。そこで、数日前に良介の家の近くで起きたある
事件を話すといきなり「出かけます」と・・・

その事件のあった学校に行くというのです。

しかし、執事は彼女が外出することに反対。そして「お嬢様
は、非常に複雑な方でいらっしゃいますので」と意味深。

その謎はすぐに解決。家にいたときのお嬢様は、か細い声で
「はい・・・、はい・・・」という感じだったのですが、家
から出てすぐに「なんだてめえは」とガラの悪い感じに。
さっきまでの可憐なお嬢様はどこに・・・?

こんなスタートで、ある学校のクリスマスパーティーで起き
た殺人事件、女の子の狂言誘拐事件、女子校生の万引き事件
などに関わってゆきます。

ちなみに、良介は双子で、兄は警視庁勤務の優介。

この作品はシリーズでして、シリーズものを買う場合はまず
1巻を読んで、ああこれは面白いとなって、また本屋に行って
次を買う、場合によっては4巻か5巻くらいまでまとめて買う
こともありますが、今回は珍しく、すでに2巻も購入。

調べましたら、1998年にNHKで「お嬢様は名探偵」というタイ
トルでドラマ化されてますね、記憶にないなあ。
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三崎亜記 『となり町戦争』

2019-03-09 | 日本人作家 ま
春眠暁を覚えず

と、思わず書きたくなるほど、よく眠れてます。

ということはですよ、読書タイムがベッドに入って眠りに
つくまでの1時間くらいなので、まあその、つまり、あま
り読めてません。

さて『となり町戦争』です。まだ読んでませんでした。
先入観というか偏見、英語だとプレジュディスですね、
とはこわいものでして、この本のタイトルを見ただけで
「ああ、これはあれだ、どっかの子どもたちが隣の地区
の子どもたちと戦争ごっごをする例のやつね」
と思っていました。

ところがどっこい。

ドッコイ。

これはもう、強烈な作品に出会ってしまったな、そんな
感じ。

ある日「僕」は、アパートのポストに(となり町との戦争
のお知らせ)という紙が入っているのを見つけます。
そんなこといきなり言われても、という心境です。

「僕」の今住んでいる舞阪町は、会社まで車通勤するため
に探した好条件なアパートがそこにあったから、というだ
けのもので、地元愛とかそういうものは特にありません。
で、その対戦相手の(となり町)とは、アパートから会社
までの通勤路にあります。

そこで、ふと思ったのは「となりの町と戦争が始まったら
通勤路が封鎖されるのかな」という心配。

(お知らせ)に書いてあった、開戦日の9月1日。
一応いつもよりも30分早めに家を出ますが、特に変わった
ことはありません。カーラジオをつけてもこんな平穏な町に
はめずらしい通り魔殺人事件があったというニュースぐら
いなもの。

「いまは戦時中である」ということが全く実感できないで
いる「僕」ですが、ある日ポストに入っていた町の広報誌
を読んでいると「町勢概況」のところに転出・転入・出生・
死亡の横に(うち戦死者12人)とあり、「戦死者?」と
声を出してしまいます。

開戦から1か月ほど過ぎた日のこと、会社に電話が。
「舞阪町総務課、となり町戦争係の香西と申します」と名
乗られますが、用件は「僕」に、戦時特別偵察業務の辞令
交付の確認の電話、とのこと。
もちろん断ることもできますが、そこはお役所でして、何
日以内に町長宛てに不服申し立てを出して云々。

なんにせよ、この「戦争」の正体が全くわからないので、
それを知るためにも任命を受けることに。

会社に休暇届を出すことになったのですが、人のよさそう
な主任に申請しますと「ああはいはい、さっき町から通知
が来てました」とあっさり承諾。

「僕」に与えられた(偵察業務)とは、通勤の行き帰りで
となり町を通過するときに何か変わったことがないか偵察
をするというものなのですが、眺めても何もなく、記録表
になにも書かないわけにもいかず、となり町のゴミ収集車
とすれ違った場所と時刻や、新築工事をやっている場所な
ど、なんの役に立つのかわからないことを「報告」します。

それから1月過ぎて、町の広報誌の「町勢概況」の(戦死
者)を見ると(53人)に増えていて・・・

どうやら戦争は激化しているらしく、非常任委員会が招集
され、偵察業務の強化で「僕」は、となり町に潜入するこ
とになります。しかも、いつぞや会社に電話をかけてきた
町役場の香西さんと(夫婦)を装って・・・

この「戦争」とはいったい何なのか。得るものは。失うも
のは。終戦予定日は半年後の3月31日になっていますが、
それまで「僕」も香西さんも、いや舞阪町民やとなり町の
町民は何をすればよいのか。

あれは湾岸戦争の時でしたか、ニュースで流れている映像
を見て街頭インタビューで「テレビゲームみたい」と話し
た人がいたんでしたっけ。
こういうような「無関心」に対する強烈な皮肉とも受け取
れますが、いや、まったくそういう意図は無く、ふつうに
読んで面白い娯楽小説を書きたかったのかとも思います。

本の帯にあった五木寛之さんの「卓抜な批評性か、無意識
の天才か(後略)」というのがまさにドンピシャなまとめ。
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