晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

葉室麟 『銀漢の賦」

2017-02-26 | 日本人作家 は
小説をたくさん読んでいると、楽しみのひとつに
「好きな(自分好みの)作家と出会う」というのが
あって、その作家の作品をできれば全部読んでみた
いとは思うのですが、これがなかなか。

そんな「好きな作家」の一人が葉室麟さん。

さて、この作品の舞台となっているのは、架空の
月ヶ瀬藩。かんたんな説明として、月ヶ瀬は西国
で北側は海に面して3本の川が流れる平野部があり、
東南側は山になっていて、六万石の譜代大名で、
現藩主は九代目の浅川惟忠。

郡方(今でいう県の土木課)の日下部源五は、治水
工事と新田開発の視察に来た家老の松浦将監の案内
をすることに。

このふたり、幼いころは同じ剣術道場に通う仲良し
でしたが、二十年前の「ある出来事」以来、絶交
状態に。源五は相変わらず微禄の貧しい藩士ですが、
将監、かつては小弥太といいましたが、こちらは
出世して家老に、さらに書画も達者で江戸や京都
でも名が通っているほど。

そんな馬上の将監の様子がおかしいと源五は見て、
「ちょっと休憩しては」と言い、将監も「昔のよう
に話そう」と。将監は、胃にしこりができていて、
自分の命も長くないと悟ってる様子。

そして将監は「間もなく名家老どころか逆臣になる」
と剣呑なことを言うのです。

お互い五十を過ぎ、絶交状態であったとはいえ、
将監が藩の一大事になる「何か」を企んでいる
ことは源五も放っておけず、上役や方々に聞いて
みたところ、最近、藩主と将監の仲が悪いとの噂が。

さらに、国替えというとんでもない計画が秘密裏に
進んでいて・・・

二十年前の、源五と将監の関係が悪化した出来事とは。
そして、将監の「秘策」によって、藩主の計画を
止めることができるのか・・・

タイトルの「銀漢」とは、天の川のこと。
少年時代に見た夜空に流れる大河は、ふたりの心の中に
どのように残っているのか。

読後に一言。素晴らしい小説です。

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東川篤哉 『密室の鍵貸します』

2017-02-22 | 日本人作家 は
この作品が作者の(実質的な)デビュー作になる
そうですね。

映画ファンならずとも、タイトルで「アパートの
鍵貸します」のオマージュ的作品なのは想像でき
ます。
ちなみにこの映画で好きなシーンは、ジャック・
レモンがパスタを茹でて、お湯を切ろうとするの
ですが笊が無く、テニスラケットで湯切りをやった
ところ。

まず、冒頭からふざけてます。

作品の舞台は「烏賊川(いかがわ)」市という架空
の街。場所は「千葉の東、神奈川の西」という、これ
また「どこやねん」とツッコまずにはいられない設定。

戸村流平は市内の大学に通っています。4年生で小さな
映像制作会社に就職内定が決まりつつも、どういった
わけか、付き合ってた彼女にフラれます。

そんなこんなで、その映像制作会社の社員である流平の
先輩にあたる茂呂の家に遊びに行くことに。茂呂のアパ
ートには自作の「シアタールーム」があり、そこで流平
が借りてきた映画のビデオを見ることに。

買い物に出かけた茂呂は、外で「事件に遭遇した」と
言います。この先の酒屋の向かいにある「高野アパート」
で飛び降り自殺があったというのです。

「高野アパート」は、つい先日フラれたばかりの流平の
元彼女、紺野由紀が住んでいるアパート。

しかし流平は「あの女は自殺するようなタマじゃない」
と、紺野由紀ではないとその件に関しては頭の隅に置き
ます。
それよりも問題が。「ちょっとシャワー浴びてくる」と
いってシアタールームから出ていった茂呂がいつまで
たっても戻ってきません。
心配になった流平が浴室に行ってみると、茂呂の背中に
ナイフが刺さって死んでいたのです・・・

気を失って翌朝に目が覚めて、昨夜の飛び降り自殺は
紺野由紀だと分かった流平は、あろうことか茂呂の
死体を置いたまま、警察に連絡せずに部屋から出ていって
しまいます。

さて、この話に同時進行で描かれるのが、砂川警部と
志木刑事の2人の捜査。
女性の飛び降り自殺の現場に急行した2人。そこで志木
は、野次馬の中に、顔見知りを発見します。それは茂呂。

自殺した女性の身元も分かり、まあ自然と元交際相手の流平
が参考人として浮かびますが・・・

流平は、鵜飼という探偵に相談することに。

砂川と志木、そして流平と鵜飼が微妙にすれ違うところ
が実に面白いですね。





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ジェフリー・アーチャー 『15のわけあり小説』

2017-02-16 | 海外作家 ア
この作品は短編集で、ジェフリー・アーチャーといえば人物一代記(サーガ)
が代表とされると思うのですが、短編もバツグンに面白いのです。

まえがきによりますと、15の話のうち10は事実にもとづいた話、ということ
になっていますが、確かに文中で「こんな話を聞いた」といったような書き出し
があります。ただし、どれくらい話を”盛って”いるか(演出の範疇で)は分か
りません。

身分違いの恋人にそそのかされて宝石泥棒の片棒を担ぐことになった「きみに
首ったけ」。

百歳の誕生日を迎えた夫は女王陛下からの祝電に心躍りますが、三つ年下の妻が
百歳を迎えた時に祝電が来ない「女王陛下からの祝電」。

火災保険で働く男の初仕事「ハイ・ヒール」。

目の不自由な男がカフェで隣に座った女性を想像する「ブラインド・デート」。

ある看護婦のサクセスストーリー(?)「遺書と意思があるところに」。

ダイヤ泥棒が刑務所で”ある約束”をする「裏切り」。

骨董屋とスター歌手の「私は生き延びる」。

ドイツの画家とそのパトロンの不思議な話「並外れた鑑識眼」。

あるゴルファーの話「メンバーズ・オンリー」。

名門一家に生まれるも口が災いして閑職においやられた外交官「外交手腕のない
外交官」。

スペインのマジョルカ島で不動産で一旗揚げようとするアイルランド人の話
「アイルランド人ならではの幸運」。

マンションに住む隣人は人殺し、それともテロリスト?「人は見かけによらず」。

一代で大銀行を築いた頭取が死神とサインを交わす「迂闊な取引」。

イタリアの田舎を旅行するイギリス人「満室?」。

インドでの、マハラジャ(王族)の息子が家を捨てて恋人といっしょになる
「カーストを捨てて」。

どれもこれも思わずニヤリとして、まさに「それには、わけがある」ですね。

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山本一力 『いかだ満月』

2017-02-10 | 日本人作家 や
この話は、江戸の材木商、それから木場の川並(海上で
柱を結んでいかだにする人)が出てきますが、これらで
思い出すのが、去年の朝ドラ「とと姉ちゃん」で、3姉妹
の祖母が老舗材木商の女主人で、大地真央さんが演じて
ましたね。

大地真央さんの芝居にどうこういうわけではありませんが、
「粋でいなせ」「チャキチャキ感」っていうんですか、
なんかこう、過剰だったといいますか・・・
娘役の木村多江さんのほうがよっぽど「下町の女性」
でしたね。

あれは演出が悪いんです。はい。

さて、天保3年5月、江戸の大名屋敷や大店商人の家
ばかり狙って金を盗んだ大盗賊、鼠小僧次郎吉がとう
とう捕まります。

残された妻のおきちと息子の大次郎。当然、鼠小僧は
「私には妻子がおりまして」なんて言うわけはなく、
2人は、材木商「新宮屋」の祥吉の世話になることに。

じつはこの祥吉、鼠小僧の親友で相棒。「もし俺が
捕まったら2人をよろしく」と頼まれていました。

そんなこんなで、ある日、深川でも一二を争う老舗の
材木商「木征」の番頭が新宮屋を訪ねてきます。
ある大店の主人が、占いで「家を建てるなら全部の木
を熊野杉にしなさい」とのお告げがあったそうで、
ですが木征で扱うのは主に木曽産と土佐産。

しかし、木征が発注した熊野杉はなんと六百本。

祥吉は、この大規模な取引を実現するために、廻漕
問屋にお願いしますが、保証金がとんでもない額に。
あの手この手でどうにか安く運ぶことになります。

さて、いよいよ出発。祥吉は大次郎を新宮に連れて
いくことに。そして、船には川並の健次も乗ります。
じつは、木征の耳によくない噂が。
「新宮屋」の祥吉と、あの家にいる母子は、なにやら
この前処刑された鼠小僧と関係がある、というのです。
そこで、川並の健次を同行させ、様子を探らせるの
ですが・・・

読み終わって「え、ここで終わりなの?」という感じで、
もしかしたら続編があるんじゃないかと調べたら無く、
もう2倍のページ数で続きを書いてほしかったなあと
思いました。

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池波正太郎 『仕掛人・藤枝梅安5 梅安乱れ雲』

2017-02-05 | 日本人作家 あ
「藤枝梅安」シリーズも全部で7巻なので、
読み終わってしまうととっても寂しいから
ゆっくり読むことにしています。

さて、シリーズ5巻目は、長編です。

前作も長編で、大身旗本のゴタゴタと
友人で浪人の小杉十郎太の関連で大坂
の元締、白子屋菊右衛門と揉めるといった
感じでしたが、今作はその続き。

しばらく江戸から離れていようという
ことで、熱海で休養していた梅安と
彦次郎と小杉。

梅安は品川台町の自宅兼診療所の様子が
気になって、江戸に戻ることに。
途中、雨宿りに入った空き家に他の旅人も
入ってきて、梅安は咄嗟に押し入れに隠れ
ます。

その旅人は武士で、顔をちらりと見ると、
梅安にとって忘れられない「関口孫次郎」
その人だったのです。

梅安が京都で師匠の津山悦堂のもとで
鍼医者の修行をしているとき、師匠が
ある武士を連れてきます。
関口孫次郎と名乗る青年は、親の敵討ち
で諸国を歩いていたのです。
はじめこそ関口は悦堂宅でお世話になって
いることに感謝していて、梅安にも丁寧な
態度で接していたのですが、数ヶ月後の夜中、
悦堂を斬りつけ、金を盗んで逃げたのです。

あの時の師匠の狼藉を許せない梅安は関口を
江戸まで尾行し、入った茶屋を見張っています。
するとそこに、たびたび梅安に「仕掛け」の
依頼に来る元締、萱野の亀右衛門の姿が。
後日、梅安は亀右衛門に関口のことを訊くと、
あの侍は「高沢平馬」と名乗った、と・・・

一方、大坂では、白子屋菊右衛門が梅安と十郎太
の暗殺のために、ふたりの浪人を江戸にやることに。
そして、白子屋本人も江戸へ。

江戸進出を目論む白子屋。江戸の香具師の元締め、
音羽の半右衛門は白子屋の動きを見張っていたの
です。

アウトローの世界の勢力争いも絡んできて、なん
だかすごいことに。

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池波正太郎 『仕掛人・藤枝梅安4 梅安供養針』

2017-02-02 | 日本人作家 あ
3巻までは短編でしたが、この作品は長編です。
なんとなくですが、主人公の設定上、短編だと
毎度毎度「人殺し」になってしまうので、長編
のほうがいいなあと思っていたところでした。

梅安がなじみの料亭を出たところ、神社の近くで
斬られて瀕死の状態の若い侍を見つけます。

近くの知り合いの医者に手当てをお願いして、
なんとか一命はとりとめたのですが、強く頭を
打ったらしく、自分がどこの誰か記憶がない
のです。
手がかりは、若い侍の羽織にあった、丸に揚羽蝶
の家紋のみ。

数日後、梅安に「仕掛け」の依頼が。聞けば相手は
女性だそうで、「女殺しは引き受けない」梅安でし
たが、いちおう話だけ聞いてみると、四千石の旗本、
池田備前守の奥方を仕掛けてほしい、と。

そこで池田備前守を調べてみると、あの若い侍の
羽織と同じ、丸に揚羽蝶の家紋だったのです・・・

この話と平行して、梅安の知り合いの浪人、小杉
十郎太の身に危険が。

そもそも小杉は、道場の後継者争いで小杉が指名
されて、この決定に納得がいかない旗本の息子たち
が小杉を暗殺しようとしますが返り討ちにあい、
梅安の紹介で小杉は大坂の白子屋菊右衛門という
香具師の元締のもとに。
そんなこともあり、江戸では小杉に恨みを持った
ものたちがいてまだ危ないのですが、小杉はある日
ひょっこり江戸に帰ってきます。
なんと、白子屋は小杉に「仕掛け」を頼んでいた
のです。約束が違うと梅安は怒り、小杉を仕掛人
から手を引かせようとしますが、すんなり諦める
白子屋ではなく、小杉と梅安が他の仕掛人の標的
に・・・

読み終わってからしばらく経って。このブログに
書こうとしてページをぱらぱらとめくって軽く
読み返してみますと、話が2つ3つと重なって
けっこう複雑に入り組んでいたことに驚きました。
つまり、読んでいたときは別に「複雑だなあ」とは
思わなかったということですね。
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